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scene6:恨みは無いが…
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車に乗り込んで発進して時期だった。申し訳なさそうに加賀は話し出した。
「すまなかったな。休みの日に。」
「いえ、3人が3人休みな訳ないと思っていましたし。それに何か理由があるでしょ?」
「理由と言う理由ではないのだが。」
そう切り出しながらも加賀は更に申し訳なさそうに話始めた。
「成瀬に相談したい事もあって…」
「私に…加賀さんが?!」
「そんなに驚く事ではないと思うが…」
「それで?私に応えられる事ですか?」
「……成瀬は自分から栖谷さんに…その…シたことはあるか?」
「シたって…何を?!」
「その…キス…とか…」
「キス…は…私からはした事…(ある様な…無い様な…)」
「やっぱりそうだよな…」
「あの…どうしたんですか?」
「それが……」
「もしかして…されたんですか?」
「…あぁ…」
「それで?!ちゃんと返してあげましたか?!」
「返すって…何をだ?」
「その、想いとか、気持ちとか!!」
「それは……」
そう、返すも何も…初めから勝算なんてなかったと言われ、自分もまた、そう言った気持ちで相手を見ていたわけじゃなかった。恋愛感情に発展なんて考えもしていない…
「…そうですか…それで、私に相談って…」
「もし、成瀬なら。栖谷さんに自分からキスするときってどんな時かと思って…」
「其れは、もしするとしたら相手の事が大好きで、気持ち抑えきれなくなったりとか。シチュエーションにもよりますけど、相手を振り向かせたいときとか…ですかね…」
「そうか……」
それ以上はうまく言葉も見つからずに、少しの沈黙が2人を包み込んだ。それでも嫌な空気ではなかった。こうして警察病院に着いた時には、2人の顔に先程までの穏やかな表情は消えていた。すでに到着している部隊と合流して2人は中に入って行った。
「すみません!!こちらから先は…!!」
そういい前を塞ぐ警備員。臆する事なく加賀と雅は警察手帳を見せる。
「こちらに収監されている者の引き取りにいたんだが。こちらの責任者は黒澤警部とお聞きしていますが?」
「あっ…少々お待ちください…」
そうして警備員は急いで連絡を取る。待つ事数分。奥から難いの良く、背の高い人がやって来る。その後ろに若い刑事と一緒に連れて帰る女性も一緒にやってきた。
「こちらの方、だと推測しますが?それにしてもまだ取り調べはこちら警視庁の期間中の筈だが?」
「これは失礼しました。しかし、こちらに引き渡してもらいます。」
「其れはどういった了見かね。」
「その理由は、そちらが1番解っていると思いますが?」
そう言うとクッと言葉を失う警視庁。その表情を見て、加賀はするりと部下に渡すと連れてその場をさっさと離れた。背中側でボソボソと何かを話す声も聞こえてくるものの、そんなのはいつもの事だった。それでも気にせずにつれていく。外に出ると、部下に輸送を頼み、2人は来た道と同じように車を走らせる。
「相変わらず…連れてくと怒りますね…」
「仕方ないな。それも仕事だから」
「………?」
携帯を見て雅は首をかしげながらも着信の相手に折り返す。
『もしもし。僕だ』
「あ、成瀬です。」
始めの声だけで、『三波』ではなく、『栖谷』である事は瞬時に解った。
『今どこだ?』
「今…ですか?」
ちらりと加賀を見ると小さく頷いた返事を見てゆっくりと話はじめた。
「今警察病院を出た所です。」
『…警察病院と…どうかしたのか?』
「いえ、マル秘の移送が早まったという事で…」
『しかし他の者はどうした?』
「向うで合流し、引き渡しについての話を加賀さんがして…A班にて、移送中です。」
『そうか…気を付けて…』
「はい。ありがとうございます。」
そうして短い電話が切れた。加賀は雅に問うた。
「栖谷さんなんと?」
「いえ、たぶん私と加賀さんの待ち合わせがウロトルマ前だったので見てたんでしょう、何があったと」
「やっぱり来たか…」
「だから言ったじゃないですか。栖谷さんには話したんですか?って…」
「そうは言っても、栖谷さんの手を煩わせる事では…」
「そうかもしれませんけど、意外と心配性ですからね…」
「確かに…そうかもしれん…」
小さくため息を吐いて署に戻ると雅は加賀に礼を言った。
「この後どうするんだ?」
「一旦中の様子見てから帰ります!」
「あんまり無理するなよ?」
「解ってます!お疲れ様でした!」
そうしてにこやかに雅は先に帰る加賀を見送った。そして署内にはいって行く。自身の部署の扉を入った時だ。奥からパタパタと走ってくる音がした。
「良かったぁ。成瀬さん!今日お休みだったからどうしようかと思って…」
「仕事はしに来たんじゃないから直ぐ帰りますけど?」
「そうじゃなくて…!これ!小包…親展の必着で…まさか成瀬さんが自身の休みの日に必着にするかなとは思ったんですけど…」
