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scene4:蜜夜
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強引にも似た様に車を停める事なく走らせている栖谷。窓の外を眺めている雅の目には見知ったような風景が流れてきた。そうして直についた栖谷の家…久しぶりに入る事になった雅は少しばかり緊張していた。
「どうした?」
「あ…ううん…なんでもない…」
そう言いながらも玄関に入り靴を脱ぐ雅。靴を脱いだのを見計らったかのように栖谷はぐいっと雅を引き寄せ、腕の中に抱きいれた。
「せ…いやさん?」
「知ってはいると思うが、僕はそれほど気が長い方ではないんだ。」
「…ッッ」
「それにさっきも言ったが、最近の君は本当に加賀の事を気にかけていたからね。僕がどんな思いだったか解るか?」
「それは……」
「何かと言えば加賀、加賀と…自分でも気付いていなかっただろう?」
「……栖谷さ…ン」
ぐいっと腰を抱き寄せて、同時に顎を持ち上げ、唇を重ねる栖谷。舌こそ割り込む事は無かったものの、それでも深く、雅を逃がそうとはしていなかった。ゆっくりと離れるといたずらっ子の様に小さく笑い、腕を離す。背を向けて廊下を進みだした。そんな栖谷の背中からキュッと巻き付き前に進もうとする相手を引き留めた雅。
「洸…」
「…ん?何?」
「私だって…すごく…」
「…『すごく』なんだ?」
「だって…いつウロトルマに行っても…」
「ハァ…雅?そんな事を気にしているのか?」
「おんなじことだよ?」
「いや、それは違うな。」
「一緒だよ!」
そう言うと栖谷に巻き付く腕にきゅっと力が入った雅。
「雅がしっかりと安心できるまで何度も言うよ。ウロトルマに居る時の僕は三波修だ。栖谷洸じゃない。」
「でも、体も声も…全部洸だよ…」
「それもそうだな。だけど、僕の中では色々替えている。演じ分けているよ。だからどれ程に加奈さん達に好意を寄せられたとしても全く響かない。僕の心にはね。」
「……」
そっとシャツを握りしめる雅の手を解くとそっとその手を取って自身の胸に押し当てるように雅の手を誘った栖谷。そのまま押し当てて少し照れくさそうに話し出した。
「ここに響く女性はただ1人だよ。」
「…洸……」
「そして同様に僕の事を『洸』と呼ぶ女性も…」
そう言うと、前に回る雅の腕をそっと緩めて体の向きを変えた次の瞬間には、雅は栖谷の腕の中にいた。
「僕はどちらかと言えば独占欲は強い方だから…それでいて、情報を求めて潜入的にウロトルマにお世話にもなっている。それが原因で君を不安にさせるかもしれない。それはこれからも変わらずに続くと思う。体や声や、この器は僕と同じであったとしても、心は常に栖谷としての物である…と、僕は自負している。」
「洸…」
「それでもまだ雅は不安かい?」
「……不安はたくさんあるよ…でも…淋しくは無くなった…気がする」
「そうか…だとしたら…」
そう言うと手を引き奥へと連れて行く栖谷。廊下の電球の明かりだけで、そのまま部屋の電気を付けずに寝室に向かうと、手を離し、ベッドに腰掛けた。
「今からはぽっかりと開いた僕の心を埋めて貰おうか…」
「こ…ぉ?」
「さっきも言ったが最近の君は、加賀ばかり見ていたからね…」
「そうは言っても…」
ベッドに腰掛けたまま栖谷は雅の腰に腕を回す。もう片方で頬を包み込み、親指で唇をなぞる…
「気付いていない、というのは本当に厄介だな。」
「…洸…?」
「どれだけ僕が雅に惚れているか…堕ちているか…君との、雅との距離が空けば空く程に正気じゃいられない…本当に君は…僕をどれほど弄ぶ気だ…」
「弄ぶだなんて…。。キャ!」
グイッと引っ張り、腕に抱きいれたと思いきや、ベッドにそのまま倒れ込む様にして組み敷いた栖谷。上から見下ろしながらも薄暗い部屋の中で公安でも、ウロトルマでもない、特別な顔を見せていた。
「僕ばかり、ズルいじゃないか…こんなに好きだなんて…」
「洸…?」
「もっと雅も僕で埋め尽くされてしまえばいいのに…」
「何言ってるの…?」
「おかしいかい?」
「…ううん、そうじゃなくて…」
ゆっくりと、少し躊躇いがちに雅は腕を伸ばしきれいな金茶に光る髪に指を滑らした。下から見上げながらも小さく笑いかけて栖谷に応えた。
「私だって…とっくに洸の虜になってる…」
「…本当か?」
「…うん…知らなかったでしょ…」
「その割に加賀を見つめ、ヤキモチ妬いていたのか…」
