凜恋心

降谷みやび

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battle37…公園デート

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ひと休憩も終えたところで、悟浄はどことなく離れ、悟空は八戒に連れられて散歩と言う名の買い出しへ行った。

「三蔵?」
「なんだ」
「あのね?このまま宿に戻るのも…つまんないでしょ?」
「別に。これと言って他に用事はねぇよ」
「たまにはさ?一緒にお散歩しない?」
「……どこに行くんだ?」
「どこでもいいんだよ…だめ?」
「……行くぞ」

そういって少し先を歩く三蔵の後ろを嬉しそうに走り寄って並んで歩く雅。何を話すでも無く、回りの音を聞きながらもポカポカとした陽気にご機嫌だった。

「あ…」
「なんだ」
「……ううん?」

そう答えながら下から見上げた雅。その視線の先をたどった三蔵。先には仲良さそうに手を繋ぎ、並んで歩いている恋人がいた。手持ちぶさたかのように手を後ろで握りしめたままの雅。回りをキョロキョロと楽しそうに見渡しながらも時おり三蔵を見上げては、ふふっと笑っていた。

「なんだ、嬉しそうだな」
「嬉しいよ?だってこうやって三蔵と一緒に歩くの久しぶりだし!」
「…そうか」
「うん!!」

へらっと嬉しそうに、無防備に笑っている雅を見て、三蔵はそっと袂から左手を差し出した。

「……ほら」
「三蔵?」
「あいつらも居ねぇしな……ま、嫌だって言うなら無理にとは言わねぇよ」
「……もぉ…」

そう俯くと雅はそっと三蔵の左手に自身の右手を重ねた。そのまま三蔵はきゅっと指を絡める。

「羨ましそうに見るくらいなら言えばいいだろうが…」
「…でも…三蔵嫌かなって…」
「ま、好きじゃない。でも、たまになら問題ねぇよ…」
「問題って……クスクス…」

絡めて答える雅。それでもこうして三蔵と手を繋いで歩くと言うのは初めてだった。

「フフ……」
「なんだ、気持ち悪い」
「…なんか嬉しくて……」
「たかが手ぇ繋いでるだけだろうが」
「…それが嬉しいの」
「フン……」

なんだかんだと言いながらも、手を離そうとしない三蔵。そのまま街の広場に向かっていった。

「わぁ…ここ!広場だね!!」
「見りゃ解るだろ」
「そんなこと言ってると、置いてっちゃうよ!」

笑いながらも手を離し、雅はパタパタと走り出していった。

「全く……ガキか…あいつは…」

小さく笑いながらも三蔵は木陰のベンチに座っていた。足元に転がってきたボールを拾って子供に渡している姿や、散歩中の犬に声をかけている様子、雅の行動一つ一つが今の三蔵には眩しく見えていた。

『変わらないもの、一つくらいあってもいいと思いますよ?』

そう八戒の言っていた言葉がなぜか今、頭をよぎる。 

「不変なもの…か…」

そうポツリと呟いていた。ふと顔をあげると雅もほぼ同時に三蔵の方を見ていた。

「さんぞーーう!!」

ブンブンと手を振っている相手にふっと口許も緩んでいた。よっと腰をあげ、相手のもとに向かっていった。

「恥ずかしい、やめろ」
「なんで?」
「なんでって……ハァア……」
「それより三蔵!この子、三蔵に聞きたいことがあるんだって!」
「……なんだ、子供」
「あのね?お兄ちゃん、どこか痛いの?」
「……なんでそう思う」
「なんか、難しい顔してる…」
「……プ……フフ」
「笑うな、雅。」
「だって……」
「俺のこの顔は元々だ。別にどこか痛い訳じゃねえよ」
「そっか!よかった!肩に包帯みたいのもかけてるから……」
「これは包帯じゃねぇよ」
「そうなの?」
「あぁ。」
「ありがとう!!教えてくれて!!」

そういうとその子はぺこりと頭を下げてその場を去っていった。

「…おい」
「……クスクス……」
「おい…!」
「ごめ……ちょっと……まって…」
「笑いすぎだろうが…テメエは」
「だって…怒ってるって…」
「雅が説明してやってもよかっただろう…」
「そうなんだけど…三蔵が小さい子と話してるのも見てみたかった」
「ガキと話してるの何ざ今までにも見てるだろうが」
「でも…こんなのんびりとした、ふんわりな環境での会話って無かったでしょ?だから…」
「…ん?だから、何だ」
「でも……三蔵の事、もっと好きになった。」
「変わり者だな…」
「そうかな…」
「そうだろうが。普通は八戒や、それこそ悟浄になびいたりするだろうが。」
「悟空は対象外なんだ」
「年下だろう?それとも見境無いのか?」
「それはひどくない?もし三蔵が年下だったとしても私好きになってたと思うよ?」
「まぁそんなことはいい。」
「そうかも…よく言われる……」
「言われてんのか」
「うん。」
「……チッ」