「何?」
その小包は意外と小さく、そして軽い物だった。受取り、その場で開ける。しかし、すぐに蓋を閉じてまた、ニコリと小さく笑みをこぼしてデスクのメールだけ確認して帰って行った。車に乗るとその場で再度蓋を開ける。
「なんの…嫌がらせだ…?」
そう呟きながらも小さな小箱の中身を見つめていた。その中には署内で撮られた写真に大きくバツ印を書かれた雅の写真と、カッターの刃のみの物。それに併せてメモが1枚……
『恨みは無いが…罪償いし者となれ』
筆跡から身元が割れるのを知っているのだろうか。定規を使って1本1本線で描かれた文字の羅列。
(恨みは無いって事は…私、じゃない…でも『ないが』って事はターゲットは…私か…)
安易に予測がついた。しかし、少し様子を見てみない事には解らない。取りあえず手帳に今の時刻と内容物を書き込んだ。こうして、目に見えない相手との戦いが始まるのだった…
それから1週間がたった…栖谷は突然に加賀を呼びだした。
「すみません、栖谷さん。遅くなって…」
「いや、僕もさっき来たところだ。」
「…っ失礼します。」
そうして横に座った加賀。落ち着いた様子の店内で、男2人が肩を並べて座っている。ふと加賀は栖谷に問いかけた。
「あの、それで栖谷さん…お話というのは…」
「そう緊張しなくてもいい。何かのミスといった話じゃないから。」
「……はぁ…」
「成瀬の事なんだが…」
「成瀬…ですか?」
「最近彼女の元に良く小包が来るそうだが…何か聞いているか?」
「いえ…。一切聞いては居ませんが…小包…ですか?」
「あぁ…それほど重たい物ではないそうなんだが…決まって日時指定・親展それは必須でくるらしいんだが…」
「そう言った話は成瀬からは一切…」
「そうか…」
「すみません、お役に立てず…」
「いや、僕の思い過ごしかも知れない。」
「でも職場に小包…ですか…」
「あぁ、そこが気になってね。それも小包しか取り扱いが無いというからね。それも決まった運送会社。」
「良くある話…とするなら恨みを買って…といったパターンですかね…」
「そうじゃなきゃいいんだが…」
そして栖谷の中でも拭い去れない程の心配が押し寄せてくる。
「栖谷さん?成瀬の事なら自分より栖谷さんの方が詳しいんじゃ…」
「僕に話す事もそりゃあるさ。でも、君に話す事も多くあるのかと思って…」
「そんな事は無いと思いますが…」
今回の事に関しては雅は誰にも話をして居なかった。『何か届いたら私のデスクに置いておいて?』と頼む事はあっても中身がどうとか、こんなものが届いた…などと言った事は一切なかった。
それから少し食事をして、2人は別れた。
「すまなかったな。休みの日に。」
「いえ、3人が3人休みな訳ないと思っていましたし。それに何か理由があるでしょ?」
「理由と言う理由ではないのだが。」
そう切り出しながらも加賀は更に申し訳なさそうに話始めた。
「成瀬に相談したい事もあって…」
「私に…加賀さんが?!」
「そんなに驚く事ではないと思うが…」
「それで?私に応えられる事ですか?」
「……成瀬は自分から栖谷さんに…その…シたことはあるか?」
「シたって…何を?!」
「その…キス…とか…」
「キス…は…私からはした事…(ある様な…無い様な…)」
「やっぱりそうだよな…」
「あの…どうしたんですか?」
「それが……」
「もしかして…されたんですか?」
「…あぁ…」
「それで?!ちゃんと返してあげましたか?!」
「返すって…何をだ?」
「その、想いとか、気持ちとか!!」
「それは……」
そう、返すも何も…初めから勝算なんてなかったと言われ、自分もまた、そう言った気持ちで相手を見ていたわけじゃなかった。恋愛感情に発展なんて考えもしていない…
「…そうですか…それで、私に相談って…」
「もし、成瀬なら。栖谷さんに自分からキスするときってどんな時かと思って…」
「其れは、もしするとしたら相手の事が大好きで、気持ち抑えきれなくなったりとか。シチュエーションにもよりますけど、相手を振り向かせたいときとか…ですかね…」
「そうか……」
それ以上はうまく言葉も見つからずに、少しの沈黙が2人を包み込んだ。それでも嫌な空気ではなかった。こうして警察病院に着いた時には、2人の顔に先程までの穏やかな表情は消えていた。すでに到着している部隊と合流して2人は中に入って行った。
「すみません!!こちらから先は…!!」
そういい前を塞ぐ警備員。臆する事なく加賀と雅は警察手帳を見せる。
「こちらに収監されている者の引き取りにいたんだが。こちらの責任者は黒澤警部とお聞きしていますが?」
「あっ…少々お待ちください…」
そうして警備員は急いで連絡を取る。待つ事数分。奥から難いの良く、背の高い人がやって来る。その後ろに若い刑事と一緒に連れて帰る女性も一緒にやってきた。
「こちらの方、だと推測しますが?それにしてもまだ取り調べはこちら警視庁の期間中の筈だが?」
「これは失礼しました。しかし、こちらに引き渡してもらいます。」
「其れはどういった了見かね。」
