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あなたは私のお兄ちゃんじゃないのに

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八雲君にはペット(彼が言うには相棒)がいた。

柴犬で名前は茶一ちゃいつ

とても愛嬌があって、とても人懐っこい。

その懐っこさは八雲君とは違って曇りのないものだ。

だから私が茶一の散歩を買って出ても、茶一はしっぽぶんぶんでリードを力強く引っ張っていった。

そんな楽しくやってきた四月。

私は小学校のときからの友達三人と無事同じ高校に入学できた。

一人目は夕顔ゆうがおしずるちゃん。

小学校のときから勉強は学年トップで、早くも学級委員長に抜擢されてる。

ちょっと自分の気持ちに鈍感なところがあるから本当は無理してるんじゃないかって心配だ。

二人目は染元素直そめもとすなおちゃん。

おしゃべりはあまり得意じゃないけど、お家が剣道の道場なだけあってその道を極めてるプロ。

中学生のときにはそれでスリを退治して警察から表彰されてる。

三人目は宮川陽華みやかわはるかちゃん。

いつもSNSを追いかけてて、流行りの食べ物やファッションを教えてくれる。

それでいていつもテンション高いパリピな感じじゃないから付き合いやすい子。

意外と私達四人のなかではいちばん大人かもしれない。

そんな私達が和気あいあいと机をくっつけてお弁当を広げていると。

「お邪魔していいかな」

なんと八雲君がそう言って私たちの方へ。

「どーぞどーぞ」

と完全に歓迎ムードなのは陽華ちゃん。

さすが面食い。

でも私にとって八雲君の顔はみると胸の奥をチクリとさせるものだった。

彼の顔は五歳のときに肺炎で死んだ双子の兄・すぐるを思い出させるからだ。

お兄ちゃんの笑顔はにっこにこであったかくて。

一方で八雲君の笑顔は慇懃無礼で嘘くさいのに。

私は八雲君に死んだお兄ちゃんの面影を重ねてる。
 
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