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第11話

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「っ・・・・・んっ、み・・・・・」

息つぐ間も与えないほどの激しいキスに、皐月の目尻に涙がにじむ。

それでも俺は、キスを止めることができなかった。

皐月と会えなかった切なさが。

皐月を抱きしめられなかったもどかしさが。

俺を暴走させていた―――。

―――皐月は、違うのか・・・・・?

こんなに、俺の体は皐月を求めてるのに―――


「―――さっきから、インタホンが鳴りまくってますけど」

「聞こえてないんじゃない?」

突然近くで聞こえた関と戸田くんの声に、皐月が慌てて俺から離れる。

「ご・・・・ごめんっ」

そう言って、慌てて玄関の扉を開ける皐月。


玄関へ、仏頂面の浩斗くんが入ってくる。

「何してたの。いないのかと思ったよ」

「ごめん・・・・トイレ、行ってて」

「4人で?」

浩斗くんが呆れたように俺たちを見渡した。

河合浩斗くんは皐月の勤める探偵事務所の所長だ。

歳は俺の一つ下だが、整った顔立ちとスラっとしたスタイル、知性を感じさせるその出で立ちに育ちの良さを感じる。


「―――まあ、いいけど。上がってもいい?できればコーヒーとかもらえるとありがたいんだけど」

「今、入れるから・・・・リビングで待ってて」

皐月が慌ててキッチンへと入っていく。

浩斗くんは俺をちらりと見たあと、関と一緒にリビングへと入っていった。

「―――樫ちゃん」

戸田くんが俺を見る。

明るく人懐こい戸田くんは、何度か会っているうちに自然と俺を『樫ちゃん』と呼ぶようになっていた。

「ごめんね」

「え・・・・・」

「いい気持ちになんか、なるわけないよね。さっちゃんが俺の家に泊まるなんて言って・・・・・」

「いや・・・・それは・・・・・」

「わかってるんだ。2人が、ここんとこずっと忙しくて会ってなかったことも。本当だったら一緒にいたいはずなのに、こんなことになって・・・・・」

「・・・・仕方がないよ。それは、戸田くんのせいじゃない。俺の方こそ、ごめん。戸田くんがショック受けてること、わかってるはずなのに・・・・」

俺は戸田くんに向かって頭を下げた。

「やめてよ、樫ちゃん。俺は、大丈夫・・・・じゃないけど、でも、こうしてみんな心配してくれるし・・・・さっちゃんが、傍についててくれるのが、すごくうれしい。でも大丈夫だよ。俺、さっちゃんのこと好きだけど、さっちゃんに変なこととかしないからね」

「べ・・・・別に、そんなこと・・・・」

心配してない、と言おうとして言葉に詰まる。

心にもないことは言えなかった。


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