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第22話
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「関」
園庭から正面玄関へと続く門をくぐった時だった。
門のすぐわきに立っていた樫本さんが、俺に声を掛けた。
「樫本さん?なんでここに・・・・」
車で待っていると思っていた。
さっきまで俺と藤崎さんが話していた場所は、門のすぐ裏手だ。
薄い壁1枚。
「・・・聞いてたんですか?」
樫本さんは、黙って頷いた。
「お前が、本当にトイレに行ったんじゃないってことくらい俺も岩本さんも気付いてたよ。俺がお前のあとをすぐに追った時、岩本さんも何も言わなかった」
「・・・・」
ぼーっとしているように見えて、やっぱりこの人も刑事なんだなと思う。
「・・・・西村サキさんのところへ、行くんだろう?」
樫本さんが先に立って歩き出す。
「樫本さん!でも・・・・今回の事件の犯人は今野じゃないことはわかってるし、今更当時のことを掘り返しても、西村さんや皐月くんを傷つけるだけじゃ・・・」
「事件に無関係かどうかは、まだわからないだろう?当時のことだって、もしかしたら何らかの関わりがあるかもしれない。どんなことでも、事件に関係あるかどうかは調べてみなけりゃわからない。だから、ここまで来たんじゃないのか?」
「それは、そうですけど」
それを知ったら、樫本さんはどう思う?
皐月くんがあの今野に何をされたか知ったら・・・・
樫本さんが、ぴたりと足を止めて俺を見た。
滅多に見ることのない、樫本さんの鋭い視線。
俺は、思わず後ずさった。
「・・・関、何を知ってる?」
「俺は・・・・」
「あのとき・・・・戸田くんの店で、今野が皐月に何を言ったのか・・・・戸田くんには聞こえてたはずだ。それを、お前は聞いたんじゃないのか?今野が、皐月に言った言葉を」
「それは・・・・」
俺は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。
俺の口から、樫本さんに言った方がいいんだろうか?でも―――
その事実を、皐月くんはなにより樫本さんに知られたくないはずだ。
「言わなくていいよ。―――西村さんから、聞く」
「樫本さん!」
「―――大丈夫だよ」
樫本さんが、ちらりと俺を見て笑った。
笑顔というよりは、口を端を上げて見せただけだったけれど・・・・。
俺は、黙って樫本さんのあとをついて行った・・・・・。
園庭から正面玄関へと続く門をくぐった時だった。
門のすぐわきに立っていた樫本さんが、俺に声を掛けた。
「樫本さん?なんでここに・・・・」
車で待っていると思っていた。
さっきまで俺と藤崎さんが話していた場所は、門のすぐ裏手だ。
薄い壁1枚。
「・・・聞いてたんですか?」
樫本さんは、黙って頷いた。
「お前が、本当にトイレに行ったんじゃないってことくらい俺も岩本さんも気付いてたよ。俺がお前のあとをすぐに追った時、岩本さんも何も言わなかった」
「・・・・」
ぼーっとしているように見えて、やっぱりこの人も刑事なんだなと思う。
「・・・・西村サキさんのところへ、行くんだろう?」
樫本さんが先に立って歩き出す。
「樫本さん!でも・・・・今回の事件の犯人は今野じゃないことはわかってるし、今更当時のことを掘り返しても、西村さんや皐月くんを傷つけるだけじゃ・・・」
「事件に無関係かどうかは、まだわからないだろう?当時のことだって、もしかしたら何らかの関わりがあるかもしれない。どんなことでも、事件に関係あるかどうかは調べてみなけりゃわからない。だから、ここまで来たんじゃないのか?」
「それは、そうですけど」
それを知ったら、樫本さんはどう思う?
皐月くんがあの今野に何をされたか知ったら・・・・
樫本さんが、ぴたりと足を止めて俺を見た。
滅多に見ることのない、樫本さんの鋭い視線。
俺は、思わず後ずさった。
「・・・関、何を知ってる?」
「俺は・・・・」
「あのとき・・・・戸田くんの店で、今野が皐月に何を言ったのか・・・・戸田くんには聞こえてたはずだ。それを、お前は聞いたんじゃないのか?今野が、皐月に言った言葉を」
「それは・・・・」
俺は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。
俺の口から、樫本さんに言った方がいいんだろうか?でも―――
その事実を、皐月くんはなにより樫本さんに知られたくないはずだ。
「言わなくていいよ。―――西村さんから、聞く」
「樫本さん!」
「―――大丈夫だよ」
樫本さんが、ちらりと俺を見て笑った。
笑顔というよりは、口を端を上げて見せただけだったけれど・・・・。
俺は、黙って樫本さんのあとをついて行った・・・・・。
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