ゆめまち日記

三ツ木 紘

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カイセイメモリート

カイセイメモリート②

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 翌週、部室に再度集まる。

 自分や東雲は身近にいる人に聞けばいいだけなのですぐに終わるが、花山の場合、そうはいかない。
 裏掲示板にスレッドを立てて話を盛り上げたり、学校の先生に聞きまわっていたのだ。それを考えると、むしろ一週間という短い期間でよく情報を探したものだ。

 その花山が前に立ち、調査報告が始まる。

「みんな何か情報は見つかったかな。僕は僕なりに調べて色々と情報を集めたんだ」

 そう言い花山は調べた事をまとめた紙を机の上に置き、自分達に見えるようにしながら話し出した。

「僕は裏掲示板と先生への聞き込みをして来た。その中で得た情報として
 一つ目は、校内の教職員の半分近くに尋ねたが、誰一人柳原事件について知らないと答えたこと。
 二つ目は、柳原達也は旧校舎近くで自殺したこと。
 三つ目は、柳原達也は中の良かった人に遺書を残したこと。
 それと、これは噂になるんだけど
 四つ目は、柳原事件は柳原が加害者である噂と被害者である噂が存在すること。
 僕が調べて分かった新しい情報はこれくらいだね」

 花山はメモから顔を上げて自分と東雲を見る。

「噂が二種類あるのか」
「そうみたいなんだ。中々興味深い話で驚いたよ」
「それなら、柳原達也さんが犯人じゃない可能性もあると言う事ですね!」
「そうだね。その可能性は高くなった。でもまずは」

 花山は東雲の方を見て
「東雲さんお願いしてもいいかな?」
 と促す。

 東雲は頷き、メモ帳を見る。

「私は祖父母に柳原達也さんの事を訪ねてきました。その中で有益そうな内容としまして
一つ目は、現在の花宮高校は新校舎であり、九年前に場所が変わっている事ですね。
二つ目は、約十年前に花宮高校の敷地内で自殺した学生がいたこと。
 の以上になります」

 メモの内容を読み終えると静かに顔をあげた。そして続けて
「申し訳ありません。あんまり有益な情報がなくて」
 と謝罪する。

「いやいや、問題ないよ。学校が移動した時期が分かっただけでも大きいよ。
 約十年って言ったけど、多分これは九年前のこの事件で間違いないだろうし、柳原事件と校舎の移動には何かしらの関係があるのかもしれない」

 花山はそれをフォローした後、こちらを見た。

「さて、時枝の番だね」

 花山の言葉に頷き、自分の調べてきた事を話す。

「まず、最初に言っておくが、自分が調べてきたのは柳原事件の噂になる。噂を調べても仕方がないと言ったが、中々興味深い噂を聞いてな」

 周囲に同意を得るべく周囲を目配せする。花山も東雲も無言で頷く。
 それを確認し、話を続けた。

「自分は姉貴から聞いたことだが
 一つ目として、柳原事件が原因で、校舎は移動となったらしい。
 二つ目は、柳原事件には二つの噂があるらしいこと。
 三つ目は、花宮高校の教員、水掛みずかけ華絵はなえは元写真部員であること。
 この三つだ。二人の出した情報と被っている所はあるが、最後の情報は新情報だな」

 二人の様子を見る。東雲はなるほどと言いながら、自身のメモ帳に自分の言った事を書き足していく。
 一方で、花山はその情報に驚いているようだった。この様子だと、隠しておいたもう一つの噂は伏せておいた方がいいだろう。

「それは本当かい? 水掛先生が元写真部員っていうのは」
「いや、知らん。だから言っただろ。あくまで噂だ」
「そ、そういえばそうだったね。でも、それなら確かに調査する価値はありそうだ」

 そこである疑問が浮かぶ。

「花山は……」
「花山さんは先生のお話を伺った時に水掛先生とはお話しなかったのですか」

 見事東雲と被ってしまった。
 東雲も同じ事に気付いたようだ。それを聞いた花山は苦い顔をしている。

「それが、水掛先生にも確認したんだ。でも、すぐに知らないって返ってきたよ」
「そうなのか。単純に先生は柳原達也の代と被ってなかっただけなんじゃないか」

 花山は否定する。

「いや、水掛先生は二十六歳だ。だから柳原達也の一つ先輩だ」

 なぜ先生の年齢を断言出来るのだろうか。

「一応聞くがなぜ知っている?」

 それを聞くと少し苦笑いしながら答える。

「えーっと……。……裏掲示板に晒されていたんだ。どうやら、スレッドを立てた生徒は水掛先生にこっぴどく怒られたようで」

 なるほど。中々ひどい理由だ。
 確かに水掛先生の評価は二極化しており、情に熱い良い先生だという人と、単に生徒に対してすぐ怒るという人だ。
 恐らくこれはすぐ怒る先生だと判断した人が書いたのだろう。
 自分はどちらかと言うと、良い先生だと考えている。この女性教師はいつも不機嫌そうな表情であるが、生徒の性格をよく理解して授業や普段の学生生活を見守っている、気がする。

 どちらにせよ、教師という仕事の過酷さを垣間見た。

「とりあえず柳原達也の死亡時期から推察するに、水掛先生は柳原達也を間違いなく知っているということだよ」

 花山は無理矢理話を締める。

「では、次は水掛先生にお話を伺う。ということでしょうか?」

 東雲の方針に花山は悩む。

「いや、どうだろう。前に聞いた時に答えてくれなかったということは、何か隠したい理由があると思うんだよ。だから、このまま行ってもお払い箱にされるかもしれない」
「……では、水掛先生と柳原達也との何かしらの関係性を証明出来れば、お話を聞いて頂けると思いますか?」
「確かに二人の関係性を証明出来る材料があるなら何か話をしてくれるかも知れないね」

 それを聞くと東雲の表情がパッと明るくなる。

「それでしたら、写真部の活動報告書や歴代の部員名簿など昔の写真部の記録を見るのはどうでしょうか?」

 自信満々に東雲は言う。確かに東雲の言う通り、過去の部員名簿等があればわかるかもしれない。

「確かに。じゃあ、それらを探そうか」
「分かりました。では、何処を探せばよいでしょうか」

 東雲の質問に花山は悩む。

「うーん。本当なら顧問の先生なんだろうけど」

 顧問の先生か。確かにそれが最短ルートなんだろうが、自分達は顧問の先生に一度も会った事がない。故に、顧問の先生が誰か分からない。

 花山は少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。

「……仕方がない。山吹先輩に聞こう」
「大丈夫なのか」
「わからないけど、バレないように聞くさ」
 
 花山は自分に任せろと言わんばかりに歯を見せて笑う。
 花山がやるというのなら任せるのが正解だろう。それ以上会話を掘り下げることはしない。

「では、花山さん。お願いします」

 東雲は丁寧にお辞儀する。

「じゃあ、一度メールで山吹先輩には連絡してみる。もしわかったら二人にも連絡するよ」
「ああ、頼む」

 次の計画が立った所で解散となった。
 花山はこのまま山吹に連絡を取り確認するようで自分と東雲が先に帰宅する事となった。
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