独り占めしたい

まつも☆きらら

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KISS

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支配人が部屋を出ていき、俺は瑠偉を起こそうとそのそばにかがみ込み―――

倒れていた瑠偉の脇に落ちていたそれに気付いた。

「―――カメラ?」

銀色のデジタルカメラを拾い上げ、俺はもしやと思い、保存されているデータを呼び出した。

「―――あの野郎・・・・・」

再び、ふつふつと怒りが湧き上がる。

ロングヘアーのウィッグをつけられた瑠偉の画像が、何十枚も撮られていた。

顔のアップから上半身、全身まで――

きっと突然踏み込まれ、パニック状態になったためにカメラの存在はすっかり忘れていたんだろう。


「―――危なかった」

こんなものが、世に出回ったらどうなっていたか―――

俺はホッと息をつき、カメラからSDカードを抜き取ると、それをジーパンのポケットにねじ込んだ。

「う・・・・・」

「瑠偉?」

うめき声をあげて、瑠偉が微かに動いた。

「瑠偉!大丈夫?」


俺は瑠偉の肩に腕を回し、その体を抱き起した。

「リー、ダー・・・・・?」

「うん。もう、大丈夫だから」

「俺・・・・・どうしてた・・・・・?」

まだ意識がもうろうとしているのか、眉間にしわを寄せながら、軽く頭を振る瑠偉。

俺は、瑠偉の体を支えながらその場に立ち上がった。

「―――説明するけど、とりあえず移動しよう。向こうの部屋のソファーまで行くよ?」

「うん・・・・・」

ふらつきながらも、なんとか歩きだした瑠偉の肩を抱きながら、俺は豪華過ぎるスイートルームの中のリビングに移動し、ふかふかの白いソファーにたどり着いた。

「―――何か飲む?」

俺の言葉に、瑠偉は素直に頷いた。

「ん・・・・・水・・・・・」

「わかった。ちょっと待ってて」

俺は部屋の隅にあった冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだすと、サイドテーブルに並べられていたグラスにそれを注ぎ、瑠偉に渡した。

「ありがと」

瑠偉は受け取り、それをこくこくと一気に飲み干した。

俺は瑠偉の隣に座り、瑠偉の表情を見つめていた。

ちなみに、ウィッグはまだつけたまま、瑠偉はそのことに気付いていなかった。

「―――はぁ・・・・生き返った。―――あの人は・・・・・?」

「出てったよ。瑠偉、どこまで覚えてる?」

「えーと・・・・ここにきて、ワイン勧められて―――それを断って、ジャケット脱いで――――あ、そうだ。さっきのクローゼットにジャケットをかけようとしたら、急にびりびりっとして―――」

「びりびり?」

「うん。あれ、もしかして―――スタンガンかもしれない」

「スタンガン?」

「うん。見てないからはっきりとはわからないけど、なんか電気が走ったような、そんな感覚だったんだ。ビリビリ?バチバチッて感じかな」

「そっか・・・・。それで、今はどう?どっか、痛いところとかある?」

俺の言葉に、瑠偉は首を傾げながら自分の体を触ったり、動かしてみたりした。

「―――いや、大丈夫。倒れた時にちょっと肩を打ったみたいだけど、大したことないし―――うん、大丈夫」

自分も納得したように頷く瑠偉。

俺はホッとして息を吐き出した。

「よかったぁ・・・・・」

そんな俺を見て、瑠偉はふわりと微笑んだ。

「リーダー、ありがとう。本当に助けに来てくれたんだね」

「そりゃそうだよ。でも、正直焦った。思ったよりも早くあいつが行動起こして―――間に合わなかったらどうしようって」

俺は、瑠偉の異変に気付いてから今までのことをかいつまんで瑠偉に説明した。

瑠偉は、真剣に俺の話に耳を傾けていたけれど―――

「―――それで、クローゼットに飛び込んだら、瑠偉が女もののウィッグをつけて倒れてたから―――」

「へ・・・・ウィッグ?」

瑠偉は目を瞬かせ、そしてはっとして自分の頭に手をやった。

「うわ、ほんとだ!なんか違和感あると思ったら―――てか、取ってよ、リーダー!」

そう言って瑠偉がウィッグを外そうとするのを見て、俺はその手を掴んだ。

「あ!ちょっと待って!」

「え?なんで?」

不思議そうな瑠偉に、俺は真剣にその目を見つめながら言った。

「すんごい、可愛いから」

「――――――はぁ?」

思いっきり、目が点になる瑠偉。

「こないだ、テレビでボブヘアーのウィッグつけたじゃん。そん時もすげえ可愛いって思ったんだ。たぶん、あの男もあれを見て、瑠偉に目をつけたんだよ!」

「いやいやいや・・・・何なの、それ」

意味がわからないという顔の瑠偉。

「だって、俺も思ったもん。瑠偉にもっとかわいいかっこしてもらいたいって」

「可愛いって―――俺、男だよ?最近筋トレ始めたから筋肉もついてきたし。確実にきもいんだけど」

「そんなことないよ。瑠偉、もともときれいな顔してるから、どんなにムキムキになったって女装とか似合うしかわいいもん!」

完全に我を忘れてた。

夢中になるあまり、俺は瑠偉の手を握りしめ、ものすごい至近距離で熱弁していたらしい。

「わ、わかったから、リーダー、ちか――――ぅわっ」

俺の勢いに押され、ソファーに座ったまま後ずさっていた瑠偉は、そのまま体を支えきれず、あおむけに倒れてしまった。

当然、俺は瑠偉の上に覆いかぶさる形に―――

「あ―――ごめん」

謝りながらも、俺は至近距離の瑠偉の顔に見惚れていた。

本当に整ったその顔はきれいすぎて。

その大きく輝く宝石のような瞳に、吸い寄せられる。

「―――ちょ、リーダー、どいてよ。さすがにおも―――」


無意識だった。

気付いた時には、俺は瑠偉に口付けていた。

柔らかく弾力のある唇は、さっき飲んだ水のせいか、微かに冷たく、湿っていた―――
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