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第66話 侵入成功?
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「……それで、あんたは後あたしが何をすれば満足して彼女を返してもらえるのかしら」
給仕されたティーを一口飲んだ後、ブルーは改めてクリアに追求した。
それに対し、クリアは簡単に纏めて返す。
「誘拐犯の荷車な時間内にあった物資を渡すか、ボクに直接調べさせてください」
「つまり、せっかくこの王城から離れたカフェで待ち合わせたというのに城に入れろって言いたいの?」
「別に城からボクの元に持ち出して来てもらってもかまいませんが。面倒でしょう?」
敵対宣言をした国側がまさかその相手を昨日の今日で招き入れることになり、さらに自分達の不手際の処理の手助けをされるなど、恥辱の極みだろう。
クリアにとってはこれはある意味、一番効率を求めた結果におまけでついてきた意趣返しになる。
クリアにも今回の件で思うところはある。
……別に、ある種の意趣返しになるのは望んでいた訳ではないが。
クリアは自分のコーヒーを飲み干すと、さらに続ける。
「どちらにせよ、王国側が抑えている彼らの物資の中に目覚めない被害者に対する処置の手がかりがあるはずです。彼らだって売買する女性が永遠に意識を取り戻さないのは……多分困るでしょう」
「多分」を付けたのは、取り引き相手がそういった趣味の持ち主がいる可能性が話している時に頭に浮かんだからだった。
だが、流石にあの人数を全員まとめて引き取る客がいるような感じではあの時の会話からして無いとクリアには思えた。
とにかく、クリアは一秒でも早く手がかりを自分の目で確認しなければ納得できないのだ。
「ブルーさんがいて犯罪道具の研究……少なくても用途や原理を解明できていない以上、ボクの【力】はかなり便利だと思いますが?」
「……はあ、わかったわよ」
クリアの言葉にようやく折れたブルーは、バツの悪そうな顔で返事をし残っていたティーを全て飲み切った。
「ただし、ちゃんと話は合わせなさいよ」
「もちろん」
ブルーの最後の恐らく自分自信をこれからの行為に踏み切らせるための言葉に、クリアは二つ返事で返し、席を立った——。
「おお、ブルー・ティア殿! お疲れ様です! ……そちらの方は?」
王城の門に着くなり、当然ではあるが門番からブルーに声がかけられた。
今は彼女は【水蒸幻影】を時、普段の仕事をしている姿に戻っている。
一方で、ブルーはクリアに【水蒸幻影】をかけその存在を博識そうな初老の研究員に見えるようにしてくれた。
この術式はやはり他人にもかけることができるようで、クリアはこの術式を後でこっそりと【解析】することに決めている。
「あの誘拐犯事件の被害者の回復を急ぐために、私の、昔のツテで術式関係の道具に詳しいこの人を連れて来たのです」
「どうも、ケミス・ラボランです」
クリアがいつもより低めの声を出して偽名で挨拶すれば、門番はブルーの紹介ならばと警戒もせず敬礼して挨拶を返して来た。
すぐさま門は開かれ、ブルーとクリアを通した後元通りに門は閉じられた。
城内のすれ違う人物に挨拶をしながらブルーの後を着いていくと、中に入ってからそれなりに歩いたところで目的の場所に到着したらしくブルーはある部屋の扉の前で足を止めた。
「物資はこの部屋の中よ。あの事件以外の物も保管されているからその辺りはあまり詳しく詮索しないでちょうだい」
扉には特に部屋名は記されておらず、どうやら押収した物を保管している部屋らしいことは部屋に入ってからクリアは理解した。
無造作ではないが、決して綺麗に整理されているといった感じでは無く。
恐らく新しく入ってきた押収品を置く机以外所狭しと物が棚や床に置かれているのが目に入ってくる。
「この机の上に置かれているので全部ですか?」
見覚えのある枷と、黒い壺のような道具、そして数枚の札のようなサイズの紙が置かれた机をクリアが指を差して聞く。
「そうよ。私は外から部外者が来ないか見てるから調べるなら早くして。……ちなみに変に物に手を出そうとしたら一発でわかるようになっているから変な気は起こさないでよね」
「しませんよ」
そうクリアが返せば、ブルーは言葉通り外に出て扉を閉める。
「……さて。一番怪しいのはやっぱりこの壺みたいなやつ、だよね」
見たこともないそれは、明らかに怪しい雰囲気を醸し出しているのだが、それ故下手に触れない。
そう思ったクリアは先に机の上にある紙を手に取り内容に目を通した。
「……これ、何かの暗号かな?」
紙にはなにやら見たことのない文字のようなものが記されていた。
どうやらブルーを含めなお道具の研究が進んでいないのは、この謎の暗号のせいだったようだ。
——確かに一日でこれを解読するのは難しいだろうな……。
とりあえず手当たり次第手がかりになりそうな言語や暗号の知識を頭から総動員させて当てはめて見るが、なかなかどれも解読には至らない。
——……あれ?
