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1-4 シロップ
第21話 代案
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「青い食べ物を探していた理由は分かったが、何故青色を求めたのだね?」
(まずい、"ブルーハワイ"の事を説明しても信じてはもらえないし……)
「赤と黄色はすでにございます。緑も候補となりそうな食材は多数あります。一番再現が難しそうなのが青色かと思いまして、青を探しておりました」
「確かに。統治官である私でも、青い色の食べ物なんてホーリーベリーしか知らなかったのだから、もし青いシロップが作れたなら大いに衆目を集め繁盛するだろう」
間一髪、なんとかごまかせたようだ。
「私の軽率な興味が、街に不穏分子が存在すると誤解をさせてしまい、申し訳ございませんでした」
「呼びつけてしまって君には申し訳なかったが、国家の為だ、理解して欲しい」
「そんな! 滅相もございません。私もこの街ではまだまだ新参者ですから、気づかぬうちに何か法を犯していた可能性もありますし」
「……なるほど、君の事は大体理解した。監査員の言っていた話も本当の事か」
「監査員ですか?」
「君は獣人の村の調査を担当しただろう? その報告書を読んだ監査員が、君を高く評価していたのだよ『報告書の内容が、今までの冒険者とは段違いに優れている』とね」
「それは恐縮です」
書類仕事はサラリーマン時代にこなしていた事もあり多少自信があるが、他の冒険者が大雑把すぎる可能性も大きいと思う。
「君がこの街に来てもう一年経つと聞いた。少し遅れたが──ようこそ! 辺境都市サウドへ、我々は君を歓迎する。君は信頼出来る人間だと判断した、これからよろしく頼む、冒険者ヤマト」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
「ホー! (テキ)」
「そ、そうだなぁリーフル。リーフルもよろしくと言っています」
「あぁ──君もな、よろしく頼むよ相棒君」
どうやらリーフルは統治官様が嫌いなようだ。
俺にしか真意は伝わらないのが幸いだ、肝が冷える。
「今後、君に指名依頼を頼む事もあるだろう、その時はよろしく頼むよ」
「はい。光栄に存じます、努力してまいります」
何の罪で裁かれるのか、折角神様から貰った第二の人生もあっさり終わりかと本当に焦った。
"ブルーハワイ"の再現も、理由が理由だし、こんな大事になった以上諦めもつけやすい。
でもシロップの種類が増えるに越したことはないんだよなぁ。
何とか役所での尋問を乗り切った俺は、ひとまずギルドへ戻ることにした。
◇
「ヤマトさん! ご無事ですか!」
キャシーが俺の顔や腕をペタペタ触りながら確認してくる。
「大丈夫ですよ、ご心配をおかけしました」
「ホホーホ(ナカマ)」
「そうだね、キャシーさんは味方だ。リーゼス様も悪い人では無かったけど? 何が気に入らないんだ?」
「リーフルちゃん、役所で何かあったんですか?」
「それがですね……」
役所で何があったのか、事のあらましをキャシーに説明する。
「はは、肝が冷えましたよ」
「リーフルちゃん、ヤマトさんにベッタリですもんねぇ。それにしても、ヤマトさん怖くなかったんですか? 冤罪でそのまま……なんてことも、無いわけじゃないでしょ?
「確かに不敬罪で極刑というのは知らなかったので、恐ろしいと思いました」
「数少ない信頼できる冒険者のヤマトさんを失うのではと、ギルドでもみんな気が気じゃ無かったですよ」
「リーゼス様は統治官として職務を全うしただけですし、俺にもちゃんと説明させてくれましたし、理不尽は無かったので問題無いですよ」
「そうですか。でもすごいですよヤマトさん! 統治官様の覚えがよくなったのは幸運です! 指名依頼も来るようになる事でしょう。お国からの依頼はミスが許されませんけど、その分報酬が良いですし」
「青いシロップが実現出来ない事がはっきりしたのは残念ですけどね」
キャシーには王家にまつわる極秘事項なので詳細は口外出来ないと説明した。
確かにリーゼス様が言っていたように、金の為によからぬ事を考える者が、俺が話してしまう事で出てくる可能性がある。
"ホーリーベリー"の情報は俺で止めておいた方がいいだろう。
「そうですね~……。あ、代わりに緑色はどうでしょうか? リーフルちゃんとお揃いでかわいいですよ」
「緑色なら候補の食材は豊富ですもんね。早速検討してみます」
リーフルを象徴とした緑のかき氷、確かにいいと思う。
果物屋に何かないか探しに中央広場に向かうことにした。
◇
「こんにちは、先日はどうも」
「あ、お兄さん。青い食べ物は見つかりました?」
「いえ、色々ありまして青色は諦めました。代わりに緑色にしようかと思って、何かありませんか?」
「鳥ちゃんと同じ色ですねぇ。連想して食べる時笑っちゃうかも」
クスクスと笑顔の店主のお姉さん。
なるほど、そういう意見もあるか。
(かき氷が『ホー!』……面白い)
俺も連想して笑ってしまう。
「ホ?」
「緑色でしょ~、このウーイなんてどうでしょうか」
提案してくれたのは"キウイ"とそっくりな果物。
確かにウーイなら綺麗な緑色のシロップが作れそうだ。
「いいですね。試してみようと思います。おいくらでしょうか?」
「三つで銅貨五枚です。アプルはいりませんか? 鳥ちゃんが欲しそうにしてるみたい。安くしときますよ」
店主はしたり顔でしれっとアプルも勧めてくる。
