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2 再会

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 そのうちおれも学園を卒業し、爵位も継いで忙しくしていた。どうしても外せない社交があり、首都のタウンハウスに泊まっていた。社交帰りに馬車の中から、外の雨を眺めていたら、馬車が止まった。車輪が轍に挟まったらしい。
 苛立つが、雨の日はこういうこともある。仕方がなく修理が終わるまで留まっていた。
 すると背の高い男が二人揉み合っている。こんな雨の日にと思っていたら、ただのケンカではないみたいだ。まるで痴情のもつれみたいだと思った。片方が片方を口説くように抱き寄せるが、片方が拒絶している。

 ハッとする。拒絶している金髪の方に見覚えがある。レイモンドだ。
 随分背が伸びたが、白い顔と印象的な大きな目が変わらない。
 おれは馬車から飛び出ると、ステッキをもう一人の男の前にやり間に割って入った。
 「やめろ。嫌がっているのがわからないのか」
 体格がよく、身なりのいい紳士然としたおれに男が怯む。
 「され!」命令すると男は敵わないと思ったのか「アッシェン覚えてろ」と言って走り去った。

 「やぶさかではないな」
 おれは残されたレイモンドを見た。雨の中にも関わらず上着も着ておらず、白いシャツは前がはだけている。何をされていたか一目瞭然だ。
 おれは彼が男娼にまで身を落としたのかと思った。その割には質素で貧相だった。
 「大丈夫か」
 彼は俯いたままだ。
 金を包んだ袋を渡すと、「ぼくは男娼じゃない」と言う小さい声が聞こえた。
 「旦那様、馬車が直りました」
 御者が叫んでくる。雨は激しくなっていった。

 気づくと倒れかかっているレイモンドの体を支える。体が燃えるように熱い。
 アーノルドはレイモンドの体を担ぐと馬車に乗せタウンハウスまで運ぶ。

 レイモンドの体を拭き、着替えさせる。
 医者を呼ぶ。過労と栄養不足。そこに雨に濡れたせいで熱が出ていると言う。しばらく安静と滋養のある食べ物を与えるようにと、解熱剤を処方された。

 アーノルド自ら看病をする。白い肌に熱のせいか頬と唇が色づいて生めかしい。淡い金髪の髪が汗で首に張り付いている。
 着替えさせた時に確認したが、だれかと情を交わしている気配はなかった。初心な体をしていることにホッとする。
 栄養不良のせいか、背の割には細くて未発達な印象を与えてくる。

 熱でうなされるレイモンドの額の汗を拭いてやり「大丈夫だ」と手を握ってやる。レイモンドはすると唸るのをやめる。穏やかな寝息をたてるレイモンドの顔を見ていると、不思議な高揚感と達成感がある。

 あの時もおれを頼ってくれれば、守ったのに。
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