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空舞う花に思いを込めて
空舞う花に想いを込めて①
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真夏日が日常となり、青空と白い入道雲が空を彩る。
窓の外から入る光は屋内を屋外へと染め上げ、窓の外で鳴く蝉の声は外との境界を忘れさせる。
窓に吊るされた風鈴は窓から風が入る度にその音色を奏で、古ぼけた扇風機は風鈴の音に合わせるようにカラカラと音を立てながら羽を回転させていた。
しかし、それでも暑い。
冷房の効いた部屋に居続けるのは体に良くないと思い、扇風機に加えて団扇も動員したのだが、昼に近付くにつれて上昇する気温に参りそうだ。
加えて、残された寿命で子孫を残そうと蝉もありったけの力を用いて鳴く。
そのダブルパンチが数少ない休息の時間を妨げていた。
起きてからずっとこの状況を耐えてきていたのだが、そろそろ限界だ。
「これはもう無理だな。効率も悪い」
額や首筋に浮かんだ汗を用意していたタオルで拭きながら、換気の為に開け放っていた窓を閉める。
そしてカーテンを締め切って、出来る限り冷気を外へ逃がさないようにした上で、冷房を利かす。
これで暫くすれば涼しくなるだろう。
日常に色彩を持ち込んでくれるのは歓迎だが、日常に過干渉してくるのは勘弁して欲しい。
そんなことを思いながら、耳にイヤホンを付け、好きなクラシック音楽を流す。そして、先程解き終えた夏期課題を学生鞄にしまう。
外界からの干渉を全て防いだところで、机の上に本を準備する。
夏休み初日から先程までコツコツと取り組み続けた結果、ようやく夏期課題を全て解き終えたのだ。
これで、一切の業を背負う事無く自分の時間を楽しむ事が出来る。
多くの学生は久しぶりの長期休暇を得る事で、日々の疲労を回復させる為に勉学から離れてしまう傾向にある。自分も例外なく勉学から離れた生活を送りたいと考えていた。
しかし、中学生の時と比較して課題の量が桁違いだ。
先に休暇を取って後から課題を始めるか、それとも先に課題を終了させて後から休暇を取るか。
その二つで悩んだ結果、先に課題を終了させる事にしたのだった。
結果としてはこちらで良かったのだと思う。想像以上に時間がかかり夏休み中頃までもつれ込んだのだから、もし先に休暇を取っていたらと思うとぞっとする。
今日からがようやくまともな休暇だ。そう思いながら大事に温めていた本を取り出す。
終業式の日に発売されたため先に購入していたのだが、結局未だに一ページも手を付けていない。
ようやく読めると考えると心拍数が上がっていくのを感じるが、踊る心を落ち着かせながらページを捲った。
だが、上手くいかない事が世の常である。特に楽しみにしていればしているほど、望まない事が起きるものだ。
十ページ目に入った所で、扉がトントンと叩かれる。
折角読み始めたのにと思いながら後ろを振り返ると、勝手に扉を開けて時枝美波が入ってきた。
「なんだよ、姉貴」
「あんたにちょっと手伝って貰いたい事があるのよ」
「何?」
「何だか不機嫌そうね」
「そりゃあ、本を読んでいる時に邪魔されたら不機嫌にもなるだろ」
姉は少し考えてみせる。その上で出た結論が、
「うーん。わからないわ」
だった。
確かに本を読まない姉には分かり辛かったかもしれない。
「なら、姉貴はドラマやアニメを見ている時に声を掛けられたらどうする?」
「蹴り飛ばす」
即答。なんて暴力的な姉だ。
「そういうこと。それを蹴る事もせずに聞いているんだから感謝して欲しいくらいだ」
「ごめんね。でも、大事な話なのよ」
姉は軽く謝った。
「来週の土曜日に隣町で花火大会があるでしょ? それを隣町まで友達と見に行くんだけど、その時に着ていく浴衣を持っていないのよ。それで、今から一緒に選びに行くのを手伝って欲しいんだけど」
「え、今から? 冗談だろ」
「本当よ。それなりに礼はするから」
そう言って手を合わせる。
