独り占めしたい

まつも☆きらら

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宣戦布告(最終話)

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「やってくれたね、リーダー」

英司が苦々しく呟くのを聞いて、瑠偉が不安そうに英司を見る。

「英司は、反対?俺とリーダーが付き合うこと」

そんな瑠偉を、切な気に見つめる英司。

「―――俺が賛成したら、瑠偉くんは嬉しい?」

「うん、嬉しいよ。凄く」

「―――リーダーと付き合ってても、俺と飲みに行ってくれる?」

「うん、もちろん」

「2人きりでも?」

「うん!―――聖、いいよね?」

瑠偉が俺に同意を求める。

すがるようなその目に、俺は溜め息をつく。

「英司こそ、そーゆーやり方、きったねえだろうが。ダメなんて言えるわけねえじゃん」

瑠偉にそんな風に見つめられたら―――

「―――じゃ、いいってことで。今までどおり、俺と瑠偉くんの関係は変わらないんだよね?だったら、俺はもう何も言うことないよ」

そう言って英司はにっこり笑うと、さっさと着替え、楽屋を出ようとした。

「え、英司、かえんの!?」

明人がびっくりしてそう言うと、英司は振り向き、にやりと笑った。

「帰るよ。俺は2人のことに賛成。じゃあね、瑠偉くん、今度一緒に飲もうね」

「あ、うん、ありがとう、英司」

瑠偉の言葉に、『お疲れ』と片手を振り、英司は楽屋を出て行ってしまった・・・・・。



「―――あいつ・・・・・」

半分呆れ、半分怒っているような表情で、斗真くんが呟いた。

瑠偉は、英司が賛成してくれたことがよほどうれしかったのか、ほっとしたようににこにこと笑っていた。

そんな瑠偉を見て、明人が慌てたようにその手を握った。

「る、瑠偉!俺も賛成!賛成する!」

「え・・・・本当に?」

瑠偉が目を瞬かせる。

「ほんとほんと!だから、俺とも2人で飲みにいこ?あと、一緒に遊ぼう!ね?」

「う、うん」

明人の勢いに押される様に、頷く瑠偉。

「オッケー!ぜんっぜんオッケー!俺も、今までどおり瑠偉と飲みに行ったり遊びに行ったりできるならそれでいいよ!リーダー!」

「あ・・・・・・そう」

完全に呑まれてる・・・・・。

「よし!じゃ、そういうことで、俺も先帰るね!瑠偉、バイバイ!リーダーと斗真くんも!」



「―――あいつ、勢いだけで完結させやがったな・・・・・」

斗真くんはそう呟くと、瑠偉の方に向き直った。

瑠偉が、ドキッとしたように斗真くんを見上げた。

瑠偉をじっと見つめる斗真くん。



いつか、英司が言っていた。

『斗真くんにとって、瑠偉くんは特別な存在なんだよ。瑠偉くんにとってもね。あの2人の絆は、ちょっとやそっとじゃ壊れないよ』

お互いに、特別な存在。

俺も、それは感じていた。

デビューする前から仲の良かった2人。

瑠偉より2つ上の斗真くんは頭がよく、瑠偉にとって兄貴のような存在。

テスト前など、仕事場に学校の教科書などを持ってきていた瑠偉に、よく勉強を教えてやっていたのを俺も見ていた。

たぶん、瑠偉は一番斗真くんに懐いていたし、斗真くんもちょっと頼りない瑠偉に時々厳しいことを言いながらもとてもかわいがっていた。

困ったことや悩み事があればまずは斗真くんに相談していた瑠偉。

それは俺が見ていて嫉妬するほどに、2人の間に流れている空気は特別なもののように見えた。



「―――俺は、2人の付き合いに反対するつもりはないよ。決めるのは、2人だからね」

「斗真くん・・・・・」

瑠偉が、ほっとしたように表情を緩めた。

「瑠偉が、幸せになるなら俺はそれでいい」

「斗真くん・・・・ありがとう」

「―――なんか喉かわいちゃったな。コーヒー買ってくる」

そう言って斗真くんが楽屋から出ていこうとすると、瑠偉が慌ててそのあとを追った。

「あ、斗真くん、俺が買ってくるよ!」

