凜恋心 ♢ 転生編 ♢

降谷みやび

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scene8…夢

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部屋に戻った雅は、ベッドの上で少し火照る体を抱き締めていた。

「菩薩……どうしたんだろ……」

しかし、されたキス、抱き締められた腕…嫌ではなかったもののなぜ自分自身涙が出たのか解らなかった。

「……なんだろ…この感じ…」

そう呟きながら…ベッドに入り、うとっとしたときだ。

『ねぇ…ーーー・・!待ってよ!』
『うるせえよ、さっさとしろ』
『まぁまぁ…ーーー、ほら、来いよ、雅』
『…雅!!早くーー!!』
『まってってば!ーーー・・!!』
『ーーー・も人が悪いですね…雅がさらわれたらどうするんですか?』
『…さらわれるか?この猫が』
『猫じゃない!!ーーーー・・のバカ!』
『おーおー、言うねえ』
『てか、ーーー・・・?猫、苦手じゃなかったんですか?』
『何の事だ…』
『…ーーー・…』
『ほら…早くしろ…』

歩くスピードを緩めるの横で笑っている自分が居る…その直後に雅は目を覚ました。

「誰なんだろ……あの人達…」

そんな夢を何度となく見る様になっていた。場所や会話は違うもののなぜか同じ様な四人組と自分。なんだか懐かしいような…それでいて愛おしいような……そんな気分になっていた。

そんなある日。菩薩の書類整理を手伝っている雅はぼーーっとしていた。

「……、ゃび…おい!雅!」
「…・・え?あ、ごめん菩薩。何かあった?」
「『何かあった?』じゃねえよ。なんだ朝からボーッとして…寝不足か?」
「…そうじゃなくて……」
「ちょっと休憩!」
「観世音菩薩!?」
「こんなやつ居たら仕事になんねえだろ、二郎神」
「…ごめん……」
「なんだ、言ってみろ」
「…実は……」

そうしてここ最近立て続けに見る夢の話をした雅。それを聞いて二郎神の顔は少しずつ焦りの色が見えてくる。しかし菩薩は顔色一つ変えていなかった。

「そうか。」
「うん……あの人達…誰なんだろ……よく解らないんだけど……」
「…さぁな。」
「そうだよね…菩薩も解らないよね……」
「それはどうか解らねえが…ただ、言えんのは、雅にとって大事な奴らなのかも知れないってことだろ?」
「ん……知らない人ってわけでもないと思うんだけど……だって、私の名前呼んでるし……それに…すごく楽しそうだった。でも、誰も他の四人の事呼んでるんだろうけど…誰の事も名前解らないんだ……」
「…そうか…」
「観世音菩薩…」
「まぁ、そのうち解るかも知れねえし」
「…解るかな…」
「雅がちゃんと仕事したらな?」
「……それってスッゴクはぐらかしてない?」
「はぐらかしてねえよ」

そうしてトイレ行ってくると行って雅は席を立った。部屋の戸を閉めた直後に二郎神は菩薩に声をかける。

「観世音菩薩!まさかと思いますが…雅の、彼女の記憶を消したんじゃなかったんですか?」
「…んだよ」
「それじゃぁ!!雅の記憶は!!」
「蓋してある。でっけえ鍵かけてな」
「はぁぁぁ」
「項垂れんな、二郎神。少なくても天界ここに居る間には開く様な鍵じゃねえよ」
「……しかし…それがばれたら…」
「…バレるか?」
「もしそうだとしたら!どうされるおつもりですか!」
「どうもしねえよ。」
「それに鍵とは……」
「下界にしかねえからな」
「それはもしかして……雅のさっきの話からしても…玄奘三蔵一行に関わることですか?」
「雅の前でその名前、出すなよ」
「……それは…もちろん……」
「にしても、夢に見始めたか…」
「観世音菩薩、そんな呑気な…」
「ハハ、顔も解らねぇ、名前も解らねぇ、じゃ、雅自身も探しようがねぇと思うだろうしな」
「あの好奇心旺盛な雅が、ですか?」
「そうなったらオレが相手になる」
「菩薩!あなたって人は…」
「んぁ?なんだ?」
「いえ…それでも…」
「ん?なんだ」
「あなたが良かれと思ったのなら、それが正しいんですよ。恐らく。」
「天帝に背いても、か?」
「えぇ。私はそれがあなたと思いますが?」
「…クス、相変わらずだな。二郎神」

そうこう話していると雅は戻ってくる。

「遅くなってごめんなさい…」
「いや、良いさ。さて、と……二郎神がうまい茶でも淹れてくれるってよ!」
「ありがとう!二郎神!!でもそれなら私淹れるよ!」
「いや、そういう訳では……」
「ご老体は労らないと…」
「そんな老いぼれではないわ!」
「クスクス…冗談だよ、でも私淹れてくるよ!待ってて!」

そうして奥へと行った。

「あの天真爛漫…最後に言いたいこと言えずに…嘘まで吐かせて…消せねぇだろうが…」
「どんなことでも必要なら手を下してきたあなたがそんなことを言うとは…」
「……うるせぇよ」

そう話ながら雅の淹れるお茶を待つのだった。
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