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第7話

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課長の命令に、刑事たちがそれぞれあわただしく行動をし始めた。

俺と関も部屋を出ようとして―――

「樫本、関」

岩本さんの声に、足を止める。

「―――はい?」

岩本さんは俺たちの傍に来ると、ちょっと声をひそめた。

「あの、天宮皐月のことだけど・・・・あいつは、あれか、その―――そっちの気が、あるのか?」

その言葉に、俺たちは顔を見合わせた。

「そっちの気って・・・・」

「だからその・・・・男同士の・・・・いや、なんか、俺のことじっと見てただろ。なんかこう、変な感覚っつうか、妙に色気があるっつうか・・・・。戸田のこと庇う時も必死だったし、もしかしたら戸田と何か関係が―――」

「それはないです」

即座に、俺は答えていた。

「え・・・・」

「あの2人は、そんな関係じゃないですよ。岩本さんが感じた変な感覚も、気のせいです。さつ―――天宮は、人の顔をじっと見つめる癖があるんだと思います」

「あ・・・・そっか・・・・まあ、そうだよな、うん。あ、気にしないでくれ」

そう言うと、岩本さんはぎこちない笑顔を浮かべたあと、また課長のところへと戻っていった。

それから俺たちは、関が運転する車に乗って署を出た。

「―――戸田さんのところですか?」

関の言葉に、俺は黙って頷いた。

「樫本さん、何怒ってるんですか」

「別に、怒ってない」

「皐月くんが人の顔をじっと見つめるのが癖なのは事実でしょ。気にすることないじゃないですか」

「別に―――」

気になんかしてない、と言いかけて、口をつぐむ。

さっきの、岩本さんの顔が頭に浮かんだ。

岩本さんは独身だけれど、そっちの噂は聞いたことが無い。

だけど、皐月のことを話す時の岩本さんは微かに頬を染め、どこか恥ずかしそうだった。

「―――ま、皐月くんみたいにきれいな人に見つめられれば、それが男だとしてもドキドキしちゃいますよ。皐月くんには、そういうところがあるんですよ」

それはまあ、認めるけども。

なんだか、先が思いやられるような・・・・

そんな気持ちで、俺は思わず溜息をついてしまっていた・・・・・。
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