9 / 30
scene8…夢
しおりを挟む
部屋に戻った雅は、ベッドの上で少し火照る体を抱き締めていた。
「菩薩……どうしたんだろ……」
しかし、されたキス、抱き締められた腕…嫌ではなかったもののなぜ自分自身涙が出たのか解らなかった。
「……なんだろ…この感じ…」
そう呟きながら…ベッドに入り、うとっとしたときだ。
『ねぇ…ーーー・・!待ってよ!』
『うるせえよ、さっさとしろ』
『まぁまぁ…ーーー、ほら、来いよ、雅』
『…雅!!早くーー!!』
『まってってば!ーーー・・!!』
『ーーー・も人が悪いですね…雅がさらわれたらどうするんですか?』
『…さらわれるか?この猫が』
『猫じゃない!!ーーーー・・のバカ!』
『おーおー、言うねえ』
『てか、ーーー・・・?猫、苦手じゃなかったんですか?』
『何の事だ…』
『…ーーー・…』
『ほら…早くしろ…』
歩くスピードを緩めるその人の横で笑っている自分が居る…その直後に雅は目を覚ました。
「誰なんだろ……あの人達…」
そんな夢を何度となく見る様になっていた。場所や会話は違うもののなぜか同じ様な四人組と自分。なんだか懐かしいような…それでいて愛おしいような……そんな気分になっていた。
そんなある日。菩薩の書類整理を手伝っている雅はぼーーっとしていた。
「……、ゃび…おい!雅!」
「…・・え?あ、ごめん菩薩。何かあった?」
「『何かあった?』じゃねえよ。なんだ朝からボーッとして…寝不足か?」
「…そうじゃなくて……」
「ちょっと休憩!」
「観世音菩薩!?」
「こんなやつ居たら仕事になんねえだろ、二郎神」
「…ごめん……」
「なんだ、言ってみろ」
「…実は……」
そうしてここ最近立て続けに見る夢の話をした雅。それを聞いて二郎神の顔は少しずつ焦りの色が見えてくる。しかし菩薩は顔色一つ変えていなかった。
「そうか。」
「うん……あの人達…誰なんだろ……よく解らないんだけど……」
「…さぁな。」
「そうだよね…菩薩も解らないよね……」
「それはどうか解らねえが…ただ、言えんのは、雅にとって大事な奴らなのかも知れないってことだろ?」
「ん……知らない人ってわけでもないと思うんだけど……だって、私の名前呼んでるし……それに…すごく楽しそうだった。でも、誰も他の四人の事呼んでるんだろうけど…誰の事も名前解らないんだ……」
「…そうか…」
「観世音菩薩…」
「まぁ、そのうち解るかも知れねえし」
「…解るかな…」
「雅がちゃんと仕事したらな?」
「……それってスッゴクはぐらかしてない?」
「はぐらかしてねえよ」
そうしてトイレ行ってくると行って雅は席を立った。部屋の戸を閉めた直後に二郎神は菩薩に声をかける。
「観世音菩薩!まさかと思いますが…雅の、彼女の記憶を消したんじゃなかったんですか?」
「…消せなかったんだよ」
「それじゃぁ!!雅の記憶は!!」
「蓋してある。でっけえ鍵かけてな」
「はぁぁぁ」
「項垂れんな、二郎神。少なくても天界に居る間には開く様な鍵じゃねえよ」
「……しかし…それがばれたら…」
「…バレるか?」
「もしそうだとしたら!どうされるおつもりですか!」
「どうもしねえよ。」
「それに鍵とは……」
「下界にしかねえからな」
「それはもしかして……雅のさっきの話からしても…玄奘三蔵一行に関わることですか?」
「雅の前でその名前、出すなよ」
「……それは…もちろん……」
「にしても、夢に見始めたか…」
「観世音菩薩、そんな呑気な…」
「ハハ、顔も解らねぇ、名前も解らねぇ、じゃ、雅自身も探しようがねぇと思うだろうしな」
「あの好奇心旺盛な雅が、ですか?」
「そうなったらオレが相手になる」
「菩薩!あなたって人は…」
「んぁ?なんだ?」
「いえ…それでも…」
「ん?なんだ」
「あなたが良かれと思ったのなら、それが正しいんですよ。恐らく。」
「天帝に背いても、か?」
「えぇ。私はそれがあなたらしいと思いますが?」
「…クス、相変わらずだな。二郎神」
そうこう話していると雅は戻ってくる。
「遅くなってごめんなさい…」
「いや、良いさ。さて、と……二郎神がうまい茶でも淹れてくれるってよ!」
「ありがとう!二郎神!!でもそれなら私淹れるよ!」
「いや、そういう訳では……」
「ご老体は労らないと…」
「そんな老いぼれではないわ!」
「クスクス…冗談だよ、でも私淹れてくるよ!待ってて!」
そうして奥へと行った。
「あの天真爛漫…最後に言いたいこと言えずに…嘘まで吐かせて…消せねぇだろうが…」
「どんなことでも必要なら手を下してきたあなたがそんなことを言うとは…」
「……うるせぇよ」
そう話ながら雅の淹れるお茶を待つのだった。
