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第37話
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関が店内に入り、従業員用の出入り口に向かう。
俺は店の裏に回り、裏口の扉へと手を伸ばしたが―――
突然扉が外側に開き、中から男が飛び出してきた。
茶色く痛んだ髪に、不健康そうな青白い顔。
山本だ。
山本は俺の顔を見るとぎょっとして、一瞬止まりかけたけれど―――
「くっ」
そのまま俺を突き飛ばすように走りだした。
「おい!待て!!」
油断していたつもりはなかったけれど、山本が思いのほか焦っていて、受け身を取るのが遅れてしまった。
突き飛ばされたはずみでよろけてしまい、追いかけるのが遅れる。
―――逃げられる!!
そう思ったけれど―――
「うわっ」
店の角を曲がったと思った山本が、大きな声を出したかと思うとどさっと何かが倒れる音。
俺は急いでその後を追って角を曲がる。
そこにいたのは前のめりに地面に倒れ込んだ山本と、それを腕を組んで見下ろす皐月だった。
「皐月!」
「足、ちょっと出したら勝手に引っかかって転んでくれたよ」
そう言って、皐月はにっこりと笑ったのだった・・・・・。
「俺は、何もしてない!店の裏で仕事してたって言ってんだろ!」
探偵事務所へ連れて来られた山本が、落ち着きなく視線を彷徨わせながらそう声を張り上げた。
「だから、そのことなら彼女が証言してくれたよ。あんたに頼まれて、店にいたことにしてくれって言われたんだって」
関の言葉に山本は青くなりながらも、関を睨みつけながらふん、と鼻を鳴らした。
「あいつ、俺に振られたからってそんなこと言ってんだよ。俺が裏にいなかったなんて、レジにいたあいつにわかるわけないじゃん」
確かに、店内と違って従業員のみが入れる店の事務所には監視カメラはついていないので、そこにいるかどうか、レジの人間には確かめようがないのだけれど・・・・
「運送会社の人間が、来てるんだよ」
俺の言葉に、山本がぎょっとする。
「夜の11時に、運送会社のドライバーが宅配の荷物の集荷にきてる。さっき、電話で確認したよ。事務所でサインをもらおうと思ったら、誰もいなかったんでレジの彼女に頼んだって。ドライバーがレジでサインをもらってるところは、監視カメラでも確認できてる。その時間、どこで何をしていたか説明してもらおうか?」
「それは・・・・!」
「俺が代わりに説明しようか?」
そう言って、山本の目の前に座った皐月が山本の顔を覗きこんだ。
「なんだよ、お前・・・・」
「―――ずっと、久美ちゃんのことをつけまわしてただろ?久美ちゃんに別れたいって言われて、焦ってたんだ。久美ちゃんの優しさにつけ込んで、浮気なんてし放題だと思ってたんだろ?だけどそうじゃなかった。久美ちゃんは、あんたが思っているよりもずっと芯のしっかりした、まじめな女の子だからね。でも別れ話を切り出された時―――ほぼ同時期に、久美ちゃんの出生の秘密も知った。久美ちゃんに会いに行ったとき、偶然重松完治が久美ちゃんのマンションの部屋から出てくるのを見て。それで、あんたは久美ちゃんと結婚することを企んだんだ。でもこのままじゃ、久美ちゃんは自分と別れて向井直人と結婚してしまう。それで、あんたはなんとか久美ちゃんと結婚する方法を見つけようと久美ちゃんの周りを嗅ぎまわってた」
皐月の話に、山本の顔は見る見る青くなっていった。
目を見開き、額には脂汗が浮かんでいた。
「なに・・・・・言ってんだよ・・・・」
「向井直人がゲイだってことも嗅ぎつけた。久美ちゃんが向井と結婚する気がないことを知って一度は安心したけど、久美ちゃんにしつこく迫って、久美ちゃんに自分とは別に好きな人がいること―――自分とやり直すつもりはないことを知って―――憎しみが、増したんだろうね。その憎しみが殺意に変わり、今回の計画を思いついたんだ」
「計画?だって、今回久美ちゃんがあのホテルに行ってすぐに飛び出してきたのって、前から決まってた事じゃないだろ?」
自分のデスクに座り、俺たちの会話をずっと聞いていた浩斗くんが口を開いた。
「ううん、途中までは計画通りだったんだよ。久美ちゃんが向井からあのホテルに呼び出すメールをもらったとき、偶然こいつが傍にいたんだよ。それで、そのメールの内容を知って、こう言ったんだ。『向井に言いくるめられないように、好きな人と会う約束をしてるからって言ってすぐに出てこい』って。向井が久美ちゃんの好きな人を知ってることも、それを理解してくれてることも知ってる。だからそう言えば向井は納得することもわかってたし、そうすれば裕太くんに罪を着せることができる―――こいつは、そう思ったんだよ」
俺は店の裏に回り、裏口の扉へと手を伸ばしたが―――
突然扉が外側に開き、中から男が飛び出してきた。
茶色く痛んだ髪に、不健康そうな青白い顔。
山本だ。
山本は俺の顔を見るとぎょっとして、一瞬止まりかけたけれど―――
「くっ」
そのまま俺を突き飛ばすように走りだした。
「おい!待て!!」
油断していたつもりはなかったけれど、山本が思いのほか焦っていて、受け身を取るのが遅れてしまった。
突き飛ばされたはずみでよろけてしまい、追いかけるのが遅れる。
―――逃げられる!!
