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第15話
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「―――大丈夫か?皐月。顔色が・・・・」
車の助手席に座った皐月は目を閉じてシートにもたれていたけれど、その顔色はとても悪かった。
「だいじょぶ・・・ごめん、心配ばっかり・・・・」
「気にするな。・・・事務所に行こうか。裕太に、何か食べるもの作って持って来てもらえばいい」
「・・・・うん」
店で食べてもと思ったが、昨日の今野が来ないとも限らない。
今の皐月に、余計な負担はかけたくなかった。
あの今野の言った言葉。
自分が、皐月の初めての男だと・・・・。
その時の皐月の様子を思い出してみれば、それが真実だと信じざるを得なかった。
関は、今野のことを調べてみると言っていた。
事件の犯人はあの男じゃないと皐月は言っていたけれど、皐月が昔世話になった人という人物に会っていたとしたら、あの男が全くの無関係とは限らないと思ったからだ。
どこかで犯人に繋がっている可能性があるんじゃないか。
しかし、今野を調べるということは皐月の過去を調べるということ。
もちろん、事件が起きてから捜査は皐月の過去に及ぶことはわかっていた。
だが今野との関係を調べるということは、皐月の、もしかしたら人には触れられたくない過去にも触れなくてはいけないということだ。
もしかしたらそれは皐月だけじゃなく、稔くんにとっても辛い事実を知ることになるかもしれない。
―――今頃、稔くんは何をしているんだろう。
被害者の関係者ということで、今回は捜査から外されていると聞いたけれど・・・・。
「―――何であなたがいるんですか」
俺は、車の後部座席に当たり前のように座っている樫本さんを睨みつけた。
「千葉に行くんだろう?俺も行く」
「樫本、お前な・・・・」
助手席に乗っていた岩本さんも溜息をつく。
今回、俺は先輩刑事の岩本さんとコンビを組んでいた。
「わかってるのか?お前は捜査から外されてるんだぞ?お前にはお前に任されている仕事があるだろう」
「わかってます。ですからそれもちゃんとやりますよ。署に戻ってから―――」
「・・・ったく。書類整理なんて、いつでも誰にでもできる仕事をやらせるなんて・・・・課長も甘いんだからな!」
そう、結局樫本さんが課長にどうしても捜査に加わりたいと直談判し、根負けした課長が表向きはごくごく簡単な雑用を与え、空いた時間は別の捜査の手伝いをしろ・・・・という命令を下したのだった。
「・・・皐月くんの様子はどうですか?」
「今朝、ちゃんと仕事に向かったよ。朝食も、少ないけどちゃんと食べてたし、少し顔色がよくないけど・・・・本人は、大丈夫だって言ってた」
樫本さんが淡々と話す。
本当は、心配で仕方ないのだろう。
ずっと皐月くんの傍についていてあげたいはずだ。
「・・・なら、大丈夫ですよ。浩斗さんが一緒なんだし」
「うん」
「・・・やっぱり、事件の日のことは思い出せないのか?」
岩本さんの言葉に、樫本さんは頷いた。
「はい。本人も必死に思い出そうとしてるんですけど、まったく・・・・。本当に、その日1日のことが記憶から抜け落ちてしまってるみたいです」
「そうか・・・・。残念だが、そればっかりは仕方ないからな。無理をさせてもしょうがない。天宮くんには、あまり焦らないように言っといてくれよ」
「はい、ありがとうございます」
車の助手席に座った皐月は目を閉じてシートにもたれていたけれど、その顔色はとても悪かった。
「だいじょぶ・・・ごめん、心配ばっかり・・・・」
「気にするな。・・・事務所に行こうか。裕太に、何か食べるもの作って持って来てもらえばいい」
「・・・・うん」
店で食べてもと思ったが、昨日の今野が来ないとも限らない。
今の皐月に、余計な負担はかけたくなかった。
あの今野の言った言葉。
自分が、皐月の初めての男だと・・・・。
その時の皐月の様子を思い出してみれば、それが真実だと信じざるを得なかった。
関は、今野のことを調べてみると言っていた。
事件の犯人はあの男じゃないと皐月は言っていたけれど、皐月が昔世話になった人という人物に会っていたとしたら、あの男が全くの無関係とは限らないと思ったからだ。
どこかで犯人に繋がっている可能性があるんじゃないか。
しかし、今野を調べるということは皐月の過去を調べるということ。
もちろん、事件が起きてから捜査は皐月の過去に及ぶことはわかっていた。
だが今野との関係を調べるということは、皐月の、もしかしたら人には触れられたくない過去にも触れなくてはいけないということだ。
もしかしたらそれは皐月だけじゃなく、稔くんにとっても辛い事実を知ることになるかもしれない。
―――今頃、稔くんは何をしているんだろう。
被害者の関係者ということで、今回は捜査から外されていると聞いたけれど・・・・。
「―――何であなたがいるんですか」
俺は、車の後部座席に当たり前のように座っている樫本さんを睨みつけた。
「千葉に行くんだろう?俺も行く」
「樫本、お前な・・・・」
助手席に乗っていた岩本さんも溜息をつく。
今回、俺は先輩刑事の岩本さんとコンビを組んでいた。
「わかってるのか?お前は捜査から外されてるんだぞ?お前にはお前に任されている仕事があるだろう」
「わかってます。ですからそれもちゃんとやりますよ。署に戻ってから―――」
「・・・ったく。書類整理なんて、いつでも誰にでもできる仕事をやらせるなんて・・・・課長も甘いんだからな!」
そう、結局樫本さんが課長にどうしても捜査に加わりたいと直談判し、根負けした課長が表向きはごくごく簡単な雑用を与え、空いた時間は別の捜査の手伝いをしろ・・・・という命令を下したのだった。
「・・・皐月くんの様子はどうですか?」
「今朝、ちゃんと仕事に向かったよ。朝食も、少ないけどちゃんと食べてたし、少し顔色がよくないけど・・・・本人は、大丈夫だって言ってた」
樫本さんが淡々と話す。
本当は、心配で仕方ないのだろう。
ずっと皐月くんの傍についていてあげたいはずだ。
「・・・なら、大丈夫ですよ。浩斗さんが一緒なんだし」
「うん」
「・・・やっぱり、事件の日のことは思い出せないのか?」
岩本さんの言葉に、樫本さんは頷いた。
「はい。本人も必死に思い出そうとしてるんですけど、まったく・・・・。本当に、その日1日のことが記憶から抜け落ちてしまってるみたいです」
「そうか・・・・。残念だが、そればっかりは仕方ないからな。無理をさせてもしょうがない。天宮くんには、あまり焦らないように言っといてくれよ」
「はい、ありがとうございます」
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