「仕方ないじゃない…もぉ…」
そう言い終わる頃に雅の唇は栖谷に塞がれていた…
愛おしいがゆえに…不安になる…
そして相手が欲しくなる……
想いが一度でも解り、通じ合えたならもっと…その先まで…
繋がり、深く……ただ目の前の相手を欲しながら……
混ざり合う熱と…
吐息と…甘く狂おしいほどの愛情が絡み合う……
初めて雅が、特別な栖谷を見付けるまでに、それほど多くの時間を要する事は無かった。ぽたりと落ちる汗が雅の体を伝い堕ちる…気付けば2人は絶頂に達し、力果てるかのように互いの体を抱き締め、眠りに就いていた。
ふと目を覚ました雅は細みながらもしっかりとした栖谷の体をそっと撫でる…
「キレい…」
そう呟きながらもそっと髪に指を通す。さらりとしながら、男性にしては細い髪質…ふわりと鼻をくすぐる香水の香りに包まれながらも雅は栖谷の唇を指でなぞった。
「そんなに加賀さんの事ばっかだったかなぁ……こんなに好きなの…洸だけなのに…嫉妬なんて…かわいい…」
クスクスと笑っている雅。その後に睫毛の長さに気付き、そっと唇が触れるだけのキスを交わす。すぐに離れるもののすぐに雅は栖谷に組み敷かれた。
「こぅ…?!」
「そんなに僕の事好き?」
「……ッ」
「物足りなかった?」
「そんな事…」
「フフ…僕の事襲って……ただでは済まさないよ?」
そう言うと首筋に噛みつく様に吸い付いた。何度も…何度も吸い付き、跡を残していく。しかし、余りされてこなかった場所を攻め立てる栖谷。
「ン…ァ…」
指は雅の体をするりとなぞりあげていく…唇や舌も止まる事は無く愛撫を続けて止まらなかった。栖谷の片口に手を置き、押し戻そうとするも適う事は無かった。
「ア…ンァ……ッヤ…」
「嫌じゃないだろう?」
「……ンフゥ…」
体を捩りながらもシーツにすがる雅の手を握り、栖谷は意地悪そうに問いかけた。
「僕にすがればいい…」
「…ンァ…」
「もっと見せて…僕だけに……」
そう言いながらも愛撫の手を止める事なく、雅を絶頂まで誘いぬいた。くたりと力が抜けた時、ようやく栖谷の愛撫の手が収まるかと思った雅。しかしそれでもまだ栖谷のそれは止まらなかったのだ。
何度も…何度も…・・栖谷の腕の中で雅は感じ、絶頂を迎える……どれほどか解らなくなるくらい回数を重ねた後にようやく栖矢の愛撫の手は収まった。
「ハァ……ハァ…」
「…愛してる…雅…」
その初めての言葉を雅は遠くの意識の中で聞く事となったのだった。
「どうした?」
「あ…ううん…なんでもない…」
そう言いながらも玄関に入り靴を脱ぐ雅。靴を脱いだのを見計らったかのように栖谷はぐいっと雅を引き寄せ、腕の中に抱きいれた。
「せ…いやさん?」
「知ってはいると思うが、僕はそれほど気が長い方ではないんだ。」
「…ッッ」
「それにさっきも言ったが、最近の君は本当に加賀の事を気にかけていたからね。僕がどんな思いだったか解るか?」
「それは……」
「何かと言えば加賀、加賀と…自分でも気付いていなかっただろう?」
「……栖谷さ…ン」
ぐいっと腰を抱き寄せて、同時に顎を持ち上げ、唇を重ねる栖谷。舌こそ割り込む事は無かったものの、それでも深く、雅を逃がそうとはしていなかった。ゆっくりと離れるといたずらっ子の様に小さく笑い、腕を離す。背を向けて廊下を進みだした。そんな栖谷の背中からキュッと巻き付き前に進もうとする相手を引き留めた雅。
「洸…」
「…ん?何?」
「私だって…すごく…」
「…『すごく』なんだ?」
「だって…いつウロトルマに行っても…」
「ハァ…雅?そんな事を気にしているのか?」
「おんなじことだよ?」
「いや、それは違うな。」
「一緒だよ!」
そう言うと栖谷に巻き付く腕にきゅっと力が入った雅。
「雅がしっかりと安心できるまで何度も言うよ。ウロトルマに居る時の僕は三波修だ。栖谷洸じゃない。」
「でも、体も声も…全部洸だよ…」
「それもそうだな。だけど、僕の中では色々替えている。演じ分けているよ。だからどれ程に加奈さん達に好意を寄せられたとしても全く響かない。僕の心にはね。」
「……」
そっとシャツを握りしめる雅の手を解くとそっとその手を取って自身の胸に押し当てるように雅の手を誘った栖谷。そのまま押し当てて少し照れくさそうに話し出した。
「ここに響く女性はただ1人だよ。」
「…洸……」
「そして同様に僕の事を『洸』と呼ぶ女性も…」
そう言うと、前に回る雅の腕をそっと緩めて体の向きを変えた次の瞬間には、雅は栖谷の腕の中にいた。
