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第18話

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「・・・あの3人が、あの時どんな心理状態だったのかまでは、俺にもわからない」

皐月が、ゆっくりと顔を上げながら言った。

「人の気持ちまでは、読めないから・・・・。ただ、あの3人も俺の知らない間にいろいろあったみたいだけど・・・」
「いろいろって?」
「・・・吉田は、一度結婚して去年離婚してる。子どもが1人いて、その子の養育費を稼ぐために、昼間の印刷会社の他に夜、ガードマンの仕事をしてる。あきらくんは結婚はしていないけど好きな地下アイドルがいて、その子の追っかけみたいなことしてた。でも、それがちょっといき過ぎちゃったみたいで・・・・その地下アイドルの事務所がストーカー被害届を出して、接近禁止命令を受けてる」
「ストーカー?」
「うん。でもその後、あきらくんはその子のことは諦めたみたいで、今は別のアイドルを追っかけてるよ。今度は行き過ぎないようにライブハウスに応援に行くくらいにしてるみたい」
「・・・・あの先生は?」
「清水先生は・・・・・俺が転校した後、同じ千葉の違う中学に転任になってそこで知り合った女性と結婚したけど子供はいなくて、去年その奥さんを病気で亡くしてる。今は東京の中学の教師をしながら1人暮らししてる」
「なるほど・・・・本当にいろいろあったんだな」

俺の言葉に裕太も頷いた。

その中で一番あやしいのは、アイドルのストーカーまがいのことをしていた田中だけど・・・・。

でも、今日会った限りでは確かにあの人の良さそうな田中が、皐月にあんなことをするとは考えにくいような・・・・。

「そういえば、その、田中さんがお前にあきらくんって呼ばれるの好きだったって言ってたな。優越感だったって」
「ああ・・・・なんか、あきらくんてちょっと俺のこと買い被ってるっていうか・・・・。俺、あんまり仲のいい奴っていなくていつも浮いてる感じだったの。それを、『オーラがすごい』とか『違うステージの人みたい』とか言って、勝手にカリスマみたいに思ってたみたいで・・・・何のカリスマだかわかんないけど。で、クラスに田中っていうのが2人いたから俺が名前で呼び始めたら、すごく喜んで・・・・『特別感がある!』とか言ってさ。俺のこと、そんな風に思ってるのあきらくんだけだったと思うけど」
「えー、なんかわかる気がするなあ。たぶんさ、みんなさっちゃんと仲良くなりたかったけどちょっと近寄りがたいっていうか・・・遠慮してたんじゃない?だからさ、そのさっちゃんと仲良くなって・・・・まるでアイドルと仲良くなれたみたいな気分だったんじゃない?」
「なるほどね・・・・そういうふうに考える人間もいるってことだよな。でも、実際彼は皐月にとってはいい友達だったわけだろ?」
「うん。転校してからも、ときどき電話してくれてたよ」

そんな人間が、皐月を殺そうとしたりするだろうか・・・・?

でも、あの3人には『昔世話になった人』という言葉が当てはまる。

もちろん決めつけてはいけないけれど・・・・。
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