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仲間なんて俺は知らない

俺、怖がられてる?

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「これが、毒を分析した結果なんだけど…。」

俺のスキル
存在経緯の発露バースバックグラウンド』と『万物の記憶サイコメトリー』で、毒の成分の分析、そして矢自体の記憶を読み取って、敵の詳細な情報を得、そして万一に備えて、毒の対策を一考していた。

「分析結果も、ステータスみたいに表示できるんですね…すごい…。」

「『カオスドルガ』の牙の毒か…毒性は強いし、しかもとんでもなく希少なモンだよ。血清を用意するのは、難儀だろうね。
ただ、確かフロル草で効果を和らげることができる、って聞いたことあるね。」

「はい、師匠。」

「フロル草、薬屋で売ってる。用意、しとこ。」

我ながら、細かいことまでよくわかるもんだ。まぁでも、異世界なのに
「サソリの毒だ」とか、フツーなこと言われなくてよかった。蛇とかサソリとかだったら、やっぱりここはヨーロッパだろって思うところだった。


「で、肝心のアジトの情報がコレ…。」

「文章化だけじゃなく、マッピングに…何だいコリャ?!映像まで出てくるのか?!」

宙に浮かぶウィンドウの群れ。
必要な情報が事細かに文章として表示され
その中の一つに、矢の持つ『記憶』、つまり俺たちを襲った者の『足取り』を辿った結果、所持者が出入りしたと思われる建築物の全景が映し出される。

「ここがアジト、かな。どれどれ。
3番通り、50番地…。海沿いの、倉庫みたいだな。」

「こんなこと、まで、わかる、すごい。
勇者様、この後、どうする?」

アミアに問いかけられ、俺はウィンドウを全て閉じた。

「ん。場所も分かったから、転送魔法使っていつでも攻め込めるしな。
焦らなくていいんじゃない?
もう少し、ここでゆっくりしてようよ。そうだなぁ、夕方…あれがこの世界の時計だよね?あれの針が、1番下に来た時にチャチャっと行こうぜ。」

俺は、壁にかけてあるこの世界の鳩時計らしきものを指差し、そのまま冷たいデザートを頬張る。甘ぁい。

この短時間でここまで情報を出したからか、みんなの俺を見る目が普段と違って見える。
驚きと尊敬、あとは…人によっては畏怖もあるだろうか。
何にせよ、俺を見る目が良くも悪くも変わったのは確かだ。

「で、でも本当に大丈夫ですかね…。罠っていう可能性も、あるんじゃ…。」

ミレットが、オドオドしながら口を開く。かなり怖気付いているようだ。

「無くはないだろうけどさ。この世界って、スキルとか魔法で追跡されること、よくあるの?あるなら罠なんじゃない?
無いなら、そんなこと考えてもいないはずだけど。」

「こんな追跡スキル、聞いたこと、ない。勇者様、だけ。」

「そ、そっか。それなら、安心ですね。」

「…大丈夫か?ミレット。顔色悪いぞ?
無理しないで、休んでれば?」

余裕ぶっこく俺たちに対して、震えが止まらない様子のミレット。
先ほどの一件で、恐怖心を大いに掻き立てられているに違いない。

「す、すみ、ません…そうさせてもらいますね…。このままじゃ私、お役に立てそうにありませんし…。」

そう言うと、ミレットは少しだけ安堵を浮かべた気がした。
俺たちはというと、約束の時間までは情報収集をしつつ今日の宿探し、そこでミレットには待機してもらう、ということになったのだった。

…が。
食堂の店主さんが宿屋を紹介してくれたおかげで、すんなり事が運んだ。
みんな良い人すぎる。
そんなこんなで、俺たちは宿屋に場所を移し、ダラダラしていた。

「なんか、決めた時間までだいぶあるな。どうする?行っちゃう?もう。」

「え?もうですか?!私、心の、準備が…。」

「アンタは待機だろ、何バカなこと言ってんだい。」

「じゃ、ミレットの部屋、安全確認したら、行こ。」

やる気満々な俺たち。
それに反して、怯え続けるミレット。
武芸者の第六感か何かかな。

「わ、わかりました…。あ、あの…気をつけて行ってくださいね…。」

俺たちはミレットを部屋まで見送り、施錠したのを確認し、宿屋を後にした。


…その、ほんのわずかな間の出来事だった。

ガシャアーーーン!!

「キャァーーーーーーーーッ!!」

ガラスの割れる音と、ミレットの悲鳴が聞こえてきた。
それを聞き、俺たちは急いで宿屋へと引き返し、ミレットの部屋の扉を開ける。

…荒らされた形跡は無い。ただ、窓が外からブチ破られているのみだ。

「…ミレット!」


見ると、テーブルの上に乱雑な字で記された脅迫文が、割れた窓ガラスで突き刺さっていた。

「娘は預かった。返してほしくば、勇者を縛り、今日の深夜2の刻に、1番小さな娘が4番街20番地まで連れて来い。」
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