そう思ったけれど―――
「うわっ」
店の角を曲がったと思った山本が、大きな声を出したかと思うとどさっと何かが倒れる音。
俺は急いでその後を追って角を曲がる。
そこにいたのは前のめりに地面に倒れ込んだ山本と、それを腕を組んで見下ろす皐月だった。
「皐月!」
「足、ちょっと出したら勝手に引っかかって転んでくれたよ」
そう言って、皐月はにっこりと笑ったのだった・・・・・。
「俺は、何もしてない!店の裏で仕事してたって言ってんだろ!」
探偵事務所へ連れて来られた山本が、落ち着きなく視線を彷徨わせながらそう声を張り上げた。
「だから、そのことなら彼女が証言してくれたよ。あんたに頼まれて、店にいたことにしてくれって言われたんだって」
関の言葉に山本は青くなりながらも、関を睨みつけながらふん、と鼻を鳴らした。
「あいつ、俺に振られたからってそんなこと言ってんだよ。俺が裏にいなかったなんて、レジにいたあいつにわかるわけないじゃん」
確かに、店内と違って従業員のみが入れる店の事務所には監視カメラはついていないので、そこにいるかどうか、レジの人間には確かめようがないのだけれど・・・・
「運送会社の人間が、来てるんだよ」
俺の言葉に、山本がぎょっとする。
「夜の11時に、運送会社のドライバーが宅配の荷物の集荷にきてる。さっき、電話で確認したよ。事務所でサインをもらおうと思ったら、誰もいなかったんでレジの彼女に頼んだって。ドライバーがレジでサインをもらってるところは、監視カメラでも確認できてる。その時間、どこで何をしていたか説明してもらおうか?」
「それは・・・・!」
「俺が代わりに説明しようか?」
そう言って、山本の目の前に座った皐月が山本の顔を覗きこんだ。
「なんだよ、お前・・・・」
「―――ずっと、久美ちゃんのことをつけまわしてただろ?久美ちゃんに別れたいって言われて、焦ってたんだ。久美ちゃんの優しさにつけ込んで、浮気なんてし放題だと思ってたんだろ?だけどそうじゃなかった。久美ちゃんは、あんたが思っているよりもずっと芯のしっかりした、まじめな女の子だからね。でも別れ話を切り出された時―――ほぼ同時期に、久美ちゃんの出生の秘密も知った。久美ちゃんに会いに行ったとき、偶然重松完治が久美ちゃんのマンションの部屋から出てくるのを見て。それで、あんたは久美ちゃんと結婚することを企んだんだ。でもこのままじゃ、久美ちゃんは自分と別れて向井直人と結婚してしまう。それで、あんたはなんとか久美ちゃんと結婚する方法を見つけようと久美ちゃんの周りを嗅ぎまわってた」
皐月の話に、山本の顔は見る見る青くなっていった。
目を見開き、額には脂汗が浮かんでいた。
「なに・・・・・言ってんだよ・・・・」
「向井直人がゲイだってことも嗅ぎつけた。久美ちゃんが向井と結婚する気がないことを知って一度は安心したけど、久美ちゃんにしつこく迫って、久美ちゃんに自分とは別に好きな人がいること―――自分とやり直すつもりはないことを知って―――憎しみが、増したんだろうね。その憎しみが殺意に変わり、今回の計画を思いついたんだ」
「計画?だって、今回久美ちゃんがあのホテルに行ってすぐに飛び出してきたのって、前から決まってた事じゃないだろ?」
自分のデスクに座り、俺たちの会話をずっと聞いていた浩斗くんが口を開いた。
「ううん、途中までは計画通りだったんだよ。久美ちゃんが向井からあのホテルに呼び出すメールをもらったとき、偶然こいつが傍にいたんだよ。それで、そのメールの内容を知って、こう言ったんだ。『向井に言いくるめられないように、好きな人と会う約束をしてるからって言ってすぐに出てこい』って。向井が久美ちゃんの好きな人を知ってることも、それを理解してくれてることも知ってる。だからそう言えば向井は納得することもわかってたし、そうすれば裕太くんに罪を着せることができる―――こいつは、そう思ったんだよ」
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