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第37話

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「天宮くん。清水先生が養護施設へ訪ねてきたとき・・・君たちは部屋で何をしてた?」
「え・・・・?」
「部屋にずっと2人きりでいたんだろう?昨日樫本はそれを君に聞こうとしたけれど、止めたと言っていた。君の体調があまりよくないのと、中学時代のことを君自身があまり話したがっていない気がしたから、君から話すのを待ちたいって。事件に関係があることなら聞かなきゃいけないんだけどな」

そう言って苦笑する岩本さん。

―――先生が、施設に来てたときに、何をしていたか・・・・?

「清水先生は・・・・・優しくて・・・・・よく、施設にも会いに来てくれて・・・・部屋にも・・・・」
「ああ。いつも、君の部屋で会っていたんだろう?1時間、2時間いることもよくあったって聞いたけど」
「部屋に来て・・・・話をして・・・・」
「それで・・・?」

―――それで・・・・・?

心臓が、嫌な音を立てていた。

何かがおかしいと、俺の中で警笛が鳴る。

―――何が、おかしい・・・・・?

「天宮くん?清水先生は、君の部屋で何をしていたんだ?催眠術を・・・・掛けられていたんじゃないのか?」
「そんな、こと・・・・」

俺は、ゆるゆると首を振った。

「じゃあ、何をしていた?君は・・・もしかして、それを覚えてないんじゃないのか?催眠術を掛けられていたことも、部屋で何をしていた・・・・されていたのかも・・・・」

ドクン、ドクン

「天宮くん。よく思い出してみて。君の記憶が・・・この事件のなぞを解く鍵になるかもしれないんだ」

ドクン、ドクン

「先生は・・・・俺の部屋で・・・・」
「部屋で?」

ドクン、ドクン

「俺の目を見て・・・・」
「目を見て・・・・?」

ドクン、ドクン

『天宮くん、僕の目を見て』

『先生・・・・?なにするの・・・・?』

『君に起こった嫌なことを、僕が忘れさせてあげる』

『先生が・・・・・?』

『あんな男の記憶なんて、君の中から追い出してあげる』

ドクン

『君は、僕のことだけを考えていればいいんだよ―――』

ドクン―――



「うぁぁぁああ―――――!!!」
「天宮くん!?どうした!?」
「頭が・・・・頭が痛い・・・・!!」
「しっかりしろ!おい!救急車だ!」
「は、はい!!」
「それから、樫本を呼べ!!」
「はい!!!」



『君は、僕のものなんだ』

先生の声が、頭の中をぐるぐると回る。

『いつまでもずっと、僕のことだけを見ていればいいんだよ』



『君の恋人は、この僕だろう?』



『僕を裏切るなんて、許さないよ』



「うぁ・・・・・あぁッ・・・・・稔・・・・!!」



まるでものすごい力で頭を押し潰されているような、そんな激しい頭痛に身悶えながら、俺はいつしか意識を手放していた・・・・・。




「大丈夫ですよ。岩本さんなら、皐月くんのことを任せても。それより俺たちはもう一度清水先生のところへ―――」

デスクへ戻った俺に、関がそう言っていた時だった。

バタンと思いきりドアを開ける音が響いた。

「樫本さん!」

入ってきたのは息を切らせた若い刑事だった。

―――あれ?確か岩本さんと一緒に取調室にいたんじゃ・・・

「樫本さん!早く来てください!天宮さんが―――倒れました!!」

「!!」

彼を追及している余裕もなかった。

俺は部屋を飛び出し、取り調べ室へと駆け出した。




「皐月!!」

皐月は床に倒れ、岩本さんがその皐月の横に膝まづいていた。

「樫本、すまん、天宮くんが急に苦しみ出して―――」
「いったい何があったんですか?」

俺は皐月の横に膝をつくと、真っ青な顔で苦痛の表情を浮かべたまま気を失っている皐月の頬に手をあてた。

「今日、戸坂先生に聞いた話をしたんだ」
「・・・清水先生のことですか?」
「あぁ。あの施設に清水が来ていた時―――彼に催眠術を掛けられていたんじゃないかって言ったんだ。もちろん、覚えてはいないだろうと思ったよ。でも、そう言えば何か、思い出すんじゃないかと・・・」
「それで・・・」
「何か、思い出しかけているように見えた。だけど、すぐに苦しみ出して・・・・すまない。こんなことになるなんて・・・」
「岩本さんのせいじゃないです。でも、やっぱり施設にいた時に清水と何かあったことは確かな気がします」
「そうだな。お前は、このまま天宮くんについててやってくれ」
「え、でも・・・・」
「俺と関は、清水のところへ行く。・・・天宮くんが気付いたら、謝っといてくれ。すまなかったって・・・」

そう言って苦笑する岩本さんに、俺は頷いたのだった・・・・・。


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