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平凡枠の俺に主役の二人がひどい牽制をしあっているので、逃げます。

3 背中を押されて

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 以前から学校で「勘違いしないように」と言われたり、足で引っ掛けられたり、水を頭からかけられたり、制服や教科書を破られたりしていた。

 お願いです。物に当たらないで。
 買い替えたばかりの教科書が使い物にならなくなったときの悲しさとは・・・。

 なぜおれが? これってヒロインがされることのはず。

 その首謀者の黒髪赤目の伯爵令嬢のミレ様に通学途中の道路で背中をおされた。
 この日はアトラスとは一緒に通っていなかった。

 本ではミレ様は悪役令嬢役だ。彼女が狙うのはヒロインのはずだったのに、何故かおれをターゲットにしてくる。

 実はプンプン怒ってるミレ様が可愛いなーっと思ってた。

 だから彼女が、おれに絡んで来るのが楽しみだった。ミレ様は主に、「アトラス様に近づくな」、「平凡はアトラス様にふさわしくない」と怒っていたが。
 
 ミレ様の力は強くて、背中を押されたおれは、道路の真ん中で、膝をついて倒れた。やばい。

 ガダガタ音がする方を見ると、ちょうど馬車がやってきている。倒れているおれに気づいた御者が馬を止めようとするが、このままではぶつかる!

 走馬灯さえ見る暇がなくて。おれは両目をぎゅっとつぶる。

 二人の影がおれに近づいたと思ったら、アトラスは馬に飛び乗り、荒々しく馬の方向を変え、マイルズはおれを抱きあげて、馬の方向と逆側に助け出してくれた。
 「「シモンズ」」
 マイルズに抱きしめられながら、アトラスを振り返る。
 髪を風に靡かせて、暴れている馬の手綱を操るアトラスが見えた。アトラスがさすがにカッコよい。ヒーローみたいだ。ヒーローか。

 おれを抱き上げ助けてくれたマイルズを見上げると、下から見るのに顎や鼻の形さえ綺麗でカッコよい。
 優美な美貌に似合わない逞しい厚みのある胸板や、体の熱さも感じた。さすがこちらもヒーローだ。

 胸がドキドキするのは、驚いたからだ!
 絶対に二人にときめいてない!

 アトラスとマイルズになんとか身一つで助けられたおれは、貴族怖いとやっぱり思った。


※※



 その後、疲れとショックで寝込んでいたおれは、左にマイルズ、右にアトラスが一緒に寝ていて、腕を回されていることに朝まで気づかなかった。


 おれは息苦しさのあまり、唸りながら大蛇に首を絞められる夢を見た。目覚めると、ベッドで二人に挟まれて、ぎゅうぎゅうで狭い。

 アトラスとマイルズは細く見えるのに逞しくて体がでかいんだから、違うベッドで寝ればいいのに、両サイドから抱きしめられている。そんなに狭いベッドじゃないのに、おれにより過ぎ!

 悪夢の原因たちは、目覚めるとご機嫌麗しく、両サイドから頬にキスをされる。

 朝から二人のキラキラ具合におれの生気吸い取ってないか疑うわ。

 もちろんおれ一人で転けたって二人には言っている。伯爵令嬢のミレ様も何らかの本の強制力で、そんなことをしてしまったのかと思うと、胸が痛い。



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