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1-2 冒険者
第10話 帰還する平凡
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「ゼーゼー……っ──みんな無事か……」
疲れ果てたロットが顔を上げ皆の無事を確認する。
「なんとかなったな……」
「ロット大活躍」
「さすがに挟み撃ちは焦ったわね……」
「お疲れ様ですみなさん」
偶発的遭遇で魔物達と戦う事になった俺達だが、なんとか撃退しミミズクを救うことが出来た。
そういえばあのミミズクはどうなっただろうか、隙を見て逃げ出しただろうか。
「ちょっとあのミミズクの様子を見てきます。近くなのですぐ戻ります」
先程隠した木の下を確認しに行く。
「イタイ、ニゲル」
どうやら逃げ出す体力は残っていなかったようで、ケガを負っている左翼を広げ地面に伏せっている。
腰のもう一つの巾着袋から汗を拭うために持っている布を取り出し、応急処置として患部に巻き付ける。
「ニンゲン──! ニゲル……」
そりゃそうだ。先ほどまでローウルフに追われ、今度は人間に体をいじられているのだから怖いに決まってる。
加護のおかげで相手の気持ちを量ることは出来ても、こちらの意思は伝わらない。
なんとももどかしいが、そのうち伝えられるようになるのだろうか?
そもそもが不思議な能力である以上、パワーアップしないとは限らないはず。
「お待たせしました。ケガを負っていたようです」
ミミズクを抱き上げ、みんなの元に戻り報告する。
「ほんと、ケガしてるわねその子。だから飛んで逃げれなかったんだ」
「先程ヤマトさんはミミズクと言ってましたけど、フクロウとは違うんですか?」
「似てますけど厳密には違います。ほらここ、目の上辺り、ぴょこんと羽が生えてますよね? 羽角と言って、これのある無しで分けられます」
地球に居た時見たミミズクの羽角と比べて3倍ぐらい大きい気がする。
しかも右側にしか無く、生まれつきか欠損なのかわからないが地球のとは少し異なるようだ。
「それにしてもヤマト、お前記憶喪失になったって聞いてたけど、よくそんな事知ってるな」
「き、記憶を取り戻そうと色々勉強しまして──ハハハ……」
騙すつもりなどないが、誤魔化す度に罪悪感を感じる。
「そ、それよりも! これからは帰りなので、ブラックベアとローウルフは持ち帰りますよね?」
「ですね。またアイテムBOXお願いできますか?」
「わかりました。モギも含めて買取に出しておこうと思いますけど、どなたか付き添いをお願いできますか?」
「いらない。換金後に後日集合で良い」
ショートは案外俺を信用してくれているようだ。
「そうだぜ、もうクタクタだ、さっさと街に帰ってメシ食って寝てえ」
「その子はどうするの?」
「とりあえず回復するまでは俺が街で面倒見ようと思います」
「それじゃあ帰ろうか!」
無理をしない方針の俺からすれば、しっかりとした命の危機を感じたのは転移初日のスライム以来か。
未知の緑翼のみんなのおかげで難を逃れた俺は、ミミズクを抱えて帰路についた。
◇
「じゃあ明後日の夜、ギルドの酒場で待ち合わせましょう」
「今日は本当にありがとうございました。命拾いしました」
「ヤマトさんだって活躍してたわよ? 私の方こそ命拾いしたわ」
「雑談は明後日だ! メシだメシ!」
「挨拶は大事」
街へ着いた頃には陽も落ち、辺りを照らす街灯代わりの魔道具に火が入れられ、すっかり夜の雰囲気だ。
さすがに俺も慣れない仕事に疲れたので、早々に冒険者ギルドへ向かうことにする。
「あ! お帰りなさいヤマトさん。どうでした?──ってその鳥ちゃんは……?」
「色々ありまして……調査は無事終了しました。」
「そうですか……今日はお疲れでしょうし、書類を提出いただいて、詳しい話はまた後日で構いませんよ」
「ありがとうございます。それと、買取をお願いできますか? 預かってまして。少々量が多いので、カウンターの前に出しますね」
「ドサドサドサ」
収納していたモギと、撃退した魔物達をギルド内に放出する。
『なんだあの量……』 『ブラックベアが2体!?』
ギルド内に居た他の冒険者たちがざわついている。
「きょ、今日は随分大量ですね……」
「えぇ、もちろんほぼ全て未知の緑翼のみなさんの成果ですよ。俺はただの荷物持ちなんで」
『そういや荷物持ちもしてたなあいつ』 『そんな事だろうと思ったぜ』 『でもあんな大量に……』
わずかに聞こえてくる内容からして誤解は解けたようだ。
「査定には時間がかかるでしょうし、今日はこれで失礼します」
「は、はい。承りました。お疲れさまでした!」
用事を済ませ寄り道することなく宿へと帰ることにした。
「お帰り、ヤマトさん。今日は遅かったね」
「ただいまシシリーちゃん。今日は遠出だったんだ」
「わぁ鳥ちゃんだ。ケガしてるみたいだけど、どうしたの?」
「森で保護したんだよ。治るまでは俺が面倒見てやろうかと思って。宿的にはまずかったかな?」
「ん~問題ないよ。ヤマトさんが見るなら滅多なことはないと思うし」
「そう言ってくれて助かるよ」
1年の付き合いの賜物か。地球でもそうだったが動物を入れる行為は嫌がられる事が多いが、受け入れてもらえてよかった。
「食べてないでしょ? 夕飯はどう──部屋だよね。鳥ちゃんもいるし」
「うん、部屋に頼むよ。あと、生の状態で肉を一切れ用意してくれないかな?」
「鳥ちゃん用だね。わかった、後で持っていくね~」
迷惑料も含めて普段より多めに支払い部屋に帰る。
(しまった、止まり木が無い。まぁ伏せの状態の方が今は楽だろうし、明日以降考えるか)
部屋に備え付けのタンスの上にある、底の深めのパンを入れる籠に枕を入れ、その上にミミズクを寝かせてやる。
(こんな激動の1日は転移後初めてだな。それにこの子、治るかな)
イスに腰掛け、今日の出来事を思い出しながら一呼吸つく。
「コンコン──持ってきたよ」
シシリーが夕食を持ってきてくれたようだ。
明日は仕事は休みにして、ミミズクの世話をしよう。
疲れ果てたロットが顔を上げ皆の無事を確認する。
「なんとかなったな……」
「ロット大活躍」
「さすがに挟み撃ちは焦ったわね……」
「お疲れ様ですみなさん」
偶発的遭遇で魔物達と戦う事になった俺達だが、なんとか撃退しミミズクを救うことが出来た。
そういえばあのミミズクはどうなっただろうか、隙を見て逃げ出しただろうか。
「ちょっとあのミミズクの様子を見てきます。近くなのですぐ戻ります」
先程隠した木の下を確認しに行く。
「イタイ、ニゲル」
どうやら逃げ出す体力は残っていなかったようで、ケガを負っている左翼を広げ地面に伏せっている。
腰のもう一つの巾着袋から汗を拭うために持っている布を取り出し、応急処置として患部に巻き付ける。
「ニンゲン──! ニゲル……」
そりゃそうだ。先ほどまでローウルフに追われ、今度は人間に体をいじられているのだから怖いに決まってる。
加護のおかげで相手の気持ちを量ることは出来ても、こちらの意思は伝わらない。
なんとももどかしいが、そのうち伝えられるようになるのだろうか?