しかし、そんなことであっても雅の頬は緩んだままだった。少し座ろうと言い出して雅は三蔵が居たベンチに戻っていった。

「八戒のが基本優しい割にちゃんとだめなときは怒ってくれるし…悟浄のが女の子好き過ぎて困るかもけど、根はすごく一途でなんだかんだって傍に居てくれて…悟空は底抜けに明るいけど、たまに泣いていいって言ってくれる位強く居てくれる…その癖三蔵は目付き悪いし、すぐ舌打ちするし、ばかとか言うし……」
「…ほぅ?」
「でもね…?三蔵がいいの…初めは、生まれて育った村でも居心地悪いところから救い出してくれたからそれがとても嬉しくて……光に見えて、それに惹かれてたんだと思う。だけど、一緒に過ごしてたらね?すごく優しくて…言葉に上手く出来ないんだけど…」

そこまで言うと雅は言葉が詰まった。そんな相手をチラリと見る三蔵。

「…、どうした?」
「愛おしいなって……傍に居ると歯がゆくて、ふわふわして…ドキドキして…あったかい気持ちになるの。」

そこまで話すと雅はまたも無防備にふにゃりと笑っていた。

「あ……」
「今度はなんだ…」
「だめ……」
「何がだめなんだ…」
「今、すっごく三蔵に巻き付きたくなっちゃった」
「却下」
「ですよね…クス」
「その代わり…」

そう言うと三蔵は先に立ち上がるとそっと手を差し出した。

「宿に戻るまでの間、繋いでてやるよ」

その手を取ると、雅は満面の笑みで『うん!』と答えていた。

そして広場を出て、宿に向かい戻って居る途中、二人の姿を見つけていた人が居た。

「あっ!八戒、あれ…!!」
「そうですね、雅と三蔵……悟空!待ってください!」
「…え?何で?一緒に帰ればいいじゃん」
「良く見てください?」
「ん?」
「ほら、三蔵の左手と、雅の右手…」
「……!!!八戒!あれ…」
「ね?声はかけずにそのままにしといてあげましょう?」
「…そうだな!三蔵が手繋ぐなんて…珍しいし…」

そう、八戒と悟空が見つけて、話していた。それでも八戒の計らいで悟空は声をかけること無く、ただほほえましく見守っていた。じっと見つつも時折遠目でも解る位に三蔵の優しい表情を見ていた悟空は八戒に話していた。

「なぁ、八戒」
「なんですか?」
「俺さ?昨日の夜雅と部屋、一緒だったじゃん?」
「そうですね」
「その時に雅言ってたんだ。俺の事羨ましいって。なんでかって聞いたらさ。自分の知らない三蔵の事たくさん知ってるでしょって言ってた。」
「それで?悟空は何て言ったんですか?」
「そりゃ長いこと一緒に居るからって。でも、雅だってこれから先一緒にいるんだから三蔵の事たくさん知れるよって話したんだよ。」
「そうですね。」
「でもさ……」
「はい?」
「でもさ?俺…あぁやって三蔵と一緒に手繋いだことって無いんだよ。手捕まれて引きずられたりとかはあるけどさ…?それにあの三蔵の顔。俺も良く見るけど…何か違うんだ。」
…ですか」
「うん。何かさ、三蔵も雅も、めちゃくちゃ幸せそうで…俺のが羨ましい…」

そう言い終わるが早いか八戒を見上げた。

「でもさ、たまにはこう言うのんびりした時間ってのも悪くないな!!」
「そうですね。特にあの二人には、たまには必要でしょうね」
「だよな!三蔵いつもピリピリしてるしさ!!」

そう言う悟空の言葉をきっかけに八戒は『少し回り道しませんか?悟空』と持ちかけた。

「どうしたの?八戒、買い忘れ?」
「三蔵にのんびりして貰いましょう?」

そう言いながらもにこりと笑っていた。そんな八戒に着いて悟空は嬉しそうに着いていったのだ。
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