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王都の日常で非日常
王城の黒幕
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王城のサロンはないしょ話に適している。
それぞれが独立した密室となり、防音も完璧。
貴族界とは良くも悪くも秘密が飛び交う。
何か物事を起こすとなると、それに対する根回しも必要だ。
公開まで極秘ということも多々あるし、そもそも何らかの理由で公開されることなく立ち消えとなることもある。
そういった会話を出来る場所というのは必要だ。
茶菓子などを世話する侍女たちも、そんな秘密を不必要に抱え込んだりしない。
貴族界では”好奇心は猫をも殺す”というのが鉄則だ。
だから、その日そのサロンには関係する者しかいなかった。
「どうなっている。
まだ結果が出ないのか…」
「会議では確かにテル伯爵が責められてはいるのですが。」
「あのタヌキめ…
辞任に追い込むには決定打が足りない、か。」
雰囲気は重苦しい。
建国祭を目前に連続殺人、しかも解決の糸口すらなく、被害者は増えるばかり。
責任者に責任を取らせるには十分すぎる状況ではあるのだが。
「やはり貧民では何十人死のうがインパクトに欠けるのではないか。」
「だから、わざわざ吸血鬼などという馬鹿げた噂まで付けたのだ。
いくら馬鹿げていてもダメージを与えられるのなら何でもいい。」
すっかり冷めた紅茶を口にする。
この様な内容の話を侍女に聞かせるわけにはいかない。
慣れない手つきでドボドボと乱暴に茶を注ぐ。
「いっそ、貧民以外の犠牲者が出た方がいいのではないか。
それを貧民街と関連付けさせられれば…」
「テル伯爵を糾弾する材料になり得る、か。
犯人を野放しにしているから犠牲になったと。」
「その場合、重要なのは生贄だな。
最もインパクトが大きいのは…」
平民の富裕層、王国軍兵士、高級文官、それ以上に。
「いや、貴族なんて無理だろう。」
それは自分たちがよく知っている。
王城は言うに及ばず、貴族の邸宅にも衛兵がいる。
移動も馬車で、まず例外なく護衛に長けた使用人が同乗する。
場合によっては衛兵が同行することもある。
出かける先の随所に近衛兵が辻立ち警備する王族は例外としても、侯爵家クラスだと数十人の警備が同行する。
それに見合うだけの財力と権力がある。
貴族とは、そういう存在だ。
「それが、そうでもないみたいだ。
どうにかできそうな貴族が一人だけいる。
手持ちの戦力で生贄に出来る可能性が高い。
しかも死んだところで、王政自体にはそれほど影響が出ない。」
「そんな都合のいい人間が…?」
その疑問に、彼は一枚のレポートを取り出す。
とある人物について調べさせたもので、条件を全て満たすことが書かれていた。
結果、議論は具体化に向けて進むことになる。
それぞれが独立した密室となり、防音も完璧。
貴族界とは良くも悪くも秘密が飛び交う。
何か物事を起こすとなると、それに対する根回しも必要だ。
公開まで極秘ということも多々あるし、そもそも何らかの理由で公開されることなく立ち消えとなることもある。
そういった会話を出来る場所というのは必要だ。
茶菓子などを世話する侍女たちも、そんな秘密を不必要に抱え込んだりしない。
貴族界では”好奇心は猫をも殺す”というのが鉄則だ。
だから、その日そのサロンには関係する者しかいなかった。
「どうなっている。
まだ結果が出ないのか…」
「会議では確かにテル伯爵が責められてはいるのですが。」
「あのタヌキめ…
辞任に追い込むには決定打が足りない、か。」
雰囲気は重苦しい。
建国祭を目前に連続殺人、しかも解決の糸口すらなく、被害者は増えるばかり。
責任者に責任を取らせるには十分すぎる状況ではあるのだが。
「やはり貧民では何十人死のうがインパクトに欠けるのではないか。」
「だから、わざわざ吸血鬼などという馬鹿げた噂まで付けたのだ。
いくら馬鹿げていてもダメージを与えられるのなら何でもいい。」
すっかり冷めた紅茶を口にする。
この様な内容の話を侍女に聞かせるわけにはいかない。
慣れない手つきでドボドボと乱暴に茶を注ぐ。
「いっそ、貧民以外の犠牲者が出た方がいいのではないか。
それを貧民街と関連付けさせられれば…」
「テル伯爵を糾弾する材料になり得る、か。
犯人を野放しにしているから犠牲になったと。」
「その場合、重要なのは生贄だな。
最もインパクトが大きいのは…」
平民の富裕層、王国軍兵士、高級文官、それ以上に。
「いや、貴族なんて無理だろう。」
それは自分たちがよく知っている。
王城は言うに及ばず、貴族の邸宅にも衛兵がいる。
移動も馬車で、まず例外なく護衛に長けた使用人が同乗する。
場合によっては衛兵が同行することもある。
出かける先の随所に近衛兵が辻立ち警備する王族は例外としても、侯爵家クラスだと数十人の警備が同行する。
それに見合うだけの財力と権力がある。
貴族とは、そういう存在だ。
「それが、そうでもないみたいだ。
どうにかできそうな貴族が一人だけいる。
手持ちの戦力で生贄に出来る可能性が高い。
しかも死んだところで、王政自体にはそれほど影響が出ない。」
「そんな都合のいい人間が…?」
その疑問に、彼は一枚のレポートを取り出す。
とある人物について調べさせたもので、条件を全て満たすことが書かれていた。
結果、議論は具体化に向けて進むことになる。
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