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突き抜けた腹黒第二皇子の執着がすぎる点について
6 暴徒
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おれの成人の儀式が終わった。兄上も参列しており、おれの晴れの姿を見て涙ぐんでいる。
おれが皇太子になる噂は公然とされていたが、まだ正式に発表はされていなかった。
第二皇子派が焦れて、兄上を排斥させようと国王に上申するという。
同時期に民衆の中でも力のもつ、王都の住民が白薔薇宮の王都側の門の前に、兄と正妃を殺せと集まっているという。民のものを取り戻せと叫んでいる。第二皇子派の若い過激な貴族も参加しているという。
おれはため息をついた。
兄上のことを何も知らずに兄上を排斥しようとする貴族共も、民衆も殺したくて仕方がない。
兄上を殺害しようとする暴徒と化した民衆や若い過激な貴族が王都側の白薔薇宮の門の前に集まっている。おれが忽然と姿を現すと、「第二皇子が来た。正義はわれらに」と勝手に喜んでいる。
白薔薇宮と言われる美しい宮殿は前からぶっ壊したかった。
兄を閉じ込める鳥かごでもあり、おれと兄を引き離す壁でもあった。
ここの主も兄上の弊害になることはあの時の誘拐事件の時からわかっている。
暴徒たちが、壁を鍋やフライパン、鉄杭などで壊していくところを俺は指を動かして空に向かって聳え立つ門を破壊した。
奇声を上げて中に雪崩れ込んだ暴徒たちは、逃げ惑う宮の者の髪を掴んで引き倒している。部屋に入り込んでは金目の物を盗んでいる。
おれはそんな物には目もくれず、宮の奥に足を進める。
すぐに倒れないように、だが確実に倒れるように100年以上経っても荘厳な柱や壁を壊す。
その他の人間は暴徒に任せて、おれは正妃や兄上のために立ち向かってくるものを倒していく。
剣と魔法を繰り出せるおれは強い。
兄上の部屋に近づくと開いた扉から声が聞こえる。
「ステファンさまお逃げ下さい」
兄上は首を振っているようだ。
「アルバ今までおれを守ってくれてありがとう。おれは民衆がいう通りダメな皇子だ。民意に沿ってここで死ぬのが、唯一私にできることだ。だからお前は私を置いて去りなさい。これは命令だ」毅然とした兄上の声が聞こえる。
一人で死ぬ覚悟をしている兄上の言葉におれは怒りのあまり拳を握りしめる。爪が食い込んで血が滴る。
騎士は兄上にかけ寄ると抱きしめた。
「ステファンさま、私はあなたの騎士です。あなたを生涯守ると忠誠を誓った。私にその誓いを守らせてください」
「だめだアルバ。逃げてくれ」
「ステファンさま、おれの愛おしいひと」
ステファンに、騎士の分際で触るとは。
怒りのあまり聞いてられなくて、扉を叩きつける。
おれの後ろから暴徒たちが押し寄せおれを通りすぎる。
混乱する部屋の中で、アルバはステファンを抱き上げると、広間まで走り逃げる。
おれは歩きながら二人に近づく。片方の肩にかけていた深紅のマントが煩わしい。ただ壁にかけてあったからという理由で持ってきた皇剣もひどく邪魔に感じる。
おれが皇太子になる噂は公然とされていたが、まだ正式に発表はされていなかった。
第二皇子派が焦れて、兄上を排斥させようと国王に上申するという。
同時期に民衆の中でも力のもつ、王都の住民が白薔薇宮の王都側の門の前に、兄と正妃を殺せと集まっているという。民のものを取り戻せと叫んでいる。第二皇子派の若い過激な貴族も参加しているという。
おれはため息をついた。
兄上のことを何も知らずに兄上を排斥しようとする貴族共も、民衆も殺したくて仕方がない。
兄上を殺害しようとする暴徒と化した民衆や若い過激な貴族が王都側の白薔薇宮の門の前に集まっている。おれが忽然と姿を現すと、「第二皇子が来た。正義はわれらに」と勝手に喜んでいる。
白薔薇宮と言われる美しい宮殿は前からぶっ壊したかった。
兄を閉じ込める鳥かごでもあり、おれと兄を引き離す壁でもあった。
ここの主も兄上の弊害になることはあの時の誘拐事件の時からわかっている。
暴徒たちが、壁を鍋やフライパン、鉄杭などで壊していくところを俺は指を動かして空に向かって聳え立つ門を破壊した。
奇声を上げて中に雪崩れ込んだ暴徒たちは、逃げ惑う宮の者の髪を掴んで引き倒している。部屋に入り込んでは金目の物を盗んでいる。
おれはそんな物には目もくれず、宮の奥に足を進める。
すぐに倒れないように、だが確実に倒れるように100年以上経っても荘厳な柱や壁を壊す。
その他の人間は暴徒に任せて、おれは正妃や兄上のために立ち向かってくるものを倒していく。
剣と魔法を繰り出せるおれは強い。
兄上の部屋に近づくと開いた扉から声が聞こえる。
「ステファンさまお逃げ下さい」
兄上は首を振っているようだ。
「アルバ今までおれを守ってくれてありがとう。おれは民衆がいう通りダメな皇子だ。民意に沿ってここで死ぬのが、唯一私にできることだ。だからお前は私を置いて去りなさい。これは命令だ」毅然とした兄上の声が聞こえる。
一人で死ぬ覚悟をしている兄上の言葉におれは怒りのあまり拳を握りしめる。爪が食い込んで血が滴る。
騎士は兄上にかけ寄ると抱きしめた。
「ステファンさま、私はあなたの騎士です。あなたを生涯守ると忠誠を誓った。私にその誓いを守らせてください」
「だめだアルバ。逃げてくれ」
「ステファンさま、おれの愛おしいひと」
ステファンに、騎士の分際で触るとは。
怒りのあまり聞いてられなくて、扉を叩きつける。
おれの後ろから暴徒たちが押し寄せおれを通りすぎる。
混乱する部屋の中で、アルバはステファンを抱き上げると、広間まで走り逃げる。
おれは歩きながら二人に近づく。片方の肩にかけていた深紅のマントが煩わしい。ただ壁にかけてあったからという理由で持ってきた皇剣もひどく邪魔に感じる。
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