24 / 37
第24話「逆鱗」
しおりを挟む
唇が離れると、零れ落ちんばかりに見開かれた赤い瞳と目が合う。
その瞳に仄暗い雰囲気は一切なく、驚きが支配していた。
目を丸くしたオデルは乱れた黒髪をそのままに、シルディアを見つめるだけだ。
「な、なにか言ったらどうなのよ」
「いやまさかシルディアから口づけしてもらえるとは……」
「しみじみと言わないで」
「そうは言っても、驚かずにはいられないだろ。つがいの証も浮かび上がってる……。え、まさかこれ夢だったりしないよな?」
「夢だと思うならそれでいいんじゃない?」
「いや、すまない……。少々、いや、かなり信じ難かっただけだ」
胸倉を掴んでいた手を放し、シルディアは後ろを向く。
そこで初めて竜巻が治まっていることに気が付いた。
驚きに固まっているヴィーニャ達にへらりと笑顔を向ければ、ヴィーニャが泣き出してしまった。
泣き出してしまった彼女を宥めようと足を踏み出した途端、足に力が入らず床へへたり込んでしまう。
「……あれ?」
「シルディア!? どうした? やっぱりどこか怪我を……」
後ろから慌てた様子で回り込んできたオデルに、シルディアはそうじゃないと手を振った。
「あはは。なんか、今更になって恐怖が……。えっと、ね。腰が抜けちゃった」
「よかった……」
心底ほっとしたオデルがシルディアの肩に乗ったマントを体に巻き付ける。
何をしているのか分からずシルディアがされるがままになっていると、ミノムシ状態のままオデルに抱き上げられた。
「ひゃあっ!?」
「あ、こら。暴れるんじゃない」
「さすがにこれは恥ずかしいのだけど」
「他の男にシルディアのそんな姿を見せるわけにはいかないからな。少しだけ我慢してくれ」
「……わかったわ」
そう言ってシルディアはオデルの胸に顔を埋めた。
「ありがとう。シルディア。君のお陰だ」
額の辺りに口づけを落とされたシルディアは気恥ずかしさに目を閉じて寝たふりをした。
「ん? 速攻落ちた……? まぁ仕方ないか。あんだけ聖なる力を使ったんだからな」
(聖なる力? 魔法じゃなく?)
初めて聞く単語にシルディアは疑問を持つが、後で聞けばいいかと思考を放棄した。
なぜならゆらゆらとオデルの腕に揺られ歩いている間に、シルディアは本当に眠たくなってきてしまったからだ。
シルディアはオデルの匂いに包まれ、うとうとと船をこぎ始める。
立ち止まったオデルが頭を下げるヴィーニャ達へ箝口令を敷く。
「先ほど見たことは他言無用だ。わかったな?」
「承知しました」
「神話の女神様が降臨なさったのかと思いましたよ」
「お前はこれから一生地下牢で過ごすことになる。覚悟しておけ」
「おやおや。甘いですね」
拘束された男が不敵に笑うが、オデルが気にした様子はない。
「本当は殺してやりたいが、シルディアの頼みだからな。俺を生かしてくれた女の頼みとあっちゃ断るのは無粋だと思わないか? なぁ、そこの」
「うわ!? 気づいてやがったのか!?」
「当たり前だろ。誰が生き埋めを回避させてやったと思っている」
不敵に笑ったオデルが見張りも魔法で拘束する。
「解けよ!」
「断る」
「いいのか! オレってば、その子に唾つけてやったもんね!」
「貴方、今それは自殺行為ですよ」
「へぇ? それは知らなかったなぁ。具体的に教えてくれないかい?」
「虎の尾を踏みましたね。私は知りませんよ」
「皇王陛下は激怒すると柔らかな口調になるのですね」
「堂々と観察してないでオレを助けてくんね!?」
「嫌です」
「嫌ですね」
「親子共々ひでぇな!?」
そんな会話を子守歌に、シルディアは夢の世界へと意識を手放した。
◇◆◇
シルディアが目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。
ヴィーニャが手入れを施してくれたのか、地下で汚れた肌は綺麗に磨かれている。
すでに肌触りのいいネグリジェに着替えており、下着姿を晒さずに済みそうだとシルディアは寝ぼけた頭で考えた。
温かな布団に包まれ、シルディアが幸せを噛みしめていると、隣からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
