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嵐の訪れ2

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 それからは世間話やルーシーの生活などで話が弾んだ。初めて友人ができるかもしれないと胸が高鳴るアデルに、ルーシーは熱く告げた。


「よければ、今回のことをインタビューさせてもらえませんか? もちろん記事のチェックはしていただきますし、書いてほしくないことは書きません!」
「パーティーのことを記事に?」
「はい! アデル様が悪女じゃないことを知らしめるんです!」


 ルーシーの提案は悪くないものだった。
 テオバルトの冤罪を晴らしたいアデルの一番大きな壁が、アデルの悪評なのだ。


「……いいえ、駄目ね。王族のパーティーを勝手に記事にするなんて、下手したら新聞社が潰されるわ」
「えっ……!?」
「王太子の生誕パーティーなのよ? トラブルがあったなんて、参加者以外に知られたくないはず」


 それに万が一アデルの評判がよくなったら、カミーユの婚約者になってしまう可能性がある。
 婚約解消ですら良く思われない貴族社会だが、犯罪者とされているテオバルトから王太子のカミーユに乗り換えるのであれば、反対意見も出ないだろう。ここぞとばかりに王家が仕掛けてくるかもしれない。
 お見舞いに来たアランやベルナールも、同じようなことを心配していた。


「ルーシー様にそう言ってもらえて、とても嬉しいわ。でも私は、もう少し自分の力で頑張ってみたいの。ルーシー様や新聞社の方たちみたいに、本当の私を見てくれる人がいると、今なら思えるから。テオバルト様の冤罪が晴らされた時は、記事にしてくださる?」
「もちろんです! 私たちに出来ることがあれば何でも言ってください。アデル様の力になりたいんです!」
「本当に嬉しいわ、ありがとう! それなら、一つ頼みたいことがあるの」


 アデルが頼んだのは、テオバルトの裁判で証言した人物を探すことだった。クレール商会は独自の情報網を持っているが、新聞社はまた違うものを持っているはずだ。


「証言した人たちは、全員行方不明になっているの。身分的に隠れるのなら平民に混じっているだろうけれど、もしかしたら……」
「わかりました、お任せください。うちは死体にも詳しいんです!」


 言い淀んだアデルとは対照的に、ルーシーはあっけらかんとしていた。
 ルーシーにかかれば、事件も大したことがないように思えてしまう。


「今度から、薔薇の封蝋で手紙を送ってくれる? きちんと私に届くようにしておくから」
「わかりました! また来てもいいですか?」
「ええ、もちろん!」
「よければ私のことはルーシーと呼んでください!」
「わかったわ。……私のことを、アデルと呼んでくれるのなら、そうする」
「わかりました、アデル!」


 迷うそぶりを一切見せずアデルを呼び捨てにしたルーシーがあまりにルーシーで、アデルは前世を思い出して初めて声を上げて笑った。 



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