そういえば、とクリアは一つ思い出す。
ブルーからの報告書に、この暗号についてあの四人に確認したとは記載されていなかった。
——普通、答えないとしても一応は聞いてみるものじゃないか?
そうは思えど、クリアが回復させてからあの資料を作成するにはそんな時間も無かったかも知れないと思い直し、クリアは色々と思考を巡らせる。
そして——。
「……もしかして、ブルーさんはこれを見ていないか、記されていることを理解している?」
どちらにせよ、一度確認しなければ。
そうクリアが思い扉の取手に手をかける。
しかし、扉は微動だにもしなかった。
「……これはどういうつもりですか、ブルーさん?」
クリアの声に、ブルーからの返事は無かった。
代わりに聞こえたのは、城内に響き渡る『ディールーツ』社製のスピーカーからの王の声だった。
「城内に立ち入りしネズミよ。私に気づかれずに侵入できると本当に思っていたのか?」
クリアはその言葉を聞いて思ってしまった。
——これが本当にあの賢王と呼ばれたセインテッド・アーク・イクス王なのか?
給仕されたティーを一口飲んだ後、ブルーは改めてクリアに追求した。
それに対し、クリアは簡単に纏めて返す。
「誘拐犯の荷車な時間内にあった物資を渡すか、ボクに直接調べさせてください」
「つまり、せっかくこの王城から離れたカフェで待ち合わせたというのに城に入れろって言いたいの?」
「別に城からボクの元に持ち出して来てもらってもかまいませんが。面倒でしょう?」
敵対宣言をした国側がまさかその相手を昨日の今日で招き入れることになり、さらに自分達の不手際の処理の手助けをされるなど、恥辱の極みだろう。
クリアにとってはこれはある意味、一番効率を求めた結果におまけでついてきた意趣返しになる。
クリアにも今回の件で思うところはある。
……別に、ある種の意趣返しになるのは望んでいた訳ではないが。
クリアは自分のコーヒーを飲み干すと、さらに続ける。
「どちらにせよ、王国側が抑えている彼らの物資の中に目覚めない被害者に対する処置の手がかりがあるはずです。彼らだって売買する女性が永遠に意識を取り戻さないのは……多分困るでしょう」
「多分」を付けたのは、取り引き相手がそういった趣味の持ち主がいる可能性が話している時に頭に浮かんだからだった。
だが、流石にあの人数を全員まとめて引き取る客がいるような感じではあの時の会話からして無いとクリアには思えた。
とにかく、クリアは一秒でも早く手がかりを自分の目で確認しなければ納得できないのだ。
「ブルーさんがいて犯罪道具の研究……少なくても用途や原理を解明できていない以上、ボクの【力】はかなり便利だと思いますが?」
「……はあ、わかったわよ」
クリアの言葉にようやく折れたブルーは、バツの悪そうな顔で返事をし残っていたティーを全て飲み切った。
「ただし、ちゃんと話は合わせなさいよ」
「もちろん」
ブルーの最後の恐らく自分自信をこれからの行為に踏み切らせるための言葉に、クリアは二つ返事で返し、席を立った——。
「おお、ブルー・ティア殿! お疲れ様です! ……そちらの方は?」
王城の門に着くなり、当然ではあるが門番からブルーに声がかけられた。
今は彼女は【水蒸幻影】を時、普段の仕事をしている姿に戻っている。
一方で、ブルーはクリアに【水蒸幻影】をかけその存在を博識そうな初老の研究員に見えるようにしてくれた。
この術式はやはり他人にもかけることができるようで、クリアはこの術式を後でこっそりと【解析】することに決めている。
