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プロローグ
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光も音も無い暗闇でオイラは一人まどろんでいる。
ほとんど感覚の無い触覚がわずかに石畳の冷たさを捉え、日々の拷問で磨り減った魂が血を吐き悲鳴を上げているのがわかった。
「おら、起きろモドキ。飯の時間だぜ。」
モドキとはこの地下牢で呼ばれるオイラの名だ。
なんでも、オイラは人間や魔物いや生き物ですら無いまがい物って意味でつけられたらしい。
自分には本来名があったはずだがそんなものとうの昔に忘れてしまった。
地下牢にズケズケと踏み込んできた男は寝転がっているオイラを蹴り飛ばし、硬く干上がったパンとほとんど腐った豆がわずかに入ったスープが床に放り投げられたようだ。
手足には枷がつけられ、手を使えないので犬のように貪って食うしかない。
出されたものを食べ終えると待っていましたとばかりに男達がオイラを笑いながら蹴り殴り踏みにじる。
毎日のオイラの生活だ。
起こされ飯を食わされ殴られ気絶しまた起こされ飯を食わされ殴られ気絶しまた起こされる。
自分がなぜこのような目にあわなければならないのかわからない。
ただ忌子いみこと呼ばれ、村が不幸な目にあうのは全部オイラの所為せいとなるらしい。
端的に言うと人身御供というわけだ。
オイラ一人を根本的な悪と断じて自らを善と位置付ける。
オイラ一人にこの世の全ての理不尽を擦なすりつけて自分達は楽を謳歌する。
信者が十字架に縋るのとなんら変わりはない。
ただ痛みから逃れるための舞台装置、自らの是を肯定する免罪符だ。
オイラは元々村の端っこで妹と二人で慎ましく暮らす、いち少年だった。
なんの悪行も為さず、かといって人のためになることもこれといってやらず、ただ朝に金を稼いで夜に帰るそんな生活を送っていた。
交友関係にも恵まれていた。
十ニ歳になる誕生日にはたくさんの人たちが祝いに来てくれた。
貧しい村だが友達が都会に行ってこっそりと高いケーキを買ってきてくれていた。
こんな当たり前で普通の生活が気に入っていた。
代わり映えのしない普段の生活を送り、たまにはこうやって贅沢をする。
ただ、それだけでよかった。
しかし、ケーキに立てられたローソクを吹き消した時オイラに異変が起こった。
目に激痛が走り大量の血が流れ出た。
激しい頭痛もしてきて立っていられなかった。
しばらくたった後、痛みが治まり立ち上がると村のみんなが化け物を見るような怯えた目でオイラを見ていた。
不思議に思い鏡を覗くとなんとオイラの目に数字の十二が浮かび上がり鋭い光を放っていた。
なんだよこれ?と戸惑っていたらいつのまにか気を失っていた。
で、次に目が覚めたらこの地下牢に繋がれていてその周りには沢山の村人達がいた。
村人達は一様に蔑みの目をオイラに向けていた。
昨日まで親友と笑い合った子供達がオイラを悪魔と罵る。
ついさっきまで頭を撫でてくれていた大人達がオイラに唾を吐きかける。
それがオイラの見た最後の光景だった。
オイラの両の眼はえぐり取られ光を奪われた。
そこからは地獄だった。
ただ普通に暮らしていただけなのに悪魔、忌子と罵られ、おおよそ人が経験しうる全ての責め苦を味わった。
ここから出たい。
あの当たり前の日々へ戻りたい。
叶わぬ願いにボロボロの心を浸し自由への渇望に身を焦がす。
もしここから出られたら何者にも縛られずただただ自由気ままに生きたいなぁ…
ほとんど感覚の無い触覚がわずかに石畳の冷たさを捉え、日々の拷問で磨り減った魂が血を吐き悲鳴を上げているのがわかった。
「おら、起きろモドキ。飯の時間だぜ。」
モドキとはこの地下牢で呼ばれるオイラの名だ。
なんでも、オイラは人間や魔物いや生き物ですら無いまがい物って意味でつけられたらしい。
自分には本来名があったはずだがそんなものとうの昔に忘れてしまった。
地下牢にズケズケと踏み込んできた男は寝転がっているオイラを蹴り飛ばし、硬く干上がったパンとほとんど腐った豆がわずかに入ったスープが床に放り投げられたようだ。
手足には枷がつけられ、手を使えないので犬のように貪って食うしかない。
出されたものを食べ終えると待っていましたとばかりに男達がオイラを笑いながら蹴り殴り踏みにじる。
毎日のオイラの生活だ。
起こされ飯を食わされ殴られ気絶しまた起こされ飯を食わされ殴られ気絶しまた起こされる。
自分がなぜこのような目にあわなければならないのかわからない。
ただ忌子いみこと呼ばれ、村が不幸な目にあうのは全部オイラの所為せいとなるらしい。
端的に言うと人身御供というわけだ。
オイラ一人を根本的な悪と断じて自らを善と位置付ける。
オイラ一人にこの世の全ての理不尽を擦なすりつけて自分達は楽を謳歌する。
信者が十字架に縋るのとなんら変わりはない。
ただ痛みから逃れるための舞台装置、自らの是を肯定する免罪符だ。
オイラは元々村の端っこで妹と二人で慎ましく暮らす、いち少年だった。
なんの悪行も為さず、かといって人のためになることもこれといってやらず、ただ朝に金を稼いで夜に帰るそんな生活を送っていた。
交友関係にも恵まれていた。
十ニ歳になる誕生日にはたくさんの人たちが祝いに来てくれた。
貧しい村だが友達が都会に行ってこっそりと高いケーキを買ってきてくれていた。
こんな当たり前で普通の生活が気に入っていた。
代わり映えのしない普段の生活を送り、たまにはこうやって贅沢をする。
ただ、それだけでよかった。
しかし、ケーキに立てられたローソクを吹き消した時オイラに異変が起こった。
目に激痛が走り大量の血が流れ出た。
激しい頭痛もしてきて立っていられなかった。
しばらくたった後、痛みが治まり立ち上がると村のみんなが化け物を見るような怯えた目でオイラを見ていた。
不思議に思い鏡を覗くとなんとオイラの目に数字の十二が浮かび上がり鋭い光を放っていた。
なんだよこれ?と戸惑っていたらいつのまにか気を失っていた。
で、次に目が覚めたらこの地下牢に繋がれていてその周りには沢山の村人達がいた。
村人達は一様に蔑みの目をオイラに向けていた。
昨日まで親友と笑い合った子供達がオイラを悪魔と罵る。
ついさっきまで頭を撫でてくれていた大人達がオイラに唾を吐きかける。
それがオイラの見た最後の光景だった。
オイラの両の眼はえぐり取られ光を奪われた。
そこからは地獄だった。
ただ普通に暮らしていただけなのに悪魔、忌子と罵られ、おおよそ人が経験しうる全ての責め苦を味わった。
ここから出たい。
あの当たり前の日々へ戻りたい。
叶わぬ願いにボロボロの心を浸し自由への渇望に身を焦がす。
もしここから出られたら何者にも縛られずただただ自由気ままに生きたいなぁ…
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