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last battle…アンテ
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翌朝、三蔵一行は予告通りに宿屋をチェックアウトした。
「なぁ三蔵?」
「なんだ」
「最後に飯、食っていこうよ…」
「…そんな時間どこにある」
「いや、今までも大抵そうだったじゃん!!」
「追い出された街の時以外はそうでしたね」
そうして雅のいる食事処に向かっていった。しかし、その場に雅の姿はいなかった。
「……雅…居ないのな……」
「もし仮に居たとしてどうするつもりだ」
「…それは…」
「なぁ三蔵?本当に良いのか?」
「さっきからうるせえな…てめえら…」
「三蔵。」
「八戒てめえもかよ!」
「本気で言ってるんです。僕ら全員。」
そう言う八戒の目は稀に見るほどの真剣なものだった。
「このままこの街を出たら、恐らくもう二度と雅には会えなくなりますよ?」
「……だったらなんだ…」
「後悔、しませんか?本当に」
「……」
「即答できない位なら考え直してください。」
「…チッ…」
「でもさ、八戒?雅居ないんじゃ…どうしようも無くね?」
「……そうなんですけど…」
そう話していた。そんな時だ。初日に会った男達の内の一人が声をかけてきた。
「お、兄ちゃんたち。久しぶりだな」
「おや、あなたは。先日はどうも」
「いやいや、それよりも聞いたか?」
「何をです?」
「姫が店、やめちまったって!!」
「……どう言う事?」
「それは俺たちも知りたかったんだけどよ!今朝、突然やめたいって言い出してきて、荷物もまとめちゃってるって……」
「三蔵…」
「……」
そう。雅は店をやめた。そうだとすれば、少し遅めの朝食にとやってきた一行が会える訳も無い。
「どうしましょうね」
「雅の家とか……知らねえの?八戒」
「逆に知ってたら僕自身怖いですよ……」
「…八方塞がり、だな」
「仕方ねえだろ。食ったら行くぞ…」
一瞬三蔵の顔にも陰りが見えた。それでもどうしようも無く食事を済ませた一行。
そのまま街外れに向かい出ようとした時だ。
「ちょ…っ!あれ!!」
「はぁ、全く……」
そう、そこには辞めたと聞いた雅が一人で辺りをキョロキョロしながら立っていた。
「どうかしましたか?雅さん」
「……あの……最後に少しだけ……三蔵さんに…話しても良いですか?」
「…断る」
「すぐ!!終わるから…」
「八戒、出せ」
「嫌ですね」
「…てめえ…」
「どうぞ、雅さん?」
「……あの…私も連れてってください」
「何言ってんだ貴様は」
「大丈夫です!仕事も今朝ちゃんとやめてきましたし、家の大家さんにも話してきました。町長さんにも!!」
そう言う雅の言い分はまちがっていないのだろう。大きめな荷物が一つ、足元にあった。
「そう言う問題じゃねえ。俺たちは遊びじゃねえんだ。」
「…解ってる…でも!私の力も少しは役に立つと思う!!」
「力なんざ求めてねえんだよ」
「でも……ほら!一緒に居たらなんかお得なこともあるかも知れないし!!」
「……話になんねえ。八戒、出せ」
「嫌です」
何を言われても八戒は運転を拒否していた。
「殺されてえのか」
「言っときますけど、このまま出しても何の解決になりません」
「……チッ…」
「あの!…お願いします」
「断る…」
その最後の一言を聞いた雅はツカツカっと助手席に向かった。
「なんだ」
「だったら……だったらなんであんなことしたのよ…」
「三蔵なにしたんだ?」
「うるせえよ」
「言うのもやめて……忘れたフリして……このまま出逢わなかったって思いながら……そう思ってたのに……」
「雅……?」
そう言うとぐいっと法衣を引っ張り三蔵の唇に自身のそれを重ねた。
「…ン…」
「……これで…おあいこでしょ?……バカ…」
「…ッッ…」
