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呪術師に言われたこと2
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「おい、待て! お前その格好で出るつもりか? 住む所はどうするんだ?」
おれは首を傾げた。襟のない薄いシャツに、ポケットもないテロンとした半ズボンだ。
言えば寝るための服だ。
おれは自分の服や荷物もないから、このまま家を出るだけだ。それに元々おれは住むところもなかったから、どこか寝れそうな場所を、街外れや木の下を探して寝ればいい。もしかして今着てる服も脱げってことかな? 確かにこれもジェイクに借りている服だ。おれは着ていた服を脱ぎ始めた。
「や、やめろ脱ぐな」
ドムレットが慌てて止めてくる。
どうしたんだろ? ズボンを脱いだところで止まる。
「あー、もう、仕方がない」
ドムレットは、おれにズボンを履くように言ってきた。
それからドムレットと話をしていたら仕事も住む所も紹介してくれるという。
「お前のためじゃないからな。お前がフラフラしてるとジェイクが心配するだろ」
ドムレットはおれに「働け」と言ってくる。
こんなおれにできる仕事はあるのだろうか。
「大丈夫だ。子供の世話だからお前でもできるだろ」
孤児院で子供の世話係を募集しているそうだ。給金はほぼでないが、住み込みで食事もでる。
そんな仕事が世の中にはあったんだな。おれは「ドムレットはすごいね」と感心した。
ただ心配がある。呪いだ。子供たちに移ったらどうしよう。
呪術師の話を知らないドムレットは「今は呪いがとけたから動けるんじゃないのか。あれだけ世話をしているジェイクがうつらないなら大丈夫じゃないか」と適当なことをいう。
「でも・・・」とおれが渋っていたら、ドムレットは呆れたようなため息をつく。
「わかった他の仕事を探してきてやる。おれも子供たちに呪いが移ったら気分は良くないからな」
「ありがとう。ドムレットはいい奴だ」とおれは礼をいう。
「ドムレット様だ。おれもA級冒険者でお前なんかが話せるような人間じゃないんだぞ」と偉そうにいう。
おれはクスクス笑う。ドムレットが自信満々で可愛いと思った。
「な、なんで笑う」
「可愛いなって思って」
「お前なんかに可愛いって言われる筋合いはない」と赤くなって怒りながらドムレットは帰っていった。
それから次に来た時には、街外れの貴族の家の書庫整理という仕事を見つけてくれた。
書庫の管理人なので給金は少しだが出る。住み込みで、先代の残した膨大な本を虫干ししたり管理したりする仕事だ。
字は読み書きはできるのが条件だが、それは何とかなった。難しい字は無理だが、雑用係をしていた時に生活できる範囲の読み書きは覚えていた。でも字はわかるんだが、固まっていた影響で字が上手く書けない。これは訓練が必要だった。
そんなレベルでいいのかわからないが。
学術的価値が低いのと、給金が安いためなり手がいないそうだ。
呪われているおれにとっては、給金が安いことよりも、人間相手じゃないことで、気が楽になる。ドムレットもきっとその点を考慮してくれたんだろう。良い奴だ。
「お前のためじゃない。お前が住むところもなくフラフラしていたら結局ジェイクがお前を連れ戻すだろう」
ドムレットは本当にジェイク思いだ。
おれは少しずつ、字の練習も始めた。ジェイクもおれが動き回るより、座って字の練習をしている方が安心するみたいで、何も言わない。
仕事も決まったなら、もうそろそろジェイクと離れないといけない…。
字を書きながら、剣の手入れをしているジェイクの横顔をちらっと見る。
金色に輝く柔らかい髪が顔に少しかかっている。鼻が高くて、頬はまっすぐだ、口は大きめで形がいい。あの唇がおれの頬と耳に触れたんだなと思い出す。
その時のことを思い出して顔が赤くなる。本当におれはジェイクに助けられて幸せだった。
呪われて一人で過ごした日々は辛かったけれど、ジェイクに会って助けられた今は、あれもジェイクに会うための運命だったのだろうか。
