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scene28:船内調査
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雅が栖谷の家に引っ越して来てから早くも1カ月が過ぎようとしていた。しかし何故だか最近、雅の様子がおかしいのだ。今日もそう…体調が悪い…というのでもない様子だが、ただイライラしているのだ。しかし、加賀が声をかければ一気にしぼんだ風船の様に元気がなくなる。今もそうだった。
「なぁ成瀬…?どうした?」
「別に……なんでもありません。」
「栖谷さんと喧嘩でもしたか?」
「喧嘩…出来るならいいんですけど…」
「…済まない…意味が解らないんだが…」
「喧嘩が出来るだけ一緒に居れるならいいんですけどって事です。」
「いや、待て。今、一緒に住んでるんだよな?」
「…はい。一応」
「それで何で?」
「……避けられてる可能性…大」
「避けられる心当たりなんてあるのか?」
「今の所無いけど…それでも…ここではいつもと変わらないのに…家に帰ると…会えないんです」
「一緒に一つ屋根の下なら会えるだろう?」
「普通はね?」
ふぅ…っとため息を吐く雅。いつものこととはいえ突然にノロケという名の相談をされる加賀。しかし、そんな2人とはいっても見事なまでに仕事の手は止まっていない。そんな時だ。軽い解除音と同時にその渦中の人物ともいえる栖谷が入ってくる。
「お、ちょうど2人共いるか。」
「なんですか?」
「明日、潜入捜査の仕事が入った。もちろん解いては語弊があるが成瀬も同行してもらう。」
「せ…んにゅう…捜査?」
「こちらには何の連絡もありませんが…」
「僕の所にもさっき連絡がきた。」
「…ッ…あ!来ました。メール…」
「遅いな…全く。」
「えーっと…」
「場所は海の上。明日の18時出航の船上パーティーだ。2泊3日のクルージングの旅らしい。そこで取引と最悪の場合テロが行われるとの情報だ。」
「…ッッ」
「ドレスコードはカジュアル不可。男性はタキシード、女性はパーティードレス着用の事。…だそうだ。加賀、持ってるか?」
「いえ…自分は無いです…ね」
「成瀬は?」
「私も…無い…」
「そんな事だろうと思った。Clearの公費があるからそれで落とせるだろう。」
「栖谷さんは?」
「僕は心配しなくてもある」
「……知らなかった…」
「滅多に着る機会などないからね。2人併せても15万あれば余程の物は買えると思う。」
「…じ…15万…?!」
「その位はするだろう。小物も揃えたら…」
「自分に似合うだろうか…」
「加賀、似合う似合わないと言った問題ではない。」
「…は、はい…」
「今日ないし、明日、出発までに各自用意して直接向うに向かう事。ちなみにこれが乗船切符と参加者に配られるパンフレットだそうだ。」
「それで…マル秘は…」
「以前から追っているボンボヤッジグループのスナイパーが乗船するそうだ。誰をターゲットにしているかは解らないが…」
「でもこれって、錚々たるメンツが集まりそうですよ?」
「どういう事だ?」
「大企業会社の代表取締役、ホテル業界に名を轟かせているヤリ手、各界に在籍する会長、あと小さい所で言っても銘酒の作り手や…後は一般の方。と言ってもかなりな大富豪の集りみたいです。」
「自分たちも何か聞かれるでしょうか」
「あ、それは無いそうです。今回の旅、相手に職業を聞いたりすることはタブーになってるみたいです。」
「だとすると、逆を着けば誰でも彼でも入れる…と言った所か。」
「そうですね…」
「…良かった。」
「でも名前、本名で通ったら、V2のスナイパーに気付かれたりしないですかね…」
「V2って…」
「ボンボヤッジってボンとボヤッジ、V2つですよね?」
「残念ながらBon voyageだから、いうならBVだな。」
「…かなり惜しいですね…」