そっと肩に凭れながら小さくも、はっきりと伝える雅。
「もっとあなたといろんな物見たくて…傍に居たくて…知りたくて……でも、こんなの迷惑だからって思ったのに……好きにならなきゃ……良かった…」
「…雅……」
「悟浄?あなた、チェックメイトですね」
「…あぁあ」
そう言いながら荷物を取り、涙を堪えながらジープから離れていく雅。街には戻らず、そのまま外へと歩いていった。
「…チッ…」
小さく舌打ちをするとジープから降りる三蔵。
「おい、待て」
「放っといて」
そういい、歩くのを止めない雅。
「待てって言ってんだろうが…」
そういうと後ろから抱き締めた。
「いや…離して…」
「…うるせえ」
「…だって……迷惑でしょ?それなら放っておいて!このまま終わりにさせて…」
「誰が迷惑だって言った」
「…ッ…」
「それに終わりになんかさせてたまるかよ…」
「だって……」
「好きだって…お前の気持ち聞かなきゃ…進めねえだろうが…」
「…なにそれ…好きって言われたら誰でも連れてくってこと?!」
「…本当に脳みそ悟空並だな…」
「それって…」
「誰彼構わず連れ歩くかよ…」
「あの……三蔵さん…」
「いい加減それも慣れねえんだよ…」
そう言うとくるりと体の向きを反転させられた雅。
「後悔しても知らねえよ…?」
「後悔なんて……」
「それに…聞かなきゃいけねえこともあるし…」
「あの…何言って」
「だから…その鍵…開けてやるよ…」
「え……?」
「……愛してる…」
その返事もそこそこに三蔵は唇を重ねた。
カチン……
雅の中で何かが外れる音がした。ゆっくりと離れても、雅は俯きながらなにも言えない。
「……おい…」
しかし反応はない…
「おい……」
少しの間があり、ようやく雅は口を開いた。
「……何よ……」
「ぁん…?」
「遅いよ……三蔵……」
「…フ…それはこっちの台詞だ…」
涙を堪えながらも雅はゆっくりと顔を上げる。
「相変わらずだね…三蔵……」
「…お前もな…雅……てか…何勝手なことしてんだよ!!本当に学習しねえし…!力なんざ要らねえって言ってるだろうが!それに半年もこの俺に探させるなんざ、どういう了見だ!解ってんのか!」
「ちょ…!痛い!!」
思い出した余韻なんて全く無いかの様にハリセンが飛び出す。バシッと容赦なくきれいに雅の頭を直撃するとひと言、『よし』といいジープに戻る。
「っ…・・たぁぁ…良しじゃないし…いきなりぶつ事ないでしょ?」
「三蔵?もしかして…」
「後ろが狭くなっても文句言うなよ」
「え…じゃぁ」
「まぁ、文句があるなら雅に言え…」
「マジ?」
「聞いてる?三蔵!?」
「じゃぁ……」
「さっさとしろ、出るぞ」
「え……ちょっと!!待って…」
「良いですよ?ゆっくりで…」
「八戒……」
「……お帰り!雅!」
「悟空……」
「全く、まぁた俺フラれた訳?」
「悟浄……相変わらずだね」
「さっさと乗れって言ってんだろうが」
「あの…」
「雅?そろそろ乗らないと、三蔵が勝手にアクセル踏み出しますよ?」
「や…やだ!!」
そう言うと急いで荷物と一緒に乗り込んだ。
「あの……」
「なんだ」
「なんですか?」
「どうかした?」
「何々?」
「……ただいま」
そううつ向きながら挨拶をした雅。
「お帰り!」
「お帰りなさい」
「たく、おっせぇっつうの!三蔵めちゃくちゃ不機嫌だろうが…」
「誰のせいだ」
そんな相変わらずの会話と賑やかなジープ…
「ねぇ、三蔵?」
「なんだ」
「これからどこ向かうの?」
「バカかてめえは…」
「ム…だから!」
「西だ。それ以外にあるか?」
「…無いな」
「無いですね」
「次の街うまい店あるかな」
「西…フフ…そだね」
「美人なお姉サマいるかな」
「うるせえ!少しは黙ってろ!!」
「……平和ですねえ…それにやっと、僕たちに戻ったって感じでしょうか?」
そうして賑やかさを取り戻した一行は、あいも変わらず西に向かっていくのだった。
.