「僕はどちらかと言えば独占欲は強い方だから…それでいて、情報を求めて潜入的にウロトルマにお世話にもなっている。それが原因で君を不安にさせるかもしれない。それはこれからも変わらずに続くと思う。体や声や、この器は僕と同じであったとしても、心は常に栖谷としての物である…と、僕は自負している。」
「洸…」
「それでもまだ雅は不安かい?」
「……不安はたくさんあるよ…でも…淋しくは無くなった…気がする」
「そうか…だとしたら…」
そう言うと手を引き奥へと連れて行く栖谷。廊下の電球の明かりだけで、そのまま部屋の電気を付けずに寝室に向かうと、手を離し、ベッドに腰掛けた。
「今からはぽっかりと開いた僕の心を埋めて貰おうか…」
「こ…ぉ?」
「さっきも言ったが最近の君は、加賀ばかり見ていたからね…」
「そうは言っても…」
ベッドに腰掛けたまま栖谷は雅の腰に腕を回す。もう片方で頬を包み込み、親指で唇をなぞる…
「気付いていない、というのは本当に厄介だな。」
「…洸…?」
「どれだけ僕が雅に惚れているか…堕ちているか…君との、雅との距離が空けば空く程に正気じゃいられない…本当に君は…僕をどれほど弄ぶ気だ…」
「弄ぶだなんて…。。キャ!」
グイッと引っ張り、腕に抱きいれたと思いきや、ベッドにそのまま倒れ込む様にして組み敷いた栖谷。上から見下ろしながらも薄暗い部屋の中で公安でも、ウロトルマでもない、特別な顔を見せていた。
「僕ばかり、ズルいじゃないか…こんなに好きだなんて…」
「洸…?」
「もっと雅も僕で埋め尽くされてしまえばいいのに…」
「何言ってるの…?」
「おかしいかい?」
「…ううん、そうじゃなくて…」
ゆっくりと、少し躊躇いがちに雅は腕を伸ばしきれいな金茶に光る髪に指を滑らした。下から見上げながらも小さく笑いかけて栖谷に応えた。
「私だって…とっくに洸の虜になってる…」
「…本当か?」
「…うん…知らなかったでしょ…」
「その割に加賀を見つめ、ヤキモチ妬いていたのか…」
「仕方ないじゃない…もぉ…」
そう言い終わる頃に雅の唇は栖谷に塞がれていた…
愛おしいがゆえに…不安になる…
そして相手が欲しくなる……
想いが一度でも解り、通じ合えたならもっと…その先まで…
繋がり、深く……ただ目の前の相手を欲しながら……
混ざり合う熱と…
吐息と…甘く狂おしいほどの愛情が絡み合う……
初めて雅が、特別な栖谷を見付けるまでに、それほど多くの時間を要する事は無かった。ぽたりと落ちる汗が雅の体を伝い堕ちる…気付けば2人は絶頂に達し、力果てるかのように互いの体を抱き締め、眠りに就いていた。
ふと目を覚ました雅は細みながらもしっかりとした栖谷の体をそっと撫でる…
「キレい…」
そう呟きながらもそっと髪に指を通す。さらりとしながら、男性にしては細い髪質…ふわりと鼻をくすぐる香水の香りに包まれながらも雅は栖谷の唇を指でなぞった。
「そんなに加賀さんの事ばっかだったかなぁ……こんなに好きなの…洸だけなのに…嫉妬なんて…かわいい…」
クスクスと笑っている雅。その後に睫毛の長さに気付き、そっと唇が触れるだけのキスを交わす。すぐに離れるもののすぐに雅は栖谷に組み敷かれた。
「こぅ…?!」
「そんなに僕の事好き?」
「……ッ」
「物足りなかった?」
「そんな事…」
「フフ…僕の事襲って……ただでは済まさないよ?」
そう言うと首筋に噛みつく様に吸い付いた。何度も…何度も吸い付き、跡を残していく。しかし、余りされてこなかった場所を攻め立てる栖谷。
「ン…ァ…」
指は雅の体をするりとなぞりあげていく…唇や舌も止まる事は無く愛撫を続けて止まらなかった。栖谷の片口に手を置き、押し戻そうとするも適う事は無かった。
「ア…ンァ……ッヤ…」
「嫌じゃないだろう?」
「……ンフゥ…」
体を捩りながらもシーツにすがる雅の手を握り、栖谷は意地悪そうに問いかけた。
「僕にすがればいい…」
「…ンァ…」
「もっと見せて…僕だけに……」
そう言いながらも愛撫の手を止める事なく、雅を絶頂まで誘いぬいた。くたりと力が抜けた時、ようやく栖谷の愛撫の手が収まるかと思った雅。しかしそれでもまだ栖谷のそれは止まらなかったのだ。
何度も…何度も…・・栖谷の腕の中で雅は感じ、絶頂を迎える……どれほどか解らなくなるくらい回数を重ねた後にようやく栖矢の愛撫の手は収まった。
「ハァ……ハァ…」
「…愛してる…雅…」
その初めての言葉を雅は遠くの意識の中で聞く事となったのだった。
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