目を向ければ優しい顔でこちらを見るオデルがいた。
「お、オデル。起きてたなら声かけてよ」
「ごめんごめん。ついシルディアが可愛くて」
「理由になっていないと思う。……まぁいいわ。わたしどれぐらい寝てたの?」
「二時間も経っていないぞ。もっと寝ていてもいいぐらいだ」
「そう」
シルディアは自身の体に回るオデルの手を取り握りしめる。
「どうした? 寂しくなったのか?」
「そうじゃなくて、今日の誘拐の件」
「あぁ。何が知りたい?」
「竜の王には逆鱗があって、それが弱点だって言ってた」
「あ? あー……」
「わたしはまた、オデルから聞けなかったの」
目を伏せながら言えば、オデルは困ったように笑った。
「知りたい?」
「もちろん」
「仕方ないな」
「へっ」
握った手をそのままに、オデルがシルディアに馬乗りになる。
目を見開いたシルディアだったが、オデルの楽しそうな瞳に抗議する気がなくなってしまった。
握ったシルディアの手をオデルは自身の喉元へ持っていく。
喉元に表れた鱗に、シルディアは驚きを隠せない。
今まで何の違和感もなかった喉元に、大きな黒色の鱗が現れると誰が思うだろうか。
「わぁ。本当に鱗なのね……!?」
「喜んでいるところ悪いけど」
「ん?」
一心不乱に逆鱗を触るシルディアを見つめる赤い瞳にはいつの間にか熱が籠っていた。
「俺以外の誰も知らない秘密なんだ」
「え? そんなもの、わたしに教えてよかったの?」
「俺から逃げたくなった時のために知らせてなかったんだ。だが、シルディアが知りたいと強請るからな。答えないわけにいかないだろ?」
頬に口づけを落とされ、挑戦的な笑みを向けられる。
「皇王の弱点を知ったんだ。もうどう足掻いても逃げられないな?」
その言葉に、シルディアはまた気遣われていたのだと悟った。
優しいオデルに報いたくて、シルディアは彼の首へ腕を回し、余裕たっぷりに微笑んで見せた。
「望むところよ」
たまらないなと呟いたオデルの唇が、シルディアの唇と重なった。
二度目の口づけは、お互いの存在を確かめ合うような、優しいキスだった。
その瞳に仄暗い雰囲気は一切なく、驚きが支配していた。
目を丸くしたオデルは乱れた黒髪をそのままに、シルディアを見つめるだけだ。
「な、なにか言ったらどうなのよ」
「いやまさかシルディアから口づけしてもらえるとは……」
「しみじみと言わないで」
「そうは言っても、驚かずにはいられないだろ。つがいの証も浮かび上がってる……。え、まさかこれ夢だったりしないよな?」
「夢だと思うならそれでいいんじゃない?」
「いや、すまない……。少々、いや、かなり信じ難かっただけだ」
胸倉を掴んでいた手を放し、シルディアは後ろを向く。
そこで初めて竜巻が治まっていることに気が付いた。
驚きに固まっているヴィーニャ達にへらりと笑顔を向ければ、ヴィーニャが泣き出してしまった。
泣き出してしまった彼女を宥めようと足を踏み出した途端、足に力が入らず床へへたり込んでしまう。
「……あれ?」
「シルディア!? どうした? やっぱりどこか怪我を……」
後ろから慌てた様子で回り込んできたオデルに、シルディアはそうじゃないと手を振った。
「あはは。なんか、今更になって恐怖が……。えっと、ね。腰が抜けちゃった」
「よかった……」
心底ほっとしたオデルがシルディアの肩に乗ったマントを体に巻き付ける。
何をしているのか分からずシルディアがされるがままになっていると、ミノムシ状態のままオデルに抱き上げられた。
「ひゃあっ!?」
「あ、こら。暴れるんじゃない」
「さすがにこれは恥ずかしいのだけど」
「他の男にシルディアのそんな姿を見せるわけにはいかないからな。少しだけ我慢してくれ」
「……わかったわ」
そう言ってシルディアはオデルの胸に顔を埋めた。
「ありがとう。シルディア。君のお陰だ」
額の辺りに口づけを落とされたシルディアは気恥ずかしさに目を閉じて寝たふりをした。
「ん? 速攻落ちた……? まぁ仕方ないか。あんだけ聖なる力を使ったんだからな」
(聖なる力? 魔法じゃなく?)