お礼という言葉を聞いて無意識に反応してしまう。
と言うのは、姉はいくつかバイトを掛け持ちしており、シフトも結構入っている。
しかも、必要な時以外は溜め込む癖があるので今回貸しを作っておけばいつか必要な時に役立つかもしれないからだ。
読書をするか買い物に行くかの二択に少し揺れたが、すぐに立ち上がり出かける時の荷物を持つ。
「仕方がないな」
「ありがとう。助かるわ」
「その代わり、礼の事は忘れるなよ」
「任せておいて」
そう言って姉は力こぶを作った。
姉が家の車を運転し、一時間程かけて枝垂町から洛条市へと向かう。
洛条市はこの地域では最も栄えた場所であり、様々な百貨店や複合施設、多くの企業が集まっている。
枝垂町から一番近い所にある都市とも言えるだろう。
また、様々な路線が洛条駅を経由しており、自分達が普段利用する電車の沿線の終点でもある。
故に、距離こそ遠いが何かと馴染みのある都市だった。
様々な店が立ち並ぶ中、姉は迷う事なく一つの複合施設――洛条モールの立体駐車場に車を進めた。
この洛条モールは若者向けの店が多い為か客層も若い人が多い。
そのため、その客層の心を掴む事に特化したアパレルショップや雑貨屋、本屋、レストランなどが多く存在している。
洛条モールが洛条市で一番新しいのにも関わらず、他の店舗に引けを取らなかったのは、若者向けと明言した事が関係しているのだろうと勝手に想像している。
そして今日も夏休みの影響もあってか十分過ぎる程の賑わいを見せていた。
姉についていくこと約十分。
姉は一つの店の前で立ち止まった。
人混みがあまり得意ではない自分はこの人ごみの中を歩くだけでかなり体力を使用した気がする。
「ここが目的地か?」
そう姉に尋ねると、不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「いや、違うわよ? というかどう見ても着物を置いているようなお店じゃないでしょ」
クスクスと笑う。
「じゃあ、何で急に立ち止まったんだよ」
「あの鞄可愛いなって思って」
そう言ってショウウィンドウに飾られた水色の鞄を指差す。
「あの水色の鞄か。まあ、似合うんじゃないか?」
「あ、違う違う。その隣の空色の方よ」
え、同じ色じゃないのか?
頭の上に疑問符が浮かぶ。
女性は男性よりも色彩感覚が優れているというがこんな所で実感するとは思わなかった。
「まあ、でも今はいいや。この鞄もまだまだ使えるし」
姉は自分の鞄を撫でる。そして弟の混乱に気付くことなく再び歩き出す。
またこの人ごみの中を歩くのかと絶望すら感じたが、姉についていく以外の選択肢はなかった。
「翔、お待たせ。ここよ」
姉に振り回されて更に十分経過し、ようやく目的のお店に到着したようだ。
そこは洛条モールの中でも一番端に店を構えており、人通りも比較的少ない。その為、幾分か気分もマシになってきたようだ。
その時に一つの疑問が思い浮かぶ。
「なあ、姉貴。この呉服屋で着物を買うのか?」
それを聞いた姉は笑いながら、
「買えるわけないでしょ。凄く高いのよ」
レンタルに決まっているじゃないと付け加えた後、背中をバンと叩く。
前方にこけそうになるが、何とか踏ん張る。
「じゃあ、わざわざ来なくてもネットでレンタルすれば良かったんじゃないか?」
「もう。翔は女心ってものを全く分かってないわね」
冷ややかな目線が痛い。
「それに私着物着るのって初めてだし、一度ちゃんと着てみないと当日着られなくなりそうで」
「なるほどね。まあ、それは分かった。でも、それだとわざわざ自分が来た意味ってなくないか?」
「何言っているのよ。あんたはどの柄が一番いいか選ぶ係よ」
……え? 自分に着物を選べと?
姉は何を言っているんだ。
今までまともにファッションというものを学んでこなかった自分が姉のコーディネートをしろと?
無茶苦茶だ。
「一応言っておくが、自分も着物なんて初めてだしどれがいいかなんて分からないぞ」
「いいのよ。私がいいなって思った中から選んで貰うだけだから、事故は起こらないって」
それなら安心……か?
