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第36話
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「そう、久美ちゃんの彼氏が、事件当日も働いていたと言ってたコンビニだよ。―――直人さんも、久美ちゃんから聞いてましたよね?彼氏のこと」
直人が、皐月の言葉になにか思い出したように頷いた。
「ええ、そういえば・・・・・始め声をかけられたときはとても楽しくてこの人なら好きになれるかもと思って付き合い始めたけれど、付き合ってみたらとても浮気性だということがわかって、もう別れたいと言っていました。ただ、相手がなかなか別れに応じてくれないと―――毎日のように電話やメールを寄越していて困っていると・・・・」
その話に皐月は頷き、SPの方を向いた。
「お二人も、見かけたことがあるんじゃないですか?直人さんが彼女と会っている時―――物陰から2人の様子をうかがってる男がいたでしょう」
皐月の言葉に、SPの2人は驚いて顔を見合わせた。
答えたのは高木だ。
「確かに、いました。直人さんの父親の動向を探るものかと思って、一応調べたんです。確かに、山本亮太という男でした。あまりしつこく久美子さんに付きまとうようなら報告しなければと思っていたんです」
「―――あなたがコンビニに入った時、その男はいましたか?」
皐月が伊藤に聞くと、伊藤ははっきりと首を振った。
「いえ、その時レジにいたのは若い女性です。店内にも山本はいませんでした。間違いありません」
「―――皐月くん、じゃあ、山本が・・・・?」
関の言葉に、皐月は慎重に口を開いた。
「まだわからない。俺、その山本って男には会ったことないから。ただ、岩本さんが見た店の様子をうかがっていた人物も、たぶん山本だと思うんだ。岩本さんが見たそいつの靴と、その2人が見た山本の靴が同じだから。山本のバイト先は、ここから歩いて10分くらいだ。車があれば3分で着く。仕事中でも休憩時間に行って帰ってこれる距離だよ」
「でも、確か山本にはアリバイが―――」
関の言葉に俺も頷く。
「うん。同じ時間にバイトしてる女性が、8時から10時までは確かに山本は店にいたって―――」
「その女性の証言だけ?監視カメラの映像とか、見た?」
皐月の言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
「いや・・・・そこまでは・・・・・でも、タイムカードの時間も確認してるし、その女性が嘘をついたとしたら、山本の犯行を知ってるってことに―――」
いくら頼まれたからって、単なるバイト先の同僚のために偽証までするだろうか?
と、皐月が俺の考えを読んだかのように口を開いた。
「2人の関係が、単なる同僚じゃなかったら?山本って、浮気性だって言ってたんだよね?久美ちゃんは。別れたくなるくらい」
「じゃあ・・・・」
「樫本さん、これからあのコンビニ、行ってみましょう。監視カメラの映像も見せてもらって、あのときのバイトの女性にもう一度話を聞けば―――」
関が立ち上がると、続いて皐月も立ち上がる。
「俺も行く。たぶん今日、山本もいると思うし、その女の子もいるよ」
「え、なんでそんなことわかるんですか?」
何も知らない直人が驚いて聞く。
「勘ですよ」
皐月がにっこりと笑って言ってのけるのを、傍で見ていた浩斗くんと戸田くんも苦笑して見ていた・・・・・。
大人数でぞろぞろ行ってもどうかということで、コンビニには俺と関と皐月が向かうことになった。
向井直人とSP2人には、またあとで話を聞くということを承諾してもらい、今日のところは帰ってもらうことにした。
コンビニに着くと、まずは外から店内を覗いてみる。
レジにいるのは、確かに事件当日の山本のアリバイを証言した女性だった。
店内には、見る限り山本の姿はないようだったが・・・・・
「皐月、彼女見て、何かわかる?」
俺の言葉に、皐月はじっとその女性を見つめながら口を開いた。
「―――うん。やっぱり、彼女は山本と関係があるよ。でも―――ちょっと怯えてる。山本のことを疑ってて・・・・それを山本に問い詰めた時に脅されてるみたい。ね、山本に話を聞くなら早く行った方がいい。ここの監視カメラ、店の外も見れるやつじゃない?」
「あ・・・・」