そもそもが不思議な能力である以上、パワーアップしないとは限らないはず。
「お待たせしました。ケガを負っていたようです」
ミミズクを抱き上げ、みんなの元に戻り報告する。
「ほんと、ケガしてるわねその子。だから飛んで逃げれなかったんだ」
「先程ヤマトさんはミミズクと言ってましたけど、フクロウとは違うんですか?」
「似てますけど厳密には違います。ほらここ、目の上辺り、ぴょこんと羽が生えてますよね? 羽角と言って、これのある無しで分けられます」
地球に居た時見たミミズクの羽角と比べて3倍ぐらい大きい気がする。
しかも右側にしか無く、生まれつきか欠損なのかわからないが地球のとは少し異なるようだ。
「それにしてもヤマト、お前記憶喪失になったって聞いてたけど、よくそんな事知ってるな」
「き、記憶を取り戻そうと色々勉強しまして──ハハハ……」
騙すつもりなどないが、誤魔化す度に罪悪感を感じる。
「そ、それよりも! これからは帰りなので、ブラックベアとローウルフは持ち帰りますよね?」
「ですね。またアイテムBOXお願いできますか?」
「わかりました。モギも含めて買取に出しておこうと思いますけど、どなたか付き添いをお願いできますか?」
「いらない。換金後に後日集合で良い」
ショートは案外俺を信用してくれているようだ。
「そうだぜ、もうクタクタだ、さっさと街に帰ってメシ食って寝てえ」
「その子はどうするの?」
「とりあえず回復するまでは俺が街で面倒見ようと思います」
「それじゃあ帰ろうか!」
無理をしない方針の俺からすれば、しっかりとした命の危機を感じたのは転移初日のスライム以来か。
未知の緑翼のみんなのおかげで難を逃れた俺は、ミミズクを抱えて帰路についた。
◇
「じゃあ明後日の夜、ギルドの酒場で待ち合わせましょう」
「今日は本当にありがとうございました。命拾いしました」
「ヤマトさんだって活躍してたわよ? 私の方こそ命拾いしたわ」
「雑談は明後日だ! メシだメシ!」
「挨拶は大事」
街へ着いた頃には陽も落ち、辺りを照らす街灯代わりの魔道具に火が入れられ、すっかり夜の雰囲気だ。
さすがに俺も慣れない仕事に疲れたので、早々に冒険者ギルドへ向かうことにする。
「あ! お帰りなさいヤマトさん。どうでした?──ってその鳥ちゃんは……?」
「色々ありまして……調査は無事終了しました。」
「そうですか……今日はお疲れでしょうし、書類を提出いただいて、詳しい話はまた後日で構いませんよ」
「ありがとうございます。それと、買取をお願いできますか? 預かってまして。少々量が多いので、カウンターの前に出しますね」
「ドサドサドサ」
収納していたモギと、撃退した魔物達をギルド内に放出する。
『なんだあの量……』 『ブラックベアが2体!?』
ギルド内に居た他の冒険者たちがざわついている。
「きょ、今日は随分大量ですね……」
「えぇ、もちろんほぼ全て未知の緑翼のみなさんの成果ですよ。俺はただの荷物持ちなんで」
『そういや荷物持ちもしてたなあいつ』 『そんな事だろうと思ったぜ』 『でもあんな大量に……』
わずかに聞こえてくる内容からして誤解は解けたようだ。
「査定には時間がかかるでしょうし、今日はこれで失礼します」
「は、はい。承りました。お疲れさまでした!」
用事を済ませ寄り道することなく宿へと帰ることにした。
「お帰り、ヤマトさん。今日は遅かったね」
「ただいまシシリーちゃん。今日は遠出だったんだ」
「わぁ鳥ちゃんだ。ケガしてるみたいだけど、どうしたの?」
「森で保護したんだよ。治るまでは俺が面倒見てやろうかと思って。宿的にはまずかったかな?」
「ん~問題ないよ。ヤマトさんが見るなら滅多なことはないと思うし」
「そう言ってくれて助かるよ」
1年の付き合いの賜物か。地球でもそうだったが動物を入れる行為は嫌がられる事が多いが、受け入れてもらえてよかった。
「食べてないでしょ? 夕飯はどう──部屋だよね。鳥ちゃんもいるし」
「うん、部屋に頼むよ。あと、生の状態で肉を一切れ用意してくれないかな?」
「鳥ちゃん用だね。わかった、後で持っていくね~」
迷惑料も含めて普段より多めに支払い部屋に帰る。
(しまった、止まり木が無い。まぁ伏せの状態の方が今は楽だろうし、明日以降考えるか)
部屋に備え付けのタンスの上にある、底の深めのパンを入れる籠に枕を入れ、その上にミミズクを寝かせてやる。
(こんな激動の1日は転移後初めてだな。それにこの子、治るかな)
イスに腰掛け、今日の出来事を思い出しながら一呼吸つく。
「コンコン──持ってきたよ」
シシリーが夕食を持ってきてくれたようだ。
明日は仕事は休みにして、ミミズクの世話をしよう。
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