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本編(ざまぁ)
それでは男爵閣下、失礼致します。
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結論から言うと、両親は死刑判決だった。
貴族自らによる第一級殺人未遂、しかも動機が保険金詐欺という時点で既に極刑回避は不可能だった。
ただ残虐刑ではなく斬首刑だったのは、国王陛下の恩情によるものだろう。
義妹は年齢が考慮されて貴族階級からの追放、修道院での身柄預かりとなった。
最低でも10年は原則として単独での外出は認められないらしい。
さらに使用人も徹底した調査追及が行われた。
家令をはじめ実行犯や加担が認められた者は死刑、あるいは長期や終身の労働刑となった。
これが刑事罰の顛末。
そして、貴族としての行政罰。
「何か、スッキリしましたな…」
王宮から遣わされたお役人様が一言。
使用人の立場で、主人であるフィッツ男爵に歯向かうのは勇気のいることだ。
立場の弱い先妻の娘と、当主と後妻と連れ子、である。
誰だって解雇されて路頭に迷いたくはない、特に家庭のある者は。
「ベテラン使用人の多くが退職を申し出ました。
調度品の多くも、退職慰労金を用立てるために売り払いました。
ろくなお出迎えも出来ず、申し訳ございません。」
50人ほどいた使用人も、残ったのは数人。
帰る家が既に無い者だったり、辺境出身で帰る路銀も、帰っても仕事のない者だったり。
「どうぞお構いなく。
さて、では私も仕事をしましょう…
国王陛下の御言葉を申し伝える、傾注!」
お役人様の言葉に、私と、背後のメイドが深々と腰を折る。
本来は家令が背後に控えるはずなのだが、彼は計画に加担していたとして先日死刑となった。
「此度のフィッツ男爵の行為は、王国の品位を貶め、模範たる貴族として甚だ不適。
本来ならば御家お取り潰しが相当であるが、その実子が被害者ということを最大限に配慮する。
よってスーをフィッツ男爵家当主として家督相続を認める。
先代の行為が国民への背信であることを重々留意し、以後の忠義に期待する。
…以上です。」
「は?
あの、家督相続ですか…?」
「陛下は格別の恩情を示されました。
もちろん貴族家の維持発展は非常に困難でしょう。
後日こちらへ代官が派遣されます。
もちろん爵位を返上することも認めるので、まずは今後を代官と相談されよ、とのことです。」
没収ではなく返上。
貴族から市民へと階級が移るのに、この2つでは雲泥の差がある。
爵位返上なら慰労金と、一代限りだが恩給も下賜される。
贅沢さえしなければ、仕事をしなくても王都で最低限の生活が出来る額だ。
「国王陛下の御言葉、確かに承りました。
しかし、今後については考えさせてください。
急に働き口を失うと、路頭に迷う使用人もいますので。」
「即答は無理でしょう。
それでは男爵閣下、失礼致します。」
あまりにも破格の待遇。
おそらく国王陛下がアーシュさんに配慮しているのだろう。
(あのお役人様は、私のことを知らない感じだったな…)
おそらく、そのうち人の世界では生きていけなくなる日が来るだろう。
何年たっても姿が一切変わらないなんて化け物だ。
しかも魔女の森の関係者などと知られたら、街中パニックになる。
(これから、本当にどうしようかしら…)
ひとまず紅茶でも飲みながら、今後どうするか考えることにしよう。
貴族自らによる第一級殺人未遂、しかも動機が保険金詐欺という時点で既に極刑回避は不可能だった。
ただ残虐刑ではなく斬首刑だったのは、国王陛下の恩情によるものだろう。
義妹は年齢が考慮されて貴族階級からの追放、修道院での身柄預かりとなった。
最低でも10年は原則として単独での外出は認められないらしい。
さらに使用人も徹底した調査追及が行われた。
家令をはじめ実行犯や加担が認められた者は死刑、あるいは長期や終身の労働刑となった。
これが刑事罰の顛末。
そして、貴族としての行政罰。
「何か、スッキリしましたな…」
王宮から遣わされたお役人様が一言。
使用人の立場で、主人であるフィッツ男爵に歯向かうのは勇気のいることだ。
立場の弱い先妻の娘と、当主と後妻と連れ子、である。
誰だって解雇されて路頭に迷いたくはない、特に家庭のある者は。
「ベテラン使用人の多くが退職を申し出ました。
調度品の多くも、退職慰労金を用立てるために売り払いました。
ろくなお出迎えも出来ず、申し訳ございません。」
50人ほどいた使用人も、残ったのは数人。
帰る家が既に無い者だったり、辺境出身で帰る路銀も、帰っても仕事のない者だったり。
「どうぞお構いなく。
さて、では私も仕事をしましょう…
国王陛下の御言葉を申し伝える、傾注!」
お役人様の言葉に、私と、背後のメイドが深々と腰を折る。
本来は家令が背後に控えるはずなのだが、彼は計画に加担していたとして先日死刑となった。
「此度のフィッツ男爵の行為は、王国の品位を貶め、模範たる貴族として甚だ不適。
本来ならば御家お取り潰しが相当であるが、その実子が被害者ということを最大限に配慮する。
よってスーをフィッツ男爵家当主として家督相続を認める。
先代の行為が国民への背信であることを重々留意し、以後の忠義に期待する。
…以上です。」
「は?
あの、家督相続ですか…?」
「陛下は格別の恩情を示されました。
もちろん貴族家の維持発展は非常に困難でしょう。
後日こちらへ代官が派遣されます。
もちろん爵位を返上することも認めるので、まずは今後を代官と相談されよ、とのことです。」
没収ではなく返上。
貴族から市民へと階級が移るのに、この2つでは雲泥の差がある。
爵位返上なら慰労金と、一代限りだが恩給も下賜される。
贅沢さえしなければ、仕事をしなくても王都で最低限の生活が出来る額だ。
「国王陛下の御言葉、確かに承りました。
しかし、今後については考えさせてください。
急に働き口を失うと、路頭に迷う使用人もいますので。」
「即答は無理でしょう。
それでは男爵閣下、失礼致します。」
あまりにも破格の待遇。
おそらく国王陛下がアーシュさんに配慮しているのだろう。
(あのお役人様は、私のことを知らない感じだったな…)
おそらく、そのうち人の世界では生きていけなくなる日が来るだろう。
何年たっても姿が一切変わらないなんて化け物だ。
しかも魔女の森の関係者などと知られたら、街中パニックになる。
(これから、本当にどうしようかしら…)
ひとまず紅茶でも飲みながら、今後どうするか考えることにしよう。
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