LARGE NUMBER SQUAD

エルマー・ボストン

文字の大きさ
上 下
3 / 18
第一章 ラージナンバースクワッド、活動の記録

参謀・本間 善太の奮闘

しおりを挟む
この世には、ただそこにいるだけで貧乏くじを引いてしまう、哀れな人間がいる。

ラージナンバースクワッド参謀、
本間 善太ほんま ぜんたもその1人だ。

29歳、独身。
両親は既に亡くなり、歳の離れた妹と2人暮らし。
身長196cmの巨体、そしてガチガチの体格は、そこにいるだけで周囲を圧倒する。

しかし、「気は優しくて力持ち」を地で行く男。
それが善太である。

増えすぎた人件費の削減対象に、管理職にも関わらず自らをすすんで追加し、部下の給与水準を下げまいとしている、そんな日々だ。

正義と平和、妹と一茶子を誰よりも愛している。


「(我々の仕事は、異能犯罪から人々を守り、少しでも長く平和を保つことだ。
だから、怪人、特に凶悪で強力な者が出ないのはいいことだ。

いいこと、なのだが…!)」


自分で自分の給与を減らしたものの、育ち盛りの妹の食費は減らせるわけがない。
善太は、迷わず自らの食費を削っていた。

「流石に、腹が減ったな…。」

善太は、削減から向こう1ヶ月、ほぼタンパク質と水分のみで生きていた。
食の楽しみといえば、カロリーメイトを1度に4本全て食べることである。

今日は非番。空腹を紛らすため、必死に自宅で筋トレをしていた。
中学生の妹には心配させまいと、普段は
「食べて帰る」と伝えてある。
嘘ではない。
だって帰りに、買い貯めしてあるカロリーメイトを食べているのだから。

が、善太の胃袋には今、限界が来ていた。無論、心にもだ。

「(1ヶ月…プロテイン以外を口にできないのがこんなに辛いとは…甘くみていた…。
カロリーメイトも大好きだが…オンリーはキツい…。猛烈に、ジャンクなモノが食べたい…。)」

腕立ての手が止まる。

「(そ、そうだ。手持ちは2000円くらい。給料日まで1週間…。ムクロナルドでハンバーガー数個買うくらいの余裕はある。今日だけは…問題ないはずだ!もうすぐ茜も帰ってくるし…茜の分も買って来よう!うむ!)」

思い立ったらすぐに行動に移す男。
それが善太である。
善太は汗だくのまま、サッと外用のタンクトップに着替える。
向かうはムクロナルドだ。


一方その頃。


「こちらコーラル1!ダメです!我々の武装では歯が立ちません!」

「何?15人がかりで『解除』されないということは…。既にフェーズ3に入っているということか。」

名も無き部隊長が、一茶子に通信を送る。今回の相手は、いつもより少しばかり強力なようだ。

「ほっほほほほ。清々しい気分です。
スカラー線に、私は選ばれた!
この力、この昂り!私こそ地球の王!
今から『帝王・コレイゾン』と名乗ることにしましょう!」

「し、司令!こ、これがフェーズ3なのですか…我々の隊は、フェーズ3と対峙したことがないため…くっ!なんて凶悪な物言いなんだ!」

「コーラル1、落ち着け。だいたい皆そんな感じだろう。」

スカラー化の件数自体が減ってきているばかりか、スカラー汚染の危険値、つまり「フェーズ」の高い怪人が現れる件数も比例して減っている。つまりは、現場の末端がそれに対処する機会も、激減しているのだ。

「フェーズ3では『スカラーブレイカー』も効果が薄いか。よし、『スクワッド』に出動要請。基地内にいる者は?」

「基地内、ルーキーの志藤隊員、遠藤隊員が訓練中です。あとのメンバーは…
皆、ボーリングをしに行ったようです!」

「くそっアイツら!普段は
『事件が無くてヒマすぎる、身体が鈍る』
とか散々言ってるくせに!!」

『スクワッド』とは、スカラー線の影響で『異能』を発現させ、常人よりも遥かに強い者たちの総称である。そのため、一般部隊が手に負えない相手の対処は、スクワッドが行なうことになる。
ただこちらも増えすぎたため、現状かなりの人数がいる。にも関わらずヒマなので、皆基地内待機に飽きてしまっているのだ。


「ルーキー、特にその2人はまだ日が浅い。対処は難しいだろう。
仕方がない…現場に最も近い『スクワッド』に要請を出せ!」

「了解!…サーチ完了!

…本間参謀ですね…。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...