「やばっ、うっかりしてた!樫本さん、裏から行ってください!俺はこっちから行きます!」
俺は慌てて、店の裏へと走り出したのだった・・・・・。
直人が、皐月の言葉になにか思い出したように頷いた。
「ええ、そういえば・・・・・始め声をかけられたときはとても楽しくてこの人なら好きになれるかもと思って付き合い始めたけれど、付き合ってみたらとても浮気性だということがわかって、もう別れたいと言っていました。ただ、相手がなかなか別れに応じてくれないと―――毎日のように電話やメールを寄越していて困っていると・・・・」
その話に皐月は頷き、SPの方を向いた。
「お二人も、見かけたことがあるんじゃないですか?直人さんが彼女と会っている時―――物陰から2人の様子をうかがってる男がいたでしょう」
皐月の言葉に、SPの2人は驚いて顔を見合わせた。
答えたのは高木だ。
「確かに、いました。直人さんの父親の動向を探るものかと思って、一応調べたんです。確かに、山本亮太という男でした。あまりしつこく久美子さんに付きまとうようなら報告しなければと思っていたんです」
「―――あなたがコンビニに入った時、その男はいましたか?」
皐月が伊藤に聞くと、伊藤ははっきりと首を振った。
「いえ、その時レジにいたのは若い女性です。店内にも山本はいませんでした。間違いありません」
「―――皐月くん、じゃあ、山本が・・・・?」
関の言葉に、皐月は慎重に口を開いた。
「まだわからない。俺、その山本って男には会ったことないから。ただ、岩本さんが見た店の様子をうかがっていた人物も、たぶん山本だと思うんだ。岩本さんが見たそいつの靴と、その2人が見た山本の靴が同じだから。山本のバイト先は、ここから歩いて10分くらいだ。車があれば3分で着く。仕事中でも休憩時間に行って帰ってこれる距離だよ」
「でも、確か山本にはアリバイが―――」
関の言葉に俺も頷く。
「うん。同じ時間にバイトしてる女性が、8時から10時までは確かに山本は店にいたって―――」
「その女性の証言だけ?監視カメラの映像とか、見た?」
皐月の言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
「いや・・・・そこまでは・・・・・でも、タイムカードの時間も確認してるし、その女性が嘘をついたとしたら、山本の犯行を知ってるってことに―――」
いくら頼まれたからって、単なるバイト先の同僚のために偽証までするだろうか?
と、皐月が俺の考えを読んだかのように口を開いた。
「2人の関係が、単なる同僚じゃなかったら?山本って、浮気性だって言ってたんだよね?久美ちゃんは。別れたくなるくらい」
「じゃあ・・・・」
「樫本さん、これからあのコンビニ、行ってみましょう。監視カメラの映像も見せてもらって、あのときのバイトの女性にもう一度話を聞けば―――」
関が立ち上がると、続いて皐月も立ち上がる。
「俺も行く。たぶん今日、山本もいると思うし、その女の子もいるよ」
「え、なんでそんなことわかるんですか?」
何も知らない直人が驚いて聞く。
「勘ですよ」
皐月がにっこりと笑って言ってのけるのを、傍で見ていた浩斗くんと戸田くんも苦笑して見ていた・・・・・。
大人数でぞろぞろ行ってもどうかということで、コンビニには俺と関と皐月が向かうことになった。
向井直人とSP2人には、またあとで話を聞くということを承諾してもらい、今日のところは帰ってもらうことにした。
コンビニに着くと、まずは外から店内を覗いてみる。
レジにいるのは、確かに事件当日の山本のアリバイを証言した女性だった。
店内には、見る限り山本の姿はないようだったが・・・・・
「皐月、彼女見て、何かわかる?」
俺の言葉に、皐月はじっとその女性を見つめながら口を開いた。
「―――うん。やっぱり、彼女は山本と関係があるよ。でも―――ちょっと怯えてる。山本のことを疑ってて・・・・それを山本に問い詰めた時に脅されてるみたい。ね、山本に話を聞くなら早く行った方がいい。ここの監視カメラ、店の外も見れるやつじゃない?」
「あ・・・・」
「やばっ、うっかりしてた!樫本さん、裏から行ってください!俺はこっちから行きます!」
俺は慌てて、店の裏へと走り出したのだった・・・・・。
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