姉がそれで良いのならこれ以上考える必要はないが。
「早く行こう」
こちらの不安など気にも留めず姉は呉服屋に入っていく。
「ったく」
小さな愚痴をその場に残して店内に入った。
真夏日が日常となり、青空と白い入道雲が空を彩る。
窓の外から入る光は屋内を屋外へと染め上げ、窓の外で鳴く蝉の声は外との境界を忘れさせる。
窓に吊るされた風鈴は窓から風が入る度にその音色を奏で、古ぼけた扇風機は風鈴の音に合わせるようにカラカラと音を立てながら羽を回転させていた。
しかし、それでも暑い。
冷房の効いた部屋に居続けるのは体に良くないと思い、扇風機に加えて団扇も動員したのだが、昼に近付くにつれて上昇する気温に参りそうだ。
加えて、残された寿命で子孫を残そうと蝉もありったけの力を用いて鳴く。
そのダブルパンチが数少ない休息の時間を妨げていた。
起きてからずっとこの状況を耐えてきていたのだが、そろそろ限界だ。
「これはもう無理だな。効率も悪い」
額や首筋に浮かんだ汗を用意していたタオルで拭きながら、換気の為に開け放っていた窓を閉める。
そしてカーテンを締め切って、出来る限り冷気を外へ逃がさないようにした上で、冷房を利かす。
これで暫くすれば涼しくなるだろう。
日常に色彩を持ち込んでくれるのは歓迎だが、日常に過干渉してくるのは勘弁して欲しい。
そんなことを思いながら、耳にイヤホンを付け、好きなクラシック音楽を流す。そして、先程解き終えた夏期課題を学生鞄にしまう。
外界からの干渉を全て防いだところで、机の上に本を準備する。
夏休み初日から先程までコツコツと取り組み続けた結果、ようやく夏期課題を全て解き終えたのだ。
これで、一切の業を背負う事無く自分の時間を楽しむ事が出来る。
多くの学生は久しぶりの長期休暇を得る事で、日々の疲労を回復させる為に勉学から離れてしまう傾向にある。自分も例外なく勉学から離れた生活を送りたいと考えていた。
しかし、中学生の時と比較して課題の量が桁違いだ。
先に休暇を取って後から課題を始めるか、それとも先に課題を終了させて後から休暇を取るか。
その二つで悩んだ結果、先に課題を終了させる事にしたのだった。
結果としてはこちらで良かったのだと思う。想像以上に時間がかかり夏休み中頃までもつれ込んだのだから、もし先に休暇を取っていたらと思うとぞっとする。
今日からがようやくまともな休暇だ。そう思いながら大事に温めていた本を取り出す。
終業式の日に発売されたため先に購入していたのだが、結局未だに一ページも手を付けていない。
ようやく読めると考えると心拍数が上がっていくのを感じるが、踊る心を落ち着かせながらページを捲った。
だが、上手くいかない事が世の常である。特に楽しみにしていればしているほど、望まない事が起きるものだ。
十ページ目に入った所で、扉がトントンと叩かれる。
折角読み始めたのにと思いながら後ろを振り返ると、勝手に扉を開けて時枝美波が入ってきた。
「なんだよ、姉貴」
「あんたにちょっと手伝って貰いたい事があるのよ」
「何?」
「何だか不機嫌そうね」
「そりゃあ、本を読んでいる時に邪魔されたら不機嫌にもなるだろ」
姉は少し考えてみせる。その上で出た結論が、
「うーん。わからないわ」
だった。
確かに本を読まない姉には分かり辛かったかもしれない。
「なら、姉貴はドラマやアニメを見ている時に声を掛けられたらどうする?」
「蹴り飛ばす」
即答。なんて暴力的な姉だ。
「そういうこと。それを蹴る事もせずに聞いているんだから感謝して欲しいくらいだ」
「ごめんね。でも、大事な話なのよ」
姉は軽く謝った。
「来週の土曜日に隣町で花火大会があるでしょ? それを隣町まで友達と見に行くんだけど、その時に着ていく浴衣を持っていないのよ。それで、今から一緒に選びに行くのを手伝って欲しいんだけど」
「え、今から? 冗談だろ」
「本当よ。それなりに礼はするから」
そう言って手を合わせる。
お礼という言葉を聞いて無意識に反応してしまう。
と言うのは、姉はいくつかバイトを掛け持ちしており、シフトも結構入っている。
しかも、必要な時以外は溜め込む癖があるので今回貸しを作っておけばいつか必要な時に役立つかもしれないからだ。
読書をするか買い物に行くかの二択に少し揺れたが、すぐに立ち上がり出かける時の荷物を持つ。
「仕方がないな」
「ありがとう。助かるわ」
「その代わり、礼の事は忘れるなよ」
「任せておいて」
そう言って姉は力こぶを作った。
姉が家の車を運転し、一時間程かけて枝垂町から洛条市へと向かう。
洛条市はこの地域では最も栄えた場所であり、様々な百貨店や複合施設、多くの企業が集まっている。
枝垂町から一番近い所にある都市とも言えるだろう。
また、様々な路線が洛条駅を経由しており、自分達が普段利用する電車の沿線の終点でもある。
故に、距離こそ遠いが何かと馴染みのある都市だった。
様々な店が立ち並ぶ中、姉は迷う事なく一つの複合施設――洛条モールの立体駐車場に車を進めた。
この洛条モールは若者向けの店が多い為か客層も若い人が多い。
そのため、その客層の心を掴む事に特化したアパレルショップや雑貨屋、本屋、レストランなどが多く存在している。
洛条モールが洛条市で一番新しいのにも関わらず、他の店舗に引けを取らなかったのは、若者向けと明言した事が関係しているのだろうと勝手に想像している。
そして今日も夏休みの影響もあってか十分過ぎる程の賑わいを見せていた。
姉についていくこと約十分。
姉は一つの店の前で立ち止まった。
人混みがあまり得意ではない自分はこの人ごみの中を歩くだけでかなり体力を使用した気がする。
「ここが目的地か?」
そう姉に尋ねると、不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「いや、違うわよ? というかどう見ても着物を置いているようなお店じゃないでしょ」
クスクスと笑う。
「じゃあ、何で急に立ち止まったんだよ」
「あの鞄可愛いなって思って」
そう言ってショウウィンドウに飾られた水色の鞄を指差す。
「あの水色の鞄か。まあ、似合うんじゃないか?」
「あ、違う違う。その隣の空色の方よ」
え、同じ色じゃないのか?
頭の上に疑問符が浮かぶ。
女性は男性よりも色彩感覚が優れているというがこんな所で実感するとは思わなかった。
「まあ、でも今はいいや。この鞄もまだまだ使えるし」
姉は自分の鞄を撫でる。そして弟の混乱に気付くことなく再び歩き出す。
またこの人ごみの中を歩くのかと絶望すら感じたが、姉についていく以外の選択肢はなかった。
「翔、お待たせ。ここよ」
姉に振り回されて更に十分経過し、ようやく目的のお店に到着したようだ。
そこは洛条モールの中でも一番端に店を構えており、人通りも比較的少ない。その為、幾分か気分もマシになってきたようだ。
その時に一つの疑問が思い浮かぶ。
「なあ、姉貴。この呉服屋で着物を買うのか?」
それを聞いた姉は笑いながら、
「買えるわけないでしょ。凄く高いのよ」
レンタルに決まっているじゃないと付け加えた後、背中をバンと叩く。
前方にこけそうになるが、何とか踏ん張る。
「じゃあ、わざわざ来なくてもネットでレンタルすれば良かったんじゃないか?」
「もう。翔は女心ってものを全く分かってないわね」
冷ややかな目線が痛い。
「それに私着物着るのって初めてだし、一度ちゃんと着てみないと当日着られなくなりそうで」
「なるほどね。まあ、それは分かった。でも、それだとわざわざ自分が来た意味ってなくないか?」
「何言っているのよ。あんたはどの柄が一番いいか選ぶ係よ」
……え? 自分に着物を選べと?
姉は何を言っているんだ。
今までまともにファッションというものを学んでこなかった自分が姉のコーディネートをしろと?
無茶苦茶だ。
「一応言っておくが、自分も着物なんて初めてだしどれがいいかなんて分からないぞ」
「いいのよ。私がいいなって思った中から選んで貰うだけだから、事故は起こらないって」
それなら安心……か?
姉がそれで良いのならこれ以上考える必要はないが。
「早く行こう」
こちらの不安など気にも留めず姉は呉服屋に入っていく。
「ったく」
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