「その理由は、そちらが1番解っていると思いますが?」
そう言うとクッと言葉を失う警視庁。その表情を見て、加賀はするりと部下に渡すと連れてその場をさっさと離れた。背中側でボソボソと何かを話す声も聞こえてくるものの、そんなのはいつもの事だった。それでも気にせずにつれていく。外に出ると、部下に輸送を頼み、2人は来た道と同じように車を走らせる。
「相変わらず…連れてくと怒りますね…」
「仕方ないな。それも仕事だから」
「………?」
携帯を見て雅は首をかしげながらも着信の相手に折り返す。
『もしもし。僕だ』
「あ、成瀬です。」
始めの声だけで、『三波』ではなく、『栖谷』である事は瞬時に解った。
『今どこだ?』
「今…ですか?」
ちらりと加賀を見ると小さく頷いた返事を見てゆっくりと話はじめた。
「今警察病院を出た所です。」
『…警察病院と…どうかしたのか?』
「いえ、マル秘の移送が早まったという事で…」
『しかし他の者はどうした?』
「向うで合流し、引き渡しについての話を加賀さんがして…A班にて、移送中です。」
『そうか…気を付けて…』
「はい。ありがとうございます。」
そうして短い電話が切れた。加賀は雅に問うた。
「栖谷さんなんと?」
「いえ、たぶん私と加賀さんの待ち合わせがウロトルマ前だったので見てたんでしょう、何があったと」
「やっぱり来たか…」
「だから言ったじゃないですか。栖谷さんには話したんですか?って…」
「そうは言っても、栖谷さんの手を煩わせる事では…」
「そうかもしれませんけど、意外と心配性ですからね…」
「確かに…そうかもしれん…」
小さくため息を吐いて署に戻ると雅は加賀に礼を言った。
「この後どうするんだ?」
「一旦中の様子見てから帰ります!」
「あんまり無理するなよ?」
「解ってます!お疲れ様でした!」
そうしてにこやかに雅は先に帰る加賀を見送った。そして署内にはいって行く。自身の部署の扉を入った時だ。奥からパタパタと走ってくる音がした。
「良かったぁ。成瀬さん!今日お休みだったからどうしようかと思って…」
「仕事はしに来たんじゃないから直ぐ帰りますけど?」
「そうじゃなくて…!これ!小包…親展の必着で…まさか成瀬さんが自身の休みの日に必着にするかなとは思ったんですけど…」
「何?」
その小包は意外と小さく、そして軽い物だった。受取り、その場で開ける。しかし、すぐに蓋を閉じてまた、ニコリと小さく笑みをこぼしてデスクのメールだけ確認して帰って行った。車に乗るとその場で再度蓋を開ける。
「なんの…嫌がらせだ…?」
そう呟きながらも小さな小箱の中身を見つめていた。その中には署内で撮られた写真に大きくバツ印を書かれた雅の写真と、カッターの刃のみの物。それに併せてメモが1枚……
『恨みは無いが…罪償いし者となれ』
筆跡から身元が割れるのを知っているのだろうか。定規を使って1本1本線で描かれた文字の羅列。
(恨みは無いって事は…私、じゃない…でも『ないが』って事はターゲットは…私か…)
安易に予測がついた。しかし、少し様子を見てみない事には解らない。取りあえず手帳に今の時刻と内容物を書き込んだ。こうして、目に見えない相手との戦いが始まるのだった…
それから1週間がたった…栖谷は突然に加賀を呼びだした。
「すみません、栖谷さん。遅くなって…」
「いや、僕もさっき来たところだ。」
「…っ失礼します。」
そうして横に座った加賀。落ち着いた様子の店内で、男2人が肩を並べて座っている。ふと加賀は栖谷に問いかけた。
「あの、それで栖谷さん…お話というのは…」
「そう緊張しなくてもいい。何かのミスといった話じゃないから。」
「……はぁ…」
「成瀬の事なんだが…」
「成瀬…ですか?」
「最近彼女の元に良く小包が来るそうだが…何か聞いているか?」
「いえ…。一切聞いては居ませんが…小包…ですか?」
「あぁ…それほど重たい物ではないそうなんだが…決まって日時指定・親展それは必須でくるらしいんだが…」
「そう言った話は成瀬からは一切…」
「そうか…」
「すみません、お役に立てず…」
「いや、僕の思い過ごしかも知れない。」
「でも職場に小包…ですか…」
「あぁ、そこが気になってね。それも小包しか取り扱いが無いというからね。それも決まった運送会社。」
「良くある話…とするなら恨みを買って…といったパターンですかね…」
「そうじゃなきゃいいんだが…」
そして栖谷の中でも拭い去れない程の心配が押し寄せてくる。
「栖谷さん?成瀬の事なら自分より栖谷さんの方が詳しいんじゃ…」
「僕に話す事もそりゃあるさ。でも、君に話す事も多くあるのかと思って…」
「そんな事は無いと思いますが…」
今回の事に関しては雅は誰にも話をして居なかった。『何か届いたら私のデスクに置いておいて?』と頼む事はあっても中身がどうとか、こんなものが届いた…などと言った事は一切なかった。
それから少し食事をして、2人は別れた。
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