「菩薩……どうしたんだろ……」
しかし、されたキス、抱き締められた腕…嫌ではなかったもののなぜ自分自身涙が出たのか解らなかった。
「……なんだろ…この感じ…」
そう呟きながら…ベッドに入り、うとっとしたときだ。
『ねぇ…ーーー・・!待ってよ!』
『うるせえよ、さっさとしろ』
『まぁまぁ…ーーー、ほら、来いよ、雅』
『…雅!!早くーー!!』
『まってってば!ーーー・・!!』
『ーーー・も人が悪いですね…雅がさらわれたらどうするんですか?』
『…さらわれるか?この猫が』
『猫じゃない!!ーーーー・・のバカ!』
『おーおー、言うねえ』
『てか、ーーー・・・?猫、苦手じゃなかったんですか?』
『何の事だ…』
『…ーーー・…』
『ほら…早くしろ…』
歩くスピードを緩めるその人の横で笑っている自分が居る…その直後に雅は目を覚ました。
「誰なんだろ……あの人達…」
そんな夢を何度となく見る様になっていた。場所や会話は違うもののなぜか同じ様な四人組と自分。なんだか懐かしいような…それでいて愛おしいような……そんな気分になっていた。
そんなある日。菩薩の書類整理を手伝っている雅はぼーーっとしていた。
「……、ゃび…おい!雅!」
「…・・え?あ、ごめん菩薩。何かあった?」
「『何かあった?』じゃねえよ。なんだ朝からボーッとして…寝不足か?」
「…そうじゃなくて……」
「ちょっと休憩!」
「観世音菩薩!?」
「こんなやつ居たら仕事になんねえだろ、二郎神」
「…ごめん……」
「なんだ、言ってみろ」
「…実は……」
そうしてここ最近立て続けに見る夢の話をした雅。それを聞いて二郎神の顔は少しずつ焦りの色が見えてくる。しかし菩薩は顔色一つ変えていなかった。
「そうか。」
「うん……あの人達…誰なんだろ……よく解らないんだけど……」
「…さぁな。」
「そうだよね…菩薩も解らないよね……」
「それはどうか解らねえが…ただ、言えんのは、雅にとって大事な奴らなのかも知れないってことだろ?」
「ん……知らない人ってわけでもないと思うんだけど……だって、私の名前呼んでるし……それに…すごく楽しそうだった。でも、誰も他の四人の事呼んでるんだろうけど…誰の事も名前解らないんだ……」
「…そうか…」
「観世音菩薩…」
「まぁ、そのうち解るかも知れねえし」
「…解るかな…」
「雅がちゃんと仕事したらな?」
「……それってスッゴクはぐらかしてない?」
「はぐらかしてねえよ」
そうしてトイレ行ってくると行って雅は席を立った。部屋の戸を閉めた直後に二郎神は菩薩に声をかける。
「観世音菩薩!まさかと思いますが…雅の、彼女の記憶を消したんじゃなかったんですか?」
「…消せなかったんだよ」
「それじゃぁ!!雅の記憶は!!」
「蓋してある。でっけえ鍵かけてな」
「はぁぁぁ」
「項垂れんな、二郎神。少なくても天界に居る間には開く様な鍵じゃねえよ」
「……しかし…それがばれたら…」
「…バレるか?」
「もしそうだとしたら!どうされるおつもりですか!」
「どうもしねえよ。」
「それに鍵とは……」
「下界にしかねえからな」
「それはもしかして……雅のさっきの話からしても…玄奘三蔵一行に関わることですか?」
「雅の前でその名前、出すなよ」
「……それは…もちろん……」
「にしても、夢に見始めたか…」
「観世音菩薩、そんな呑気な…」
「ハハ、顔も解らねぇ、名前も解らねぇ、じゃ、雅自身も探しようがねぇと思うだろうしな」
「あの好奇心旺盛な雅が、ですか?」
「そうなったらオレが相手になる」
「菩薩!あなたって人は…」
「んぁ?なんだ?」
「いえ…それでも…」
「ん?なんだ」
「あなたが良かれと思ったのなら、それが正しいんですよ。恐らく。」
「天帝に背いても、か?」
「えぇ。私はそれがあなたらしいと思いますが?」
「…クス、相変わらずだな。二郎神」
そうこう話していると雅は戻ってくる。
「遅くなってごめんなさい…」
「いや、良いさ。さて、と……二郎神がうまい茶でも淹れてくれるってよ!」
「ありがとう!二郎神!!でもそれなら私淹れるよ!」
「いや、そういう訳では……」
「ご老体は労らないと…」
「そんな老いぼれではないわ!」
「クスクス…冗談だよ、でも私淹れてくるよ!待ってて!」
そうして奥へと行った。
「あの天真爛漫…最後に言いたいこと言えずに…嘘まで吐かせて…消せねぇだろうが…」
「どんなことでも必要なら手を下してきたあなたがそんなことを言うとは…」
「……うるせぇよ」
そう話ながら雅の淹れるお茶を待つのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる