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第5話
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「お、兄ちゃん」
「・・・よお」
帰りの電車の中で、海斗とばったり会った。
「疲れた顔してんね」
「うるせーよ」
「あの子、どうしたかな」
「帰ったんじゃねえの」
「手当てしてやった恩返しとかしに来ねえかな」
「鶴かよ。あんな状態で放置されてたんだぜ。やばいことに関わってるかもしれないし、警察に通報されたら厄介だからって姿消してる可能性高いだろ」
「まあ、そっか」
素っ裸で傷だらけの状態でダンボールに入れられてたなんて、どう考えてもやばいことに関わってるとしか思えなかった。
面倒に巻き込まれるのはごめんだ。
いなくなってるに決まってる。
そう思いながら2人で帰ったのだが―――
「おかえりー!」
玄関で俺たちを出迎えたのは、昨日ダンボールに入れられていたあの男だった。
「・・・・・え、まじか」
海斗が呟く。
「おふたりさん、一緒に暮らしてんの?もしかしてゲイのカップル?」
かわいらしく小首を傾げながら発せられたその言葉に、俺と海斗は
「「ちげーわ!!」」
と同時に叫んでいたのだった・・・・・。
「へえ、兄弟なんだ。そう言えばちょっと似てるね」
そう言いながら、男はリビングのテーブルにチャーハンの乗った皿を3つ、並べたのだった。
「お、うまそう」
「海斗!いやお前、何してんの?なんでまだいんの?」
そう俺が言うと、男はにっこり笑って口を開いた。
「だって、俺のこと拾って手当てして、服まで着せてくれたんでしょ?お礼しなきゃと思って」
肩まである長めの茶髪に肌の色は白く目はくりっと大きくて、長い睫毛と赤い唇は女性的な感じもしたけれど、眉毛はきりっと凛々しく体も程よく筋肉がついていて、何か運動をしているような印象を受けた。
こうして見ると、本当にかなりの美形で芸能人かもしれないという海斗の言葉にも頷けた。
俺は見たことがないが、少なくとも街中を歩いていればすれ違った人が振り返るくらいには目立つ人間に思えた。
「お礼なんていいよ。なんであんな状態だったのか俺たちには関係ないし・・・・面倒なことに巻き込まれたくないし、出てってくんないかな」
「兄ちゃん、そんな言い方しなくても」
「あんな傷だらけで素っ裸でダンボールに入れられてて、普通じゃないだろ。何者か知らないけど―――」
「俺、瑞希」
「――――はい?」
「瑞希って呼んで」
ニコッと笑う瑞希。
いや――――いやいやいや、そうじゃない。
「名前を言えって言ってるんじゃなくて」
「お兄さんたち、名前は?」
「いやだから―――」
「俺は田村海斗。こっちは田村優斗」
「おい!」
「優斗くんに海斗くんね。よろしく」
「いやだから、そうじゃなくて―――」
「ね、とりあえず食べよ?冷めちゃうからさ。あ、スープも作ったの。スープ用の食器がなかったからマグカップに入れたよ」
そう言って瑞希がいそいそとトレイに湯気の立つマグカップを3つ乗せ、テーブルにそれを並べた。
「さ、温かいうちにどーぞ」
そう言ってさっさと座る瑞希につられ、俺たちもそこに座る。
「いただきまーす」
「いただきます!」
瑞希と海斗が食べ始めるのを見て―――
1人で怒ってるのが馬鹿らしくなり、俺も仕方なく食べ始めたのだった。
「・・・よお」
帰りの電車の中で、海斗とばったり会った。
「疲れた顔してんね」
「うるせーよ」
「あの子、どうしたかな」
「帰ったんじゃねえの」
「手当てしてやった恩返しとかしに来ねえかな」
「鶴かよ。あんな状態で放置されてたんだぜ。やばいことに関わってるかもしれないし、警察に通報されたら厄介だからって姿消してる可能性高いだろ」
「まあ、そっか」
素っ裸で傷だらけの状態でダンボールに入れられてたなんて、どう考えてもやばいことに関わってるとしか思えなかった。
面倒に巻き込まれるのはごめんだ。
いなくなってるに決まってる。
そう思いながら2人で帰ったのだが―――
「おかえりー!」
玄関で俺たちを出迎えたのは、昨日ダンボールに入れられていたあの男だった。
「・・・・・え、まじか」
海斗が呟く。
「おふたりさん、一緒に暮らしてんの?もしかしてゲイのカップル?」
かわいらしく小首を傾げながら発せられたその言葉に、俺と海斗は
「「ちげーわ!!」」
と同時に叫んでいたのだった・・・・・。
「へえ、兄弟なんだ。そう言えばちょっと似てるね」
そう言いながら、男はリビングのテーブルにチャーハンの乗った皿を3つ、並べたのだった。
「お、うまそう」
「海斗!いやお前、何してんの?なんでまだいんの?」
そう俺が言うと、男はにっこり笑って口を開いた。
「だって、俺のこと拾って手当てして、服まで着せてくれたんでしょ?お礼しなきゃと思って」
肩まである長めの茶髪に肌の色は白く目はくりっと大きくて、長い睫毛と赤い唇は女性的な感じもしたけれど、眉毛はきりっと凛々しく体も程よく筋肉がついていて、何か運動をしているような印象を受けた。
こうして見ると、本当にかなりの美形で芸能人かもしれないという海斗の言葉にも頷けた。
俺は見たことがないが、少なくとも街中を歩いていればすれ違った人が振り返るくらいには目立つ人間に思えた。
「お礼なんていいよ。なんであんな状態だったのか俺たちには関係ないし・・・・面倒なことに巻き込まれたくないし、出てってくんないかな」
「兄ちゃん、そんな言い方しなくても」
「あんな傷だらけで素っ裸でダンボールに入れられてて、普通じゃないだろ。何者か知らないけど―――」
「俺、瑞希」
「――――はい?」
「瑞希って呼んで」
ニコッと笑う瑞希。
いや――――いやいやいや、そうじゃない。
「名前を言えって言ってるんじゃなくて」
「お兄さんたち、名前は?」
「いやだから―――」
「俺は田村海斗。こっちは田村優斗」
「おい!」
「優斗くんに海斗くんね。よろしく」
「いやだから、そうじゃなくて―――」
「ね、とりあえず食べよ?冷めちゃうからさ。あ、スープも作ったの。スープ用の食器がなかったからマグカップに入れたよ」
そう言って瑞希がいそいそとトレイに湯気の立つマグカップを3つ乗せ、テーブルにそれを並べた。
「さ、温かいうちにどーぞ」
そう言ってさっさと座る瑞希につられ、俺たちもそこに座る。
「いただきまーす」
「いただきます!」
瑞希と海斗が食べ始めるのを見て―――
1人で怒ってるのが馬鹿らしくなり、俺も仕方なく食べ始めたのだった。
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