「いや、全然惜しくもないが…」
「とりあえずインカム、小型の物持って行け。」
「了解。」
「服!忘れるんじゃないぞ?」
「はぁい」
言うだけ言って栖谷はまたその部屋を後にした。そんなやり取りを見て加賀は先程の雅の質問に再度の疑問を抱いた。
「…なぁ、成瀬」
「はい?」
「何も普段と変わった様子なんて無い様に見えるが?」
「だから言ってるじゃないですか。ここでは何も変わらないって…ここでは相変わらず、何ら代わらない様子なんです。」
「…で、家だと…?」
「会えません」
「……でも、まぁ明日明後日は一緒なんだし。」
「仕事中の栖谷さんにそんな笑って談笑してくれる優しさなんてあると思いますか?」
「……ない…か…」
「望みは激薄ですよ?」
ため息を吐きながらも雅はカタカタと明日乗り込む船の詮索に入った。船内の諸々の配置、客室…全て調べていく。それでもやはり保管が厳重なのか、乗り合いに参加する各人の役職、氏名…と言った所だった。それでも雅が一部でも解ったのはSNSに挙げられている情報だった。ある程度は解るが参加者全員分には程遠いものだった。
「でも、せっかくの極秘旅行なのに『自分参加します!』なんてSNSにあげたら本も子もないんじゃないのかなぁ…」
「それもそうだな…」
「でしょ?」
そう話しながらも内心は少し嬉しそうだった。服を見に行くにも時間はまだある。しかし加賀は一足先に仕事が片付き、退社と同時に見に行ってくる…と言い残して部屋を出る。
「加賀さんのタキシードって…どんな感じなんだろう…」
そう呟きながらも想像していた。しかし、雅の想像の映像は顔は今のままで体のサイズ等は完全に七五三状態だった。悪いと思いながらもフフフ…と笑みがこぼれてくる。加賀が出てから1時間ほど経った頃か。雅も『ンッ…』と伸びをして片付いた仕事を保存してパソコンの電源を落とした。
「2人にも携帯にそれぞれ送信した…それと帰ってから見る用のと…」
指さし確認をしてよし!とひと言言うとモールに向かっていった。駐車場に着いた雅は無意識に栖谷の車を探している。それでもやはり停まっていない。残念さを隠しきれないまま車に乗り込み、服見てから帰るねとラインを入れてモールへと向かった。
「なぁ成瀬…?どうした?」
「別に……なんでもありません。」
「栖谷さんと喧嘩でもしたか?」
「喧嘩…出来るならいいんですけど…」
「…済まない…意味が解らないんだが…」
「喧嘩が出来るだけ一緒に居れるならいいんですけどって事です。」
「いや、待て。今、一緒に住んでるんだよな?」
「…はい。一応」
「それで何で?」
「……避けられてる可能性…大」
「避けられる心当たりなんてあるのか?」
「今の所無いけど…それでも…ここではいつもと変わらないのに…家に帰ると…会えないんです」
「一緒に一つ屋根の下なら会えるだろう?」
「普通はね?」
ふぅ…っとため息を吐く雅。いつものこととはいえ突然にノロケという名の相談をされる加賀。しかし、そんな2人とはいっても見事なまでに仕事の手は止まっていない。そんな時だ。軽い解除音と同時にその渦中の人物ともいえる栖谷が入ってくる。
「お、ちょうど2人共いるか。」
「なんですか?」
「明日、潜入捜査の仕事が入った。もちろん解いては語弊があるが成瀬も同行してもらう。」
「せ…んにゅう…捜査?」
「こちらには何の連絡もありませんが…」
「僕の所にもさっき連絡がきた。」
「…ッ…あ!来ました。メール…」
「遅いな…全く。」
「えーっと…」
「場所は海の上。明日の18時出航の船上パーティーだ。2泊3日のクルージングの旅らしい。そこで取引と最悪の場合テロが行われるとの情報だ。」
「…ッッ」
「ドレスコードはカジュアル不可。男性はタキシード、女性はパーティードレス着用の事。…だそうだ。加賀、持ってるか?」
「いえ…自分は無いです…ね」
「成瀬は?」
「私も…無い…」
「そんな事だろうと思った。Clearの公費があるからそれで落とせるだろう。」