「え?あ、そう?」

「うん。ここで待ってて」

瑠偉はそう言うと、楽屋を出て行った・・・・・



「―――聖くん」

瑠偉が出ていくと、斗真くんは戻ってきて俺の隣に座った。

「ん?」

「俺ね・・・・・瑠偉が好きなんだ」

「・・・・知ってるよ」

いやってほど、知ってる。

斗真くんの、瑠偉を見つめる目はいつも熱くて―――

テレビでは絶対に見られない斗真くんの顔が、そこにはあった。

「瑠偉の気持ちには気付いてたけど・・・・・でも、諦めることなんかできなかった。きっと、これからも無理だと思う」

「・・・・・うん」

頷くことしか、できなかった。

「だから・・・・・俺は俺で、自分の気持ちに向き合って、瑠偉を好きでいようと思う」

「え・・・・・」

どういう意味なのかわからなくて、俺は斗真くんの顔を見た。

斗真くんが、くすりと笑う。

「無理やり奪おうなんて思ってないよ。あいつの気持ちを無理に変えることなんてできないと思うし。だから・・・・自然に、俺の方を見てくれるようになって欲しいと思って」

「斗真くん?それって―――」

どういう意味?

瑠偉が、斗真くんを好きになるのを待つってこと?

「―――ただ、待ってるだけじゃないけどね」

そう言うと、斗真くんは俺から目をそらし、立ち上がった。

「英司や明人みたいに―――俺と瑠偉の関係も、変わらない。だけど俺たちの関係は、あの2人とは違う。聖くんとも。―――きっと、俺の方を振り向かせてみせるよ」


「―――させない」

間を開けて俺が言った言葉に、斗真くんが振り向いた。

「―――俺は、瑠偉と別れるつもり、ないから。斗真くんにも誰にも、渡さない」

その言葉に、斗真くんがふっと笑った。

「聖くんの、独占欲ってやつ?―――あんたのそれって、瑠偉限定だよね」

さすが斗真くん。気付いてたんだ。

「ぼーっとしてるようで、実はかなり瑠偉には執着してるもんね。―――でも、それでも俺は諦めないから」

斗真くんがそう言って、俺に真剣な目を向けた時、楽屋の扉が開いた。


「―――斗真くん、お待たせ」

瑠偉が、買ってきた缶コーヒーを斗真くんに渡した。

「サンキュ―。じゃ、俺も帰るね」

「え、行くの?」

「うん。この後、友達と約束あるし。じゃ、お疲れ」

そう言って、手を上げると斗真くんは楽屋を出て行った―――。



斗真くんが出ていくと、瑠偉はちょっと気まずそうに俺の方を見た。

俺は、立ち上がると瑠偉の傍に行った。

「―――聖。俺・・・・俺ね・・・・・」

「ん・・・・・?」

瑠偉の顔を覗きこむと、その瞳が潤んでいた。

「瑠偉・・・・・」

そっと瑠偉を抱きしめる。

瑠偉は、無言で俺の背中に腕をまわした。

瑠偉は、きっと斗真くんと俺の会話を聞いていた。

そして、斗真くんの言葉を聞いて・・・・・きっと、戸惑ってる。

自分にとって、特別な存在の斗真くん。

だけど、瑠偉にとってはそれは恋愛感情とは違うものなのだろう。

きっと斗真くんも同じだろうと、瑠偉は思ってたんだろう。

そんな斗真くんの痛いくらいの気持ちに初めて触れて―――

もしかしたら、揺れてるのかもしれない。

でも、俺は―――


「瑠偉――――好きだよ」

俺は、瑠偉の顔を覗きこみ、唇を重ねた。

すぐに舌を滑り込ませ、甘いキスをする―――

「ん・・・・・・」

舌を絡め、噛みつくような情熱的なキスに変わる。

「―――帰る?」

耳元で囁くと、瑠偉の体がピクリと震える。

「うちに・・・・・くる・・・・・?」

微かに頷く瑠偉。

俺は、瑠偉の手を取り、楽屋をあとにした。





渡さない。

たとえそれが大事なメンバーでも・・・・・

この手だけは、離さない。

瑠偉は、俺だけの瑠偉だから。

きみを、いつまでも独り占めしたいんだ―――。




                     fin.
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