「なぁ三蔵?」
「なんだ」
「最後に飯、食っていこうよ…」
「…そんな時間どこにある」
「いや、今までも大抵そうだったじゃん!!」
「追い出された街の時以外はそうでしたね」
そうして雅のいる食事処に向かっていった。しかし、その場に雅の姿はいなかった。
「……雅…居ないのな……」
「もし仮に居たとしてどうするつもりだ」
「…それは…」
「なぁ三蔵?本当に良いのか?」
「さっきからうるせえな…てめえら…」
「三蔵。」
「八戒てめえもかよ!」
「本気で言ってるんです。僕ら全員。」
そう言う八戒の目は稀に見るほどの真剣なものだった。
「このままこの街を出たら、恐らくもう二度と雅には会えなくなりますよ?」
「……だったらなんだ…」
「後悔、しませんか?本当に」
「……」
「即答できない位なら考え直してください。」
「…チッ…」
「でもさ、八戒?雅居ないんじゃ…どうしようも無くね?」
「……そうなんですけど…」
そう話していた。そんな時だ。初日に会った男達の内の一人が声をかけてきた。
「お、兄ちゃんたち。久しぶりだな」
「おや、あなたは。先日はどうも」
「いやいや、それよりも聞いたか?」
「何をです?」
「姫が店、やめちまったって!!」
「……どう言う事?」
「それは俺たちも知りたかったんだけどよ!今朝、突然やめたいって言い出してきて、荷物もまとめちゃってるって……」
「三蔵…」
「……」
そう。雅は店をやめた。そうだとすれば、少し遅めの朝食にとやってきた一行が会える訳も無い。
「どうしましょうね」
「雅の家とか……知らねえの?八戒」
「逆に知ってたら僕自身怖いですよ……」
「…八方塞がり、だな」
「仕方ねえだろ。食ったら行くぞ…」
一瞬三蔵の顔にも陰りが見えた。それでもどうしようも無く食事を済ませた一行。
そのまま街外れに向かい出ようとした時だ。
「ちょ…っ!あれ!!」
「はぁ、全く……」
そう、そこには辞めたと聞いた雅が一人で辺りをキョロキョロしながら立っていた。
「どうかしましたか?雅さん」
「……あの……最後に少しだけ……三蔵さんに…話しても良いですか?」
「…断る」
「すぐ!!終わるから…」
「八戒、出せ」
「嫌ですね」
「…てめえ…」
「どうぞ、雅さん?」
「……あの…私も連れてってください」
「何言ってんだ貴様は」
「大丈夫です!仕事も今朝ちゃんとやめてきましたし、家の大家さんにも話してきました。町長さんにも!!」
そう言う雅の言い分はまちがっていないのだろう。大きめな荷物が一つ、足元にあった。
「そう言う問題じゃねえ。俺たちは遊びじゃねえんだ。」
「…解ってる…でも!私の力も少しは役に立つと思う!!」
「力なんざ求めてねえんだよ」
「でも……ほら!一緒に居たらなんかお得なこともあるかも知れないし!!」
「……話になんねえ。八戒、出せ」
「嫌です」
何を言われても八戒は運転を拒否していた。
「殺されてえのか」
「言っときますけど、このまま出しても何の解決になりません」
「……チッ…」
「あの!…お願いします」
「断る…」
その最後の一言を聞いた雅はツカツカっと助手席に向かった。
「なんだ」
「だったら……だったらなんであんなことしたのよ…」
「三蔵なにしたんだ?」
「うるせえよ」
「言うのもやめて……忘れたフリして……このまま出逢わなかったって思いながら……そう思ってたのに……」
「雅……?」
そう言うとぐいっと法衣を引っ張り三蔵の唇に自身のそれを重ねた。
「…ン…」
「……これで…おあいこでしょ?……バカ…」
「…ッッ…」
そっと肩に凭れながら小さくも、はっきりと伝える雅。
「もっとあなたといろんな物見たくて…傍に居たくて…知りたくて……でも、こんなの迷惑だからって思ったのに……好きにならなきゃ……良かった…」
「…雅……」