「栖谷さんは?」
「僕は心配しなくてもある」
「……知らなかった…」
「滅多に着る機会などないからね。2人併せても15万あれば余程の物は買えると思う。」
「…じ…15万…?!」
「その位はするだろう。小物も揃えたら…」
「自分に似合うだろうか…」
「加賀、似合う似合わないと言った問題ではない。」
「…は、はい…」
「今日ないし、明日、出発までに各自用意して直接向うに向かう事。ちなみにこれが乗船切符と参加者に配られるパンフレットだそうだ。」
「それで…マル秘は…」
「以前から追っているボンボヤッジグループのスナイパーが乗船するそうだ。誰をターゲットにしているかは解らないが…」
「でもこれって、錚々たるメンツが集まりそうですよ?」
「どういう事だ?」
「大企業会社の代表取締役、ホテル業界に名を轟かせているヤリ手、各界に在籍する会長、あと小さい所で言っても銘酒の作り手や…後は一般の方。と言ってもかなりな大富豪の集りみたいです。」
「自分たちも何か聞かれるでしょうか」
「あ、それは無いそうです。今回の旅、相手に職業を聞いたりすることはタブーになってるみたいです。」
「だとすると、逆を着けば誰でも彼でも入れる…と言った所か。」
「そうですね…」
「…良かった。」
「でも名前、本名で通ったら、V2のスナイパーに気付かれたりしないですかね…」
「V2って…」
「ボンボヤッジってボンとボヤッジ、V2つですよね?」
「残念ながらBon voyageだから、いうならBVだな。」
「…かなり惜しいですね…」
「いや、全然惜しくもないが…」
「とりあえずインカム、小型の物持って行け。」
「了解。」
「服!忘れるんじゃないぞ?」
「はぁい」
言うだけ言って栖谷はまたその部屋を後にした。そんなやり取りを見て加賀は先程の雅の質問に再度の疑問を抱いた。
「…なぁ、成瀬」
「はい?」
「何も普段と変わった様子なんて無い様に見えるが?」
「だから言ってるじゃないですか。ここでは何も変わらないって…ここでは相変わらず、何ら代わらない様子なんです。」
「…で、家だと…?」
「会えません」
「……でも、まぁ明日明後日は一緒なんだし。」
「仕事中の栖谷さんにそんな笑って談笑してくれる優しさなんてあると思いますか?」
「……ない…か…」
「望みは激薄ですよ?」
ため息を吐きながらも雅はカタカタと明日乗り込む船の詮索に入った。船内の諸々の配置、客室…全て調べていく。それでもやはり保管が厳重なのか、乗り合いに参加する各人の役職、氏名…と言った所だった。それでも雅が一部でも解ったのはSNSに挙げられている情報だった。ある程度は解るが参加者全員分には程遠いものだった。
「でも、せっかくの極秘旅行なのに『自分参加します!』なんてSNSにあげたら本も子もないんじゃないのかなぁ…」
「それもそうだな…」
「でしょ?」
そう話しながらも内心は少し嬉しそうだった。服を見に行くにも時間はまだある。しかし加賀は一足先に仕事が片付き、退社と同時に見に行ってくる…と言い残して部屋を出る。
「加賀さんのタキシードって…どんな感じなんだろう…」
そう呟きながらも想像していた。しかし、雅の想像の映像は顔は今のままで体のサイズ等は完全に七五三状態だった。悪いと思いながらもフフフ…と笑みがこぼれてくる。加賀が出てから1時間ほど経った頃か。雅も『ンッ…』と伸びをして片付いた仕事を保存してパソコンの電源を落とした。
「2人にも携帯にそれぞれ送信した…それと帰ってから見る用のと…」
指さし確認をしてよし!とひと言言うとモールに向かっていった。駐車場に着いた雅は無意識に栖谷の車を探している。それでもやはり停まっていない。残念さを隠しきれないまま車に乗り込み、服見てから帰るねとラインを入れてモールへと向かった。
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