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第五章 影の者たちとケモナー

棒神様にならって

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 俺は腕を組んで仁王立ちをしている。
 白衣も着込んでまさに研究者らしい姿だろう。

「では、助手のケルン君。例の物をだしてくれ」

 助手のケルンに声をかければ手をあげて返事をした。

「はい、ハカセ!…例の物ってなんだっけ?」
「木片だよ。この前取っておいた」

 気が抜けた。研究者の格好を俺はしてみせているがごっこ遊びの延長みたいなもんだ。

 ケルンは猫の尻尾つきの作業着だ。なんだか知らない間にパワーアップしていて、ただの猫耳から、モコモコふわふわ猫耳フードがついている。フィオナに感謝の手紙を即送った。

「猫さんです、にゃん!」

 って嬉しそうにやっていたが、外でやるなよ?変態に捕まったら大変だからな。間違いなく変態はあの手この手で、この世から消すけど。
 サイジャルがこの地図から消えるよりマシだろう。ナザドならやりかねないからな。

 このごっこ遊びは意外とケルンが気に入っている。博士が何かわかっていないけどな。

 授業でもこうして手伝ってもらうこともあり、ハトルゥエリアさんの弟子のドルチェリさんこと、通称ドルさんがいっていた。

「歳が離れていると喧嘩しなくていいですね」

 ドルさんのとこは、歳が近いから喧嘩ばかりだそうだ。
 見た目はエルフな彼いわく、彼のように見た目がエルフであろうと、中身としては混血が進んでいて…少しイメージと違って彼と同じようにエルフの血が強い他の兄弟は漁師になっているらしい。
 しかも兄弟には獣人の人もいるとかで、彼の婚約者も獣人らしい。

 つまりは同士である。
 ドルさんの婚約者さんはトカゲ系らしく、八割方人族で腕に鱗があって、尻尾が生えているそうだ。今作っている物が成功したら結婚をすると意気込んでいて、徹夜組の常連でもある。ほどほどにさせたいが…無理だな。みんなの目が変わっているし。
 一応、組分けをしていて統括の『エフデ班』にドルさんをいれていたんだが…彼、手が早いというか、色塗りがすごい上手いから引っ張りだこなのだ。

 修羅場のことは置いておこう。

 寿命が長いからか、親子ほど離れた兄弟とかはざらにいるらしい。
 確か…百歳も歳が離れている兄弟とかも普通とか。
 孫ってレベルじゃね?って思ったりもしたけどな。

 ちなみに、ケルンの作業着は授業中も着ることがある。

「今日の僕は猫さんです、にゃー!」

 なんていって、授業中でもにゃーにゃーいうもんだから…変なファンができている。

「ケルン君ー!こっち!こっちに視線ください!」
「おおおお!偉大なるボージィンは精霊を使わした!」
「手がとまんねぇ!」
「個展だ!個展を開くぞぉぉ!」

 いや、邪な気持ちは一切ないのはわかっている。エフデの弟だからな。手を出したら色んな意味で死ぬし、彼らは理想のモデルに出会えて感動しているらしい。
 本当は母様を描きたいらしいが、画力が追いつけないとかで諦めているとか。
 なんでもサイジャル内にあるらしい『エフデ様とケルン君を守る会』を『エフデ班』の全員が加入しているとか。
 それをミルデイがどこからか聞いてきたのを聞かされて思った。

 心配だ。

「…自衛だけじゃなく、ケルンも守らねば」

 変態を始末できる程度には力を上手く使いこなさないといけないな。

「それじゃ、お兄ちゃんは僕が守るよ!」
「ははっ、ありがとうなー」

 今日の絵のモデルにした猫じゃらしを振ってみると、猫ごっこが始まった。
 十分ほど遊んでいてふと、作業をしていないことに気づいて作業をすることにした。
 白衣は汚れるから脱いで俺は作務衣スタイルになる。フィオナにどちらも縫ってもらったが、作務衣って楽なんだよな。指はなくても着れるっていうのは、念動力でも働いているってことにしている。
 実際、目とか口もなくても感じれるしな。

 さて、今回作る品は俺専用の杖…といいたいところだが、『地脈操作』は杖じゃなくてもいい。

 本に書いてあった知識だけだが、元々、地脈は自分を道標にして大地に流れる『気』を使って術を行使するらしい。魔術とかの領域であり、魔法とは少し異なる。相手を呪ったりとかもできると書いてあったがそういう外法はいらないし、誰も教えれない。
 しかも魔法陣と魔法円では理が違うとかで…とても複雑だからこそ誰かに弟子入りをした方がいい。

