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ロイとの再会

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 「お前ノアか」

 目の前の白髪で無精髭の男に片手で顔と片手で両腕を掴まれ、強い力で乱暴に固定される。

 体も唇もガクガク震えて答えられない。
 「おい答えろ」おれの体を跨いでくる。
 おれは何とか震えながら頷く。
 「やはりそうか。おい、呪いはどうした解けたのか」
 
 おれは益々大きく震えて答えられない。
 「ちっ相変わらずトロくせーな」
 「おい随分若いじゃないか。若返ったのか。それとも年を取らないのか、呪いはどうなった」次々と聞かれる。
 震えるおれをみて「おいもしかしておれがわからないのか」と男は呆れたように言う。
 「ロイだよ。ロイ」

 おれは思い出した。あの最後の間で、呪いをおれに受けさせ、おれを置いて残して去った張本人。パーティリーダーで剣士のロイだ。長い黒髪は短髪になりほぼ白髪になっていてわからなかった。

 ドムレットがロイに似ていると思っていたが、全然似ていなかった。
 整った顔の凛々しかった頃の面影はなく、歪んだ笑みが出来るしわが顔に刻まれている。
 取り繕っていたのかも知れないが、あのダンジョンに行くまではよく爽やかに笑いながら、優しく声かけをしてくれた。
 ただの雑用係にロイだけが優しくしてくれた。だから、ダンジョンで置いていかれても、あの会話を聞いたにも関わらず、何かの間違いかもしれないとどこかで思っていた。いや、思いたかった。

 ここまで人は変わるものなのか。それともこれがロイの本性なんだろうか。

 「どうやって年齢を止めた。永遠の若さが実はあの呪いの正体だったのか」
 「あの調味料ですぐにわかったぜ。お前は料理だけはましだったからな。イリヤがお前の良く使っていた調味料を持ってるからおかしいと思ったんだ。おいジェイクとはどういう関係だ。あいつは今一番の出世頭だからな。上手い事やりやがって、おれが一番調子がいいときはおれにたかって、次はジェイクかよ」
 なぜかロイは怒りながら話をしている。

 「おら、おれに言うことはあるんじゃないのか」
 ロイに言うこと? どうしておれに呪いを受けさせた? どうしておれを置いて行った? どうして、どうして・・・。

 「ありがとうございますだろ。呪いを受けさせてくれてありがとうございますだろ。おかげ若さが保ててますだ。ほら、呪われたお前をまた雇ってやるよ。お前がいる時が一番調子が良かったからな。もしかしてお前はそういう運を呼び込むのかもしれない。呪いも呼び込むがな。ハハハ。ほら、ジェイクのところからおれのところに来い。ジェイクにはイリヤをやる。それならどっこいどっこいだ。お前みたいなのをおれが雇ってやるんだ。ありがたく思え」

 おれは頭がおかしいんだろうか。ロイの言うことが何一つわからない。同じ言葉を話をしているんだろうか。

 「おい、おまえあそこの具合もいいのか。こうやって見ると若いせいか、マシに見えるな。悪くない。ほら、じゃあこれ咥えろよ」
 ロイがおれの目の前にポロンとでかい陰茎を晒した。

 おれは目の前のそれも処理できない。
 なんでそんなものがおれの目の前にあるんだ。
 
 おれはいつの間にか唖然としすぎて震えが止まっていた。

 おれに呪いを受けさせて、おれをどん底まで陥れたロイの汚い物が目の前にある。

 消していいかな。

 おれは自分が魔法を発動させたんだと思った。

 目の前の奴が、「ぎゃあーーーーーーーーーーーーーーー」と叫んだからだ。
 きっとおれ、やったことはないけど、細かく掃除しちゃったんだなって。

 ロイは仰け反って汚い物を晒しながら失神している。
 手があり得ない方向に曲がっている。
 口からは泡が拭いている。

 まだ生きている。

 ジェイクが荒く息しながら、そいつを掴むとおれたちの簡易寝所から外に放り投げて、出入口を閉めた。急いで来たのかまだ呼吸が荒い。額に汗で髪が張り付いている。
 
 ジェイクがおれを抱きしめた。

 「もう大丈夫だ。ノア大丈夫だ」
 おれをきつく抱きしめる。そんなに抱きしめたら苦しいよ。

 「ノア。もう怖いものはないから、だから大丈夫だから、泣かないで」
 おれは言われて初めて泣いていることに気づいた。
 両方の頬を涙が流れている。

 息を詰めていたものを吐き出す。
 「大丈夫だ、二度とやつをノアに近寄せない。あいつには相応の報いをやる」

 おれはジェイクを抱きしめ返した。「・・・ジェイク」
 「怖かったなノア。もう大丈夫だからな、おれが傍にいる。おれがノアを守るから」
 「ジェイク、ジェイク・・・」

 ジェイクが来てくれたことが嬉しい。おれをロイから守ってくれてたことが嬉しい。
 おれ達はたった二人しかこの世にいないように抱きしめあった。

 このまま二人だけの世界になったらいいのに。
 なせか悲しい気持ちでそう思った。
 


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