初めて聞く単語にシルディアは疑問を持つが、後で聞けばいいかと思考を放棄した。
なぜならゆらゆらとオデルの腕に揺られ歩いている間に、シルディアは本当に眠たくなってきてしまったからだ。
シルディアはオデルの匂いに包まれ、うとうとと船をこぎ始める。
立ち止まったオデルが頭を下げるヴィーニャ達へ箝口令を敷く。
「先ほど見たことは他言無用だ。わかったな?」
「承知しました」
「神話の女神様が降臨なさったのかと思いましたよ」
「お前はこれから一生地下牢で過ごすことになる。覚悟しておけ」
「おやおや。甘いですね」
拘束された男が不敵に笑うが、オデルが気にした様子はない。
「本当は殺してやりたいが、シルディアの頼みだからな。俺を生かしてくれた女の頼みとあっちゃ断るのは無粋だと思わないか? なぁ、そこの」
「うわ!? 気づいてやがったのか!?」
「当たり前だろ。誰が生き埋めを回避させてやったと思っている」
不敵に笑ったオデルが見張りも魔法で拘束する。
「解けよ!」
「断る」
「いいのか! オレってば、その子に唾つけてやったもんね!」
「貴方、今それは自殺行為ですよ」
「へぇ? それは知らなかったなぁ。具体的に教えてくれないかい?」
「虎の尾を踏みましたね。私は知りませんよ」
「皇王陛下は激怒すると柔らかな口調になるのですね」
「堂々と観察してないでオレを助けてくんね!?」
「嫌です」
「嫌ですね」
「親子共々ひでぇな!?」
そんな会話を子守歌に、シルディアは夢の世界へと意識を手放した。
◇◆◇
シルディアが目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。
ヴィーニャが手入れを施してくれたのか、地下で汚れた肌は綺麗に磨かれている。
すでに肌触りのいいネグリジェに着替えており、下着姿を晒さずに済みそうだとシルディアは寝ぼけた頭で考えた。
温かな布団に包まれ、シルディアが幸せを噛みしめていると、隣からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
目を向ければ優しい顔でこちらを見るオデルがいた。
「お、オデル。起きてたなら声かけてよ」
「ごめんごめん。ついシルディアが可愛くて」
「理由になっていないと思う。……まぁいいわ。わたしどれぐらい寝てたの?」
「二時間も経っていないぞ。もっと寝ていてもいいぐらいだ」
「そう」
シルディアは自身の体に回るオデルの手を取り握りしめる。
「どうした? 寂しくなったのか?」
「そうじゃなくて、今日の誘拐の件」
「あぁ。何が知りたい?」
「竜の王には逆鱗があって、それが弱点だって言ってた」
「あ? あー……」
「わたしはまた、オデルから聞けなかったの」
目を伏せながら言えば、オデルは困ったように笑った。
「知りたい?」
「もちろん」
「仕方ないな」
「へっ」
握った手をそのままに、オデルがシルディアに馬乗りになる。
目を見開いたシルディアだったが、オデルの楽しそうな瞳に抗議する気がなくなってしまった。
握ったシルディアの手をオデルは自身の喉元へ持っていく。
喉元に表れた鱗に、シルディアは驚きを隠せない。
今まで何の違和感もなかった喉元に、大きな黒色の鱗が現れると誰が思うだろうか。
「わぁ。本当に鱗なのね……!?」
「喜んでいるところ悪いけど」
「ん?」
一心不乱に逆鱗を触るシルディアを見つめる赤い瞳にはいつの間にか熱が籠っていた。
「俺以外の誰も知らない秘密なんだ」
「え? そんなもの、わたしに教えてよかったの?」
「俺から逃げたくなった時のために知らせてなかったんだ。だが、シルディアが知りたいと強請るからな。答えないわけにいかないだろ?」
頬に口づけを落とされ、挑戦的な笑みを向けられる。
「皇王の弱点を知ったんだ。もうどう足掻いても逃げられないな?」
その言葉に、シルディアはまた気遣われていたのだと悟った。
優しいオデルに報いたくて、シルディアは彼の首へ腕を回し、余裕たっぷりに微笑んで見せた。
「望むところよ」
たまらないなと呟いたオデルの唇が、シルディアの唇と重なった。
