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第38話
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戸田くんは、皐月に言われて店の食材などの整理に行っていた。
この話を聞かせたくなかったんだろう。
「こいつは、あの日裕太くんと俺が店でレシピの打ち合わせをするなんて知らなかったから、自分がバイトを終える10時過ぎに久美ちゃんを殺害し、店に忍び込むつもりだったんだ。もしそうなってたら、俺と裕太くんが店にいて、計画通りにはならなかったんだけど―――時間が早まったことで、逆に自分のアリバイも作ることができ、偶然店に誰もいない時間に忍び込むことに成功したんだ」
皐月が、辛そうに眉間にしわを寄せた。
久美ちゃんが店に飛び込んで来て、誰かから逃げてると知った山本は久美ちゃんを店の裏へと連れて行った。
そして、内線電話を使ってレジにいた女性に久美ちゃんを送ってくると言って店を出て、店の近くの駐車場に止めていた自分の車に乗せ、そこで久美ちゃんを殺害した。
山本は、久美ちゃんが店の鍵を持っていることを知っていた。
久美ちゃんを店に連れていき、その鍵で中に入ると久美ちゃんを店の冷蔵庫に押し込み、そのまま店をあとにしたのだ。
殺害する方法も、店の冷蔵庫に入れることも、最初から計画していて何度も頭の中でシミュレーションしていたのだろう。
車の中には、死体を運ぶためのスーツケースも用意してあり、そこからはなにも焦ることなく計画が実行できたのだ・・・・・。
山本の計画通り、戸田くんに疑いの目を向けさせることもできたし、レジの女性が自分に気があることも知っていたのでアリバイ工作も抜かりなかった。
山本の想定外だったもの。
それは、皐月の存在だった。
皐月は、呆然とする山本の目の前で、山本の取った行動を全て事細かに説明したのだった・・・・・。
「お前の車から、血痕が見つかったよ。それから、お前の部屋から死体を運んだと思われるスーツケースも見つかった。さぁ、ここからは警察の方で話を聞くから、行こうか」
関が、頭を抱えて項垂れる山本の腕を掴んで立たせた。
山本が、その目をぎょろつかせ目の前の皐月を睨みつけた。
「―――何で・・・・何で誰にも言ってないことが、お前にわかるんだ!どうして俺のやったことが・・・俺の見たことがわかるんだよ!お前・・・・何なんだよ!」
顔面蒼白で冷静さを失った山本を、皐月は無表情に見つめていた。
そんな皐月を見て山本はさらに目を見開き、震える声でこう言った。
「気持ちわりい・・・・・お前、気持ち悪いんだよ!」
吐き捨てられたその罵声に、皐月は顔色一つ変えなかったけれど―――
『バキッ!!!』
「樫本さん!」
気付けば俺は、山本の顔を思いきり殴りつけていた。
右手がびりびりと痺れ、熱くなっていた。
「―――皐月を―――皐月を侮辱するやつは俺が許さねえ!!」
「稔・・・・・」
皐月が、目を見開いて俺を見つめていた・・・・・。
山本は犯行を全て自供した。
全てが皐月の話の通りだった。
山本の部屋から凶器も見つかり、ようやく事件は解決となったのだった・・・・・。
「ありがとう。久美も、きっと喜んでくれてるよ」
久美ちゃんの葬儀は、岩本さんが仕切って内々で行われた。
生前久美ちゃんに、兄だと名乗り出ることはできなかった岩本さんだったけれど、1人ぼっちだった久美ちゃんに家族ができたことは、俺たちにとっても嬉しいことだった。
戸田くんの店は、浩斗くんの従妹の女子大生がアルバイトで働いてくれることになった。
久美ちゃんが好きだったのは戸田くんだと戸田くん本人は気付いていなかったが、今回のことでうすうす感づいたようだった。
『もっと、ちゃんと話をしておけばよかったな・・・・・俺は、久美ちゃんのために何もしてあげられなかった・・・・・』
そう言って深い溜息をついた戸田くんに、皐月が言っていた。
『久美ちゃんにとって、裕太くんの存在自体が癒しだったんだ。そばにいられるだけで、幸せを感じてた。裕太くんが気付かなくても・・・・久美ちゃんは、幸せだったんだよ』