「あの誘拐犯事件の被害者の回復を急ぐために、私の、昔のツテで術式関係の道具に詳しいこの人を連れて来たのです」
「どうも、ケミス・ラボランです」
クリアがいつもより低めの声を出して偽名で挨拶すれば、門番はブルーの紹介ならばと警戒もせず敬礼して挨拶を返して来た。
すぐさま門は開かれ、ブルーとクリアを通した後元通りに門は閉じられた。
城内のすれ違う人物に挨拶をしながらブルーの後を着いていくと、中に入ってからそれなりに歩いたところで目的の場所に到着したらしくブルーはある部屋の扉の前で足を止めた。
「物資はこの部屋の中よ。あの事件以外の物も保管されているからその辺りはあまり詳しく詮索しないでちょうだい」
扉には特に部屋名は記されておらず、どうやら押収した物を保管している部屋らしいことは部屋に入ってからクリアは理解した。
無造作ではないが、決して綺麗に整理されているといった感じでは無く。
恐らく新しく入ってきた押収品を置く机以外所狭しと物が棚や床に置かれているのが目に入ってくる。
「この机の上に置かれているので全部ですか?」
見覚えのある枷と、黒い壺のような道具、そして数枚の札のようなサイズの紙が置かれた机をクリアが指を差して聞く。
「そうよ。私は外から部外者が来ないか見てるから調べるなら早くして。……ちなみに変に物に手を出そうとしたら一発でわかるようになっているから変な気は起こさないでよね」
「しませんよ」
そうクリアが返せば、ブルーは言葉通り外に出て扉を閉める。
「……さて。一番怪しいのはやっぱりこの壺みたいなやつ、だよね」
見たこともないそれは、明らかに怪しい雰囲気を醸し出しているのだが、それ故下手に触れない。
そう思ったクリアは先に机の上にある紙を手に取り内容に目を通した。
「……これ、何かの暗号かな?」
紙にはなにやら見たことのない文字のようなものが記されていた。
どうやらブルーを含めなお道具の研究が進んでいないのは、この謎の暗号のせいだったようだ。
——確かに一日でこれを解読するのは難しいだろうな……。
とりあえず手当たり次第手がかりになりそうな言語や暗号の知識を頭から総動員させて当てはめて見るが、なかなかどれも解読には至らない。
——……あれ?
そういえば、とクリアは一つ思い出す。
ブルーからの報告書に、この暗号についてあの四人に確認したとは記載されていなかった。
——普通、答えないとしても一応は聞いてみるものじゃないか?
そうは思えど、クリアが回復させてからあの資料を作成するにはそんな時間も無かったかも知れないと思い直し、クリアは色々と思考を巡らせる。
そして——。
「……もしかして、ブルーさんはこれを見ていないか、記されていることを理解している?」
どちらにせよ、一度確認しなければ。
そうクリアが思い扉の取手に手をかける。
しかし、扉は微動だにもしなかった。
「……これはどういうつもりですか、ブルーさん?」
クリアの声に、ブルーからの返事は無かった。
代わりに聞こえたのは、城内に響き渡る『ディールーツ』社製のスピーカーからの王の声だった。
「城内に立ち入りしネズミよ。私に気づかれずに侵入できると本当に思っていたのか?」
クリアはその言葉を聞いて思ってしまった。
——これが本当にあの賢王と呼ばれたセインテッド・アーク・イクス王なのか?
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