二度目の口づけは、お互いの存在を確かめ合うような、優しいキスだった。
1
お気に入りに追加
1,315
あなたにおすすめの小説
【完結】二年間放置された妻がうっかり強力な媚薬を飲んだ堅物な夫からえっち漬けにされてしまう話
なかむ楽
恋愛
ほぼタイトルです。
結婚後二年も放置されていた公爵夫人のフェリス(20)。夫のメルヴィル(30)は、堅物で真面目な領主で仕事熱心。ずっと憧れていたメルヴィルとの結婚生活は触れ合いゼロ。夫婦別室で家庭内別居状態に。
ある日フェリスは養老院を訪問し、お婆さんから媚薬をもらう。
「十日間は欲望がすべて放たれるまでビンビンの媚薬だよ」
その小瓶(媚薬)の中身ををミニボトルウイスキーだと思ったメルヴィルが飲んでしまった!なんといううっかりだ!
それをきっかけに、堅物の夫は人が変わったように甘い言葉を囁き、フェリスと性行為を繰り返す。
「美しく成熟しようとするきみを摘み取るのを楽しみにしていた」
十日間、連続で子作り孕ませセックスで抱き潰されるフェリス。媚薬の効果が切れたら再び放置されてしまうのだろうか?
◆堅物眼鏡年上の夫が理性ぶっ壊れで→うぶで清楚系の年下妻にえっちを教えこみながら孕ませっくすするのが書きたかった作者の欲。
◇フェリス(20):14歳になった時に婚約者になった憧れのお兄さま・メルヴィルを一途に想い続けていた。推しを一生かけて愛する系。清楚で清純。
夫のえっちな命令に従順になってしまう。
金髪青眼(隠れ爆乳)
◇メルヴィル(30):カーク領公爵。24歳の時に14歳のフェリスの婚約者になる。それから結婚までとプラス2年間は右手が夜のお友達になった真面目な眼鏡男。媚薬で理性崩壊系絶倫になってしまう。
黒髪青眼+眼鏡(細マッチョ)
※作品がよかったら、ブクマや★で応援してくださると嬉しく思います!
※誤字報告ありがとうございます。誤字などは適宜修正します。
ムーンライトノベルズからの転載になります
アルファポリスで読みやすいように各話にしていますが、長かったり短かったりしていてすみません汗
「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。
古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。
まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。
ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。
ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?
hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。
待ってましたッ! 喜んで!
なんなら物理的な距離でも良いですよ?
乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。
あれ? どうしてこうなった?
頑張って断罪劇から逃げたつもりだったけど、先に待ち構えていた隣りの家のお兄さんにあっさり捕まってでろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。
×××
取扱説明事項〜▲▲▲
作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想、動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+
皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。
9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ(*゚ー゚*)ノ
今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる