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蜜なる夜は甘くとろける…

月日は流れ、初夏の季節…S4の写真撮影に訪れたのはTHE・沖縄だった。

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それから日にちも過ぎて行った。いくつかの仕事もこなし、人気も更に高まっていくS4の面々。そんな時だ。各マネージャーに一斉送信でメールが届いた。

『今度の六月末にS4の沖縄写真集発刊に伴う一週間の撮影が決定いたしました。日程は下記の通りとなります。よろしくお願い致します。』

その下には一週間の内容と日程、撮る写真のイメージ等大まかに、且つ詳細にかかれていたのだ。

「六末かぁ…そうすると…」

そうしていろいろと手帳を確認する美羽。幸いにも前日は半日ですむ撮りだった為一安心と言った所だった。部屋の予約等もしなくてはならない。そう思いながら読み進めていた時だった。

「…ホテルも大丈夫かぁ。」

そう室内での撮影もあった為、全て押え済みである事が解った。そんな時だった。美羽の携帯に秋人から電話が入る。

「もしもし?」
『もしもし、秋人。今大丈夫?』
「はい、大丈夫ですが…」
『沖縄の話、聞いた?』
「はい、先ほどメールが届きました。一週間だっていう事なんですけど、何か必要な事って…」
『特になくていいんじゃねぇ?俺も自分の荷物は自分で持ってくし。美羽は美羽の必要な物だけで』
「そうですか?解りました。」
『それで、夜…』
「はい?」
『夜、いつでも出れる様にしといてな?』
「え…っと…」
『少し遅くなるけど誕生日、二人で過ごそう?』

そう言われて少し沈黙が時間を取るものの『ありがとう…』と伝えて電話は切れた。
そうして沖縄出発当日。いつも余裕をもって移動する美羽いでさえもいつも以上に気を使っての移動にした。何度も確認をして他のメンバーを待つ。すると少し離れた所から手を振る男性が居る。その人は美羽に向かって走ってきた。

「美羽ちゃん!」
「あ…海君…それに和さんも…」
「和でいいって。それよりやっぱ秋人の手前呼べないかなぁ」
「いえ…でもなんか申し訳なくて…」
「申し訳なくないって。」
「そうそう!美羽っちもここ集合だったんだね!」
「美羽っち…」
「お前は慣れ慣れしすぎ。」
「美羽っちじゃいやだった?」

明らかにしょぼくれた平良だったが美羽は首を横に振り大丈夫と答えると時期にまた、満面の笑みに戻った。そうこうしていると秋人も到着。皆で移動すると全員時間の定刻通りに集合できた。

「美羽の事だから迷ってるかと思った。」
「そんな事ないよ!私だってちゃんとこれます!」
「初めの頃はスタジオでさえ迷ってたじゃん?」
「それは言いっこなしです!!」

久し振りにこの二人の様子を見た後の面々はどことなく嬉しそうに顔を綻ばせた。そう、今までのマネージャー相手では見る事のできない秋人だったからだ。それを見て、冬木の思いは核心へと変わった。

「やっぱり…な」
「和?やっぱりって何が?」
「いや?秋人。美羽ちゃんの事マジだぜ?」
「やっぱり?でも美羽ちゃんが拒んでそう…」
「フフ…」
「なに?和、その意味深な笑み!!」
「まぁ、核心になってないし。僕の思い込みでどうこうも言えないからね。」

そうして一人で楽しんでるようにも見えた。飛行機に乗り、互いのメンバー同士で二人ずつ乗り、マネージャーやスタッフ同士で席を固める。何かがあってからでは責任が取れなくもなると考えたからだろう。約三時間の飛行機の旅は時期に沖縄に着いた。
走り出そうとする海を止めながら、ひとまずホテルに向かう面々。着いて荷物を置くと、ひとまず会議室に集まった。ファン達に見つかって打合せが出来ないとなっては困るが故に最初の初日に押さえていたのだ。こうしてメンバーと各マネージャー、企画者は一同に集まり書類をもとに簡単な打ち合わせを行った。その時に手渡されたのは一人一台のデジカメだった。

「これって…何すんの?」
「僕たちも撮影するんですけど、例えばカメラが回っていても回っていなくても、メンバーだから取れる顔ってのも欲しいので。それ用です。」
「ってことは秋人の事盗撮してもいいって事?」
「やめろ…」
「いや、やめろって言ってもそうやってお達しが来てる以上仕方ねぇじゃん?」

くすくす笑いながらも話をしているメンバー達。そうして説明も終わると一時間後に集合として一旦着替え等支度に入った。それぞれが散り散りになっていくと美羽の携帯にメールが届く。

『部屋で待ってて』

たったひと言だったが美羽は顔色一つ変えずに返事を入れる。そうして部屋に着いて時期にコンコンとノックの音が鳴った。

「はい!」

そうして開けるとすぐに秋人が入り戸を閉める。戸を閉める秋人の背中に向かってクスリと笑っていた美羽。

「なぁに笑ってんだよ」
「だって…秋人さんおかしくて…」
「おかしくねぇっつぅの…」

そう言いながらもふわりと秋人は美羽の事を抱き締めた。そんな秋人の服の裾を握りしめる美羽の耳元で小さく呟いていた。

「美羽…」
「なぁに?」
「何で海たちは『さん』じゃねぇの?」
「…?何のこと?」
「呼び方。特に海…海くんって呼んでたろ…」
「えっと…うん…まぁ…」
「…で?和は?」
「和さん?」
「ハルは?」
「ハルさん?」
「…まぁ最悪?さんだからいいんだけど、何で俺は『秋人さん』な訳?」
「ごめんなさい、良く解んない…」

きょとんとしている美羽。それも素の状態で聞いていた。グッと抱き締める腕に力が入るとそのままゆっくりとすぐ横の壁に抑えると距離を間近にとってきた。美羽の両足の間に自身の右足を入れ、美羽にとって逃げ場などなかった。

「美羽は俺の何?」
「マネージャー…?」
「後は?」
「……彼…?」
「だろ?それでいつまで俺は『秋人さん』な訳?」
「だって…」

何か反論したいと思っても秋人の顔が間近にあって…そう思えば耳元で甘く声は響いてくる…息遣いさえも感じられる距離で美羽は秋人からの問いかけにドキドキを隠せずにいた。

「秋人…さん…あの…」
「ほらまた…秋人でいい…」
「でも…皆が変に思って…」
「思わねぇよ…だって美羽は俺のマネージャーだからね」
「あ…きと…?」
「何?」
「……さん…」

少し遅れての『さん』付に秋人は少し可笑しくなってきていた。

「クス…美羽?次俺の事『秋人さん』って呼んだら罰ゲームな?」
「秋人さん…罰ゲームって…ン」

言葉を遮るように秋人は美羽の口唇を塞いだ。それと同時に舌を割り込ませて行く。器用に美羽の舌を絡め取りながら深く…深くとキスの時間を重ねている。ゆっくりと離れると美羽はとろんとした目で見上げていた。

「いじわる…」
「何かいった?」
「もぉ…」

そういうと俯いてしまう美羽に体を重ねるように抱きしめる秋人。

「覚悟しとけよ?」

躊躇いがちで、戸惑い気味の美羽の耳元で秋人はいたずらっ子のように呟いていた。そのすぐ後に秋人の携帯が鳴り響く。そっと離れ秋人は美羽に背中を向けて携帯に出ていた。

「もしもし?…和か、どうした?……うん。……はぁ?だって部屋にいねぇし。ん?まぁ、散歩?」

電話の相手は冬木と解っても美羽はどこか離れてしまった事が寂しく感じていた。そんな気持ちになっていたからか…無意識の内に秋人のシャツの裾を握りしめていた。それに気付いた秋人は携帯を左手に持ち替えて右腕で美羽を抱き寄せる。その間もずっと冬木とは話していた。

「あぁ。……でもまだ十分時間はあるだろ?…そりゃそうだけど……はぁ?知らねぇって…クスクス…」

そう話す秋人。まだ電話はかかりそうだった。抱きしめられている美羽も気持ちが抑えられなくなってきたのか、秋人の背中に腕を回してきゅっと巻き付いていた。

「…悪い、和。あとでまた話聞くわ」

そういうと電話を切りデニムのバックポケットにするりとしまうと巻き付いてきた美羽を再度抱き締めた。

「頼むから…あんまり可愛いことしないで?」
「秋人…」
「…ッッ」

自分で言いだしたものの、実際に美羽に呼ばれるとどこか歯がゆくもあり、嬉しさからか、理性を抑えるのに必死にならざるを得なかった。

「秋人…?」
「ん?」
「時間…もぉそろそろ集合時間になっちゃう…」
「…そっか…」

そうして美羽の額に軽くキスを落として二人は部屋を後にしようと出た時だった。タイミングがいいのか悪いのか…冬木とばったり居合わせた。

「おぅ、和」
「おぅって…秋人の部屋って?」
「いんや?ここじゃねぇけど?」
「でも……」

ピンっと感付いた冬木はそれ以上問い詰める事もないまま、秋人の方に腕を回してニッと笑っていた。そうしてぼそりと呟くと秋人は冬木の方に回る腕をふいっと払いのけながらも楽しそうに話をしていた。そうして全員がロビーに集合するとこの日の撮影場所に向かう事となった。
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