だけどその運命にジェイクを巻き込まないようにしなければ・・・
おれは首を傾げた。襟のない薄いシャツに、ポケットもないテロンとした半ズボンだ。
言えば寝るための服だ。
おれは自分の服や荷物もないから、このまま家を出るだけだ。それに元々おれは住むところもなかったから、どこか寝れそうな場所を、街外れや木の下を探して寝ればいい。もしかして今着てる服も脱げってことかな? 確かにこれもジェイクに借りている服だ。おれは着ていた服を脱ぎ始めた。
「や、やめろ脱ぐな」
ドムレットが慌てて止めてくる。
どうしたんだろ? ズボンを脱いだところで止まる。
「あー、もう、仕方がない」
ドムレットは、おれにズボンを履くように言ってきた。
それからドムレットと話をしていたら仕事も住む所も紹介してくれるという。
「お前のためじゃないからな。お前がフラフラしてるとジェイクが心配するだろ」
ドムレットはおれに「働け」と言ってくる。
こんなおれにできる仕事はあるのだろうか。
「大丈夫だ。子供の世話だからお前でもできるだろ」
孤児院で子供の世話係を募集しているそうだ。給金はほぼでないが、住み込みで食事もでる。
そんな仕事が世の中にはあったんだな。おれは「ドムレットはすごいね」と感心した。
ただ心配がある。呪いだ。子供たちに移ったらどうしよう。
呪術師の話を知らないドムレットは「今は呪いがとけたから動けるんじゃないのか。あれだけ世話をしているジェイクがうつらないなら大丈夫じゃないか」と適当なことをいう。
「でも・・・」とおれが渋っていたら、ドムレットは呆れたようなため息をつく。
「わかった他の仕事を探してきてやる。おれも子供たちに呪いが移ったら気分は良くないからな」
「ありがとう。ドムレットはいい奴だ」とおれは礼をいう。
「ドムレット様だ。おれもA級冒険者でお前なんかが話せるような人間じゃないんだぞ」と偉そうにいう。
おれはクスクス笑う。ドムレットが自信満々で可愛いと思った。
「な、なんで笑う」
「可愛いなって思って」
「お前なんかに可愛いって言われる筋合いはない」と赤くなって怒りながらドムレットは帰っていった。
それから次に来た時には、街外れの貴族の家の書庫整理という仕事を見つけてくれた。
書庫の管理人なので給金は少しだが出る。住み込みで、先代の残した膨大な本を虫干ししたり管理したりする仕事だ。
字は読み書きはできるのが条件だが、それは何とかなった。難しい字は無理だが、雑用係をしていた時に生活できる範囲の読み書きは覚えていた。でも字はわかるんだが、固まっていた影響で字が上手く書けない。これは訓練が必要だった。
そんなレベルでいいのかわからないが。
学術的価値が低いのと、給金が安いためなり手がいないそうだ。
呪われているおれにとっては、給金が安いことよりも、人間相手じゃないことで、気が楽になる。ドムレットもきっとその点を考慮してくれたんだろう。良い奴だ。
「お前のためじゃない。お前が住むところもなくフラフラしていたら結局ジェイクがお前を連れ戻すだろう」
ドムレットは本当にジェイク思いだ。
おれは少しずつ、字の練習も始めた。ジェイクもおれが動き回るより、座って字の練習をしている方が安心するみたいで、何も言わない。
仕事も決まったなら、もうそろそろジェイクと離れないといけない…。
字を書きながら、剣の手入れをしているジェイクの横顔をちらっと見る。
金色に輝く柔らかい髪が顔に少しかかっている。鼻が高くて、頬はまっすぐだ、口は大きめで形がいい。あの唇がおれの頬と耳に触れたんだなと思い出す。
その時のことを思い出して顔が赤くなる。本当におれはジェイクに助けられて幸せだった。
呪われて一人で過ごした日々は辛かったけれど、ジェイクに会って助けられた今は、あれもジェイクに会うための運命だったのだろうか。
だけどその運命にジェイクを巻き込まないようにしなければ・・・
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