 そこで俺は考えた。
 最初にいくつか魔法を留めておけるように『気』を使えないだろうかと。
 結界とか防御というものは、『固定化』が関わっていると俺は思っている。その場に入らせない出させないという場の『固定』と防御力をあげて刃物などを通さないという物体の『固定』だ。

 古竜王の涙石に魔法が込められていることや、魔石の自然魔法のことを考えていると、自然にある物や『気』に関わる存在は物質に魔法を『固定』させれるんじゃないかな。
 なにせ、地脈は竜脈ともいうらしいし…竜なら上級の魔法を込めた魔石を作れるかもしれない。

 まぁ、かなりの年月がいるのも考慮して、今は魔石に『気』をためれないかの実験をしている。そういう研究者の論文も読み漁っている。
 この体の利点だ。ケルンが眠くならなくていいから、好きなだけ本が読める…ほとんど俺の自由時間はないけどな。

 暇さえあればケルンがミケ君たちのところに俺をつれていくからな。
 そういえば、あの子たちとも仲良くなったから俺の呼び方が変わった。メリアちゃんはそのままだが、ミケ君はエフデ殿からエフデ義兄上、アシュ君はエフデさん、マティ君はエフデ兄やんだ。
 普通の子みたいに接していたら自然に懐かれていた。
 長男ばっかりだったから、甘えたかったのかな?それかケルンに影響されたかのどっちかだな。

 守んなきゃいけない子たちが増えてしまったからな…みんなかっこいいし、かわいいから心配になる。いざというとき、俺が守れるようにしようと再度心に誓う。
 そう思ってどうにか地脈誘導で気を込めれるように図案を書いているんだが…気に入らない。

「ただ、マッチか鉛筆みたいなんだよなー…かっこわりぃ…」

 使えるかと用意した魔石は地脈にある気というものを考えて無属性の物を使う。何も染まっていない魔石とかなら使えるだろうし。
 でもどこに置くかいまいちいい場所が浮かばない。こうなったら、先に土台を作るか。

「彫刻刀を貸してくれ。あと木片も」
「はーい」

 ケルンから彫刻刀を借りる。俺も使えるがやはり、借りている感じがする。

 木片は杖作りで樹木さんから出た残りだ。勿体ないなってとっておいてよかった。
 なお、現在杖になっている樹木さんからの許可はもらっている。

 ケルンが杖を置いて休憩しているときにたずねたのだ。

「この前のさ、杖作りで削って出た樹木さんの木片使っていい?」

 葉先は丸をしたし、気のせいなんだろうけど。

「いいっすよ!頑張ってくださいっす!」

 っていってるように見えた…俺、杖と意思疎通できる知識は持ち合わせてねえんだけど、幻聴かな。
 あと、葉先が杖の一部をこすってだした樹液もくれたから使おうと思う。わざわざくれたんだからな。

 加工したのに樹液をだすとか、削ったときには出てなかったよなとか、気泡もなく琥珀のようになっているとか、気になるがもう、ケルンの杖のことは気にしていない。慣れってこわいな。

「はい、どーぞ!…お兄ちゃん、その綺麗なのどうしたの?」
「ん?…もらった」

 お前の杖からな。
 手に転がしているこいつをどう加工していくか…そもそも地脈からの気をどう流すか。
 そう考えていると不思議と琥珀が光って見えた。

「ケルン。光ってるよな?」
「キラキラしていて虹みたいだね…お兄ちゃん何かしたの?」

 どうやら本当に輝いているらしい。

「いや、どうやって気を流すかって…あ」

 そうだ。琥珀は樹液が長い年月で化石となった…宝石じゃねぇか。
 うっかりしていた。

 魔石にこだわっていた…そうだよ。こだわってどうすんだよ。俺が杖を持っても意味ねぇんだよ。

「棒神様がいってたじゃねぇか…そうだよ」

『灸をすえてやった。この手でな』

 棒神様も拳でお灸をすえてたじゃねぇか。なら俺も変態共にお灸をすえれるようにすればいい。
 拳でな!

「作るもん決まった!ケルン、一緒に作るぞ!やっぞ!」
「やっぞぉ!」

 そうして二人でわいわいと作りだした。
 