皐月の言葉に、戸田くんは泣きそうな顔で笑っていた・・・・・。
この話を聞かせたくなかったんだろう。
「こいつは、あの日裕太くんと俺が店でレシピの打ち合わせをするなんて知らなかったから、自分がバイトを終える10時過ぎに久美ちゃんを殺害し、店に忍び込むつもりだったんだ。もしそうなってたら、俺と裕太くんが店にいて、計画通りにはならなかったんだけど―――時間が早まったことで、逆に自分のアリバイも作ることができ、偶然店に誰もいない時間に忍び込むことに成功したんだ」
皐月が、辛そうに眉間にしわを寄せた。
久美ちゃんが店に飛び込んで来て、誰かから逃げてると知った山本は久美ちゃんを店の裏へと連れて行った。
そして、内線電話を使ってレジにいた女性に久美ちゃんを送ってくると言って店を出て、店の近くの駐車場に止めていた自分の車に乗せ、そこで久美ちゃんを殺害した。
山本は、久美ちゃんが店の鍵を持っていることを知っていた。
久美ちゃんを店に連れていき、その鍵で中に入ると久美ちゃんを店の冷蔵庫に押し込み、そのまま店をあとにしたのだ。
殺害する方法も、店の冷蔵庫に入れることも、最初から計画していて何度も頭の中でシミュレーションしていたのだろう。
車の中には、死体を運ぶためのスーツケースも用意してあり、そこからはなにも焦ることなく計画が実行できたのだ・・・・・。
山本の計画通り、戸田くんに疑いの目を向けさせることもできたし、レジの女性が自分に気があることも知っていたのでアリバイ工作も抜かりなかった。
山本の想定外だったもの。
それは、皐月の存在だった。
皐月は、呆然とする山本の目の前で、山本の取った行動を全て事細かに説明したのだった・・・・・。
「お前の車から、血痕が見つかったよ。それから、お前の部屋から死体を運んだと思われるスーツケースも見つかった。さぁ、ここからは警察の方で話を聞くから、行こうか」
関が、頭を抱えて項垂れる山本の腕を掴んで立たせた。
山本が、その目をぎょろつかせ目の前の皐月を睨みつけた。
「―――何で・・・・何で誰にも言ってないことが、お前にわかるんだ!どうして俺のやったことが・・・俺の見たことがわかるんだよ!お前・・・・何なんだよ!」
顔面蒼白で冷静さを失った山本を、皐月は無表情に見つめていた。
そんな皐月を見て山本はさらに目を見開き、震える声でこう言った。
「気持ちわりい・・・・・お前、気持ち悪いんだよ!」
吐き捨てられたその罵声に、皐月は顔色一つ変えなかったけれど―――
『バキッ!!!』
「樫本さん!」
気付けば俺は、山本の顔を思いきり殴りつけていた。
右手がびりびりと痺れ、熱くなっていた。
「―――皐月を―――皐月を侮辱するやつは俺が許さねえ!!」
「稔・・・・・」
皐月が、目を見開いて俺を見つめていた・・・・・。
山本は犯行を全て自供した。
全てが皐月の話の通りだった。
山本の部屋から凶器も見つかり、ようやく事件は解決となったのだった・・・・・。
「ありがとう。久美も、きっと喜んでくれてるよ」
久美ちゃんの葬儀は、岩本さんが仕切って内々で行われた。
生前久美ちゃんに、兄だと名乗り出ることはできなかった岩本さんだったけれど、1人ぼっちだった久美ちゃんに家族ができたことは、俺たちにとっても嬉しいことだった。
戸田くんの店は、浩斗くんの従妹の女子大生がアルバイトで働いてくれることになった。
久美ちゃんが好きだったのは戸田くんだと戸田くん本人は気付いていなかったが、今回のことでうすうす感づいたようだった。
『もっと、ちゃんと話をしておけばよかったな・・・・・俺は、久美ちゃんのために何もしてあげられなかった・・・・・』
そう言って深い溜息をついた戸田くんに、皐月が言っていた。
『久美ちゃんにとって、裕太くんの存在自体が癒しだったんだ。そばにいられるだけで、幸せを感じてた。裕太くんが気付かなくても・・・・久美ちゃんは、幸せだったんだよ』
皐月の言葉に、戸田くんは泣きそうな顔で笑っていた・・・・・。
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