「悟浄?あなた、チェックメイトですね」
「…あぁあ」
そう言いながら荷物を取り、涙を堪えながらジープから離れていく雅。街には戻らず、そのまま外へと歩いていった。
「…チッ…」
小さく舌打ちをするとジープから降りる三蔵。
「おい、待て」
「放っといて」
そういい、歩くのを止めない雅。
「待てって言ってんだろうが…」
そういうと後ろから抱き締めた。
「いや…離して…」
「…うるせえ」
「…だって……迷惑でしょ?それなら放っておいて!このまま終わりにさせて…」
「誰が迷惑だって言った」
「…ッ…」
「それに終わりになんかさせてたまるかよ…」
「だって……」
「好きだって…お前の気持ち聞かなきゃ…進めねえだろうが…」
「…なにそれ…好きって言われたら誰でも連れてくってこと?!」
「…本当に脳みそ悟空並だな…」
「それって…」
「誰彼構わず連れ歩くかよ…」
「あの……三蔵さん…」
「いい加減それも慣れねえんだよ…」
そう言うとくるりと体の向きを反転させられた雅。
「後悔しても知らねえよ…?」
「後悔なんて……」
「それに…聞かなきゃいけねえこともあるし…」
「あの…何言って」
「だから…その鍵…開けてやるよ…」
「え……?」
「……愛してる…」
その返事もそこそこに三蔵は唇を重ねた。
カチン……
雅の中で何かが外れる音がした。ゆっくりと離れても、雅は俯きながらなにも言えない。
「……おい…」
しかし反応はない…
「おい……」
少しの間があり、ようやく雅は口を開いた。
「……何よ……」
「ぁん…?」
「遅いよ……三蔵……」
「…フ…それはこっちの台詞だ…」
涙を堪えながらも雅はゆっくりと顔を上げる。
「相変わらずだね…三蔵……」
「…お前もな…雅……てか…何勝手なことしてんだよ!!本当に学習しねえし…!力なんざ要らねえって言ってるだろうが!それに半年もこの俺に探させるなんざ、どういう了見だ!解ってんのか!」
「ちょ…!痛い!!」
思い出した余韻なんて全く無いかの様にハリセンが飛び出す。バシッと容赦なくきれいに雅の頭を直撃するとひと言、『よし』といいジープに戻る。
「っ…・・たぁぁ…良しじゃないし…いきなりぶつ事ないでしょ?」
「三蔵?もしかして…」
「後ろが狭くなっても文句言うなよ」
「え…じゃぁ」
「まぁ、文句があるなら雅に言え…」
「マジ?」
「聞いてる?三蔵!?」
「じゃぁ……」
「さっさとしろ、出るぞ」
「え……ちょっと!!待って…」
「良いですよ?ゆっくりで…」
「八戒……」
「……お帰り!雅!」
「悟空……」
「全く、まぁた俺フラれた訳?」
「悟浄……相変わらずだね」
「さっさと乗れって言ってんだろうが」
「あの…」
「雅?そろそろ乗らないと、三蔵が勝手にアクセル踏み出しますよ?」
「や…やだ!!」
そう言うと急いで荷物と一緒に乗り込んだ。
「あの……」
「なんだ」
「なんですか?」
「どうかした?」
「何々?」
「……ただいま」
そううつ向きながら挨拶をした雅。
「お帰り!」
「お帰りなさい」
「たく、おっせぇっつうの!三蔵めちゃくちゃ不機嫌だろうが…」
「誰のせいだ」
そんな相変わらずの会話と賑やかなジープ…
「ねぇ、三蔵?」
「なんだ」
「これからどこ向かうの?」
「バカかてめえは…」
「ム…だから!」
「西だ。それ以外にあるか?」
「…無いな」
「無いですね」
「次の街うまい店あるかな」
「西…フフ…そだね」
「美人なお姉サマいるかな」
「うるせえ!少しは黙ってろ!!」
「……平和ですねえ…それにやっと、僕たちに戻ったって感じでしょうか?」
そうして賑やかさを取り戻した一行は、あいも変わらず西に向かっていくのだった。
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