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本編(出会い)

ピュアバージン

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妖精と例えても過言ではない美少女が、私の指を咥えている。
その姿と、指から伝わってくる舌の感触が、何ともいえない気持ちを抱かせる。
もし言葉にするなら淫靡いんびだろうか。

「ん…」

十分に指をねぶったアーシュさんはゆっくりと身を起こす。
そして丁寧にハンカチで私の指をぬぐいながら。

「そなた…もしかして処女?」

「え?
 は、はい。」

「あと、キスの経験も無い?」

少し驚いたアーシュさんの表情に、少し悲しくなる。

15歳も目前になって、結婚どころか婚約者すらおらず、それどころか交際の経験も無い。
一般市民なら自然なことだが、政略結婚が当たり前の貴族社会では例外に当たる。
普通は10歳前後ともなると婚約相手がいるものだ。
それこそ王族や公爵級の人間なら、自身が生まれる前から結婚相手が決まっていることすらある。

「まさか、ピュアバージンとは…」

「え?
 スー様、ピュアバージンなのですか?」

処女処女連呼しないでほしい。
そりゃ縁談どころか縁にすら恵まれませんでしたけど。
これ何かのイジメですか?

「あ、あの…私も味見しても?」

「もう、どうにでもしてください…」

そして何ともいえない表情で指を咥えるキャティさん。

「少々勘違いしているのかもしれないがの。
 ピュアバージンとは侮蔑ではなく尊称じゃからの。」

紅茶を飲みながら私を見つめる。

「そもそも”血”とは、その者のじゃ。
 記憶であり、魂であり、命じゃ。
 そうさの…ワインの熟成をイメージすれば理解しやすいかの?」

一拍。

「性的なものも含め様々な経験を重ねた、濃厚なフルボディの血も良いがの。
 そなたの血のように軽快かつ味わいある血は、なかなか希少なのじゃ。
 言っておくが、単に性的な経験が無ければよいわけではないからの。
 ”軽やか”と”味気ない”が同義では無いことくらいは理解できよう。」

「それは、まぁ…」

そしてキャティさんが指を離す。
あまりに恍惚こうこつとしたその表情は、あまりにも色気が溢れていて。

「素晴らしい血でした…ありがとうございます。
 こんなの、何年ぶりかしら…」

「キャティさんも、その…吸血鬼、なのですか?」

「”真祖”では無いがの。
 我が吸って”従者”にしたのじゃ。
 もう1000年くらいになるか。」
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