俺が動物に甘いと知っての事か、飼い主の心理を手玉に取る上手い作戦だ。
「ホーホホ(タベモノ)」
「……じゃあアプルも」
言いなりでは破産してしまう!──のだが、リーフルが欲しいと言うので結局買ってしまう。
(まずい、"ブルーハワイ"の事を説明しても信じてはもらえないし……)
「赤と黄色はすでにございます。緑も候補となりそうな食材は多数あります。一番再現が難しそうなのが青色かと思いまして、青を探しておりました」
「確かに。統治官である私でも、青い色の食べ物なんてホーリーベリーしか知らなかったのだから、もし青いシロップが作れたなら大いに衆目を集め繁盛するだろう」
間一髪、なんとかごまかせたようだ。
「私の軽率な興味が、街に不穏分子が存在すると誤解をさせてしまい、申し訳ございませんでした」
「呼びつけてしまって君には申し訳なかったが、国家の為だ、理解して欲しい」
「そんな! 滅相もございません。私もこの街ではまだまだ新参者ですから、気づかぬうちに何か法を犯していた可能性もありますし」
「……なるほど、君の事は大体理解した。監査員の言っていた話も本当の事か」
「監査員ですか?」
「君は獣人の村の調査を担当しただろう? その報告書を読んだ監査員が、君を高く評価していたのだよ『報告書の内容が、今までの冒険者とは段違いに優れている』とね」
「それは恐縮です」
書類仕事はサラリーマン時代にこなしていた事もあり多少自信があるが、他の冒険者が大雑把すぎる可能性も大きいと思う。
「君がこの街に来てもう一年経つと聞いた。少し遅れたが──ようこそ! 辺境都市サウドへ、我々は君を歓迎する。君は信頼出来る人間だと判断した、これからよろしく頼む、冒険者ヤマト」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
「ホー! (テキ)」
「そ、そうだなぁリーフル。リーフルもよろしくと言っています」
「あぁ──君もな、よろしく頼むよ相棒君」
どうやらリーフルは統治官様が嫌いなようだ。
俺にしか真意は伝わらないのが幸いだ、肝が冷える。
「今後、君に指名依頼を頼む事もあるだろう、その時はよろしく頼むよ」
「はい。光栄に存じます、努力してまいります」
何の罪で裁かれるのか、折角神様から貰った第二の人生もあっさり終わりかと本当に焦った。
"ブルーハワイ"の再現も、理由が理由だし、こんな大事になった以上諦めもつけやすい。
でもシロップの種類が増えるに越したことはないんだよなぁ。
何とか役所での尋問を乗り切った俺は、ひとまずギルドへ戻ることにした。
◇
「ヤマトさん! ご無事ですか!」
キャシーが俺の顔や腕をペタペタ触りながら確認してくる。
「大丈夫ですよ、ご心配をおかけしました」
「ホホーホ(ナカマ)」
「そうだね、キャシーさんは味方だ。リーゼス様も悪い人では無かったけど? 何が気に入らないんだ?」
「リーフルちゃん、役所で何かあったんですか?」
「それがですね……」
役所で何があったのか、事のあらましをキャシーに説明する。
「はは、肝が冷えましたよ」
「リーフルちゃん、ヤマトさんにベッタリですもんねぇ。それにしても、ヤマトさん怖くなかったんですか? 冤罪でそのまま……なんてことも、無いわけじゃないでしょ?
「確かに不敬罪で極刑というのは知らなかったので、恐ろしいと思いました」
「数少ない信頼できる冒険者のヤマトさんを失うのではと、ギルドでもみんな気が気じゃ無かったですよ」
「リーゼス様は統治官として職務を全うしただけですし、俺にもちゃんと説明させてくれましたし、理不尽は無かったので問題無いですよ」
「そうですか。でもすごいですよヤマトさん! 統治官様の覚えがよくなったのは幸運です! 指名依頼も来るようになる事でしょう。お国からの依頼はミスが許されませんけど、その分報酬が良いですし」
「青いシロップが実現出来ない事がはっきりしたのは残念ですけどね」
キャシーには王家にまつわる極秘事項なので詳細は口外出来ないと説明した。
確かにリーゼス様が言っていたように、金の為によからぬ事を考える者が、俺が話してしまう事で出てくる可能性がある。
"ホーリーベリー"の情報は俺で止めておいた方がいいだろう。
「そうですね~……。あ、代わりに緑色はどうでしょうか? リーフルちゃんとお揃いでかわいいですよ」
「緑色なら候補の食材は豊富ですもんね。早速検討してみます」
リーフルを象徴とした緑のかき氷、確かにいいと思う。
果物屋に何かないか探しに中央広場に向かうことにした。
◇
「こんにちは、先日はどうも」
「あ、お兄さん。青い食べ物は見つかりました?」
「いえ、色々ありまして青色は諦めました。代わりに緑色にしようかと思って、何かありませんか?」
「鳥ちゃんと同じ色ですねぇ。連想して食べる時笑っちゃうかも」
クスクスと笑顔の店主のお姉さん。
なるほど、そういう意見もあるか。
(かき氷が『ホー!』……面白い)
俺も連想して笑ってしまう。
「ホ?」
「緑色でしょ~、このウーイなんてどうでしょうか」
提案してくれたのは"キウイ"とそっくりな果物。
確かにウーイなら綺麗な緑色のシロップが作れそうだ。
「いいですね。試してみようと思います。おいくらでしょうか?」
「三つで銅貨五枚です。アプルはいりませんか? 鳥ちゃんが欲しそうにしてるみたい。安くしときますよ」
店主はしたり顔でしれっとアプルも勧めてくる。
俺が動物に甘いと知っての事か、飼い主の心理を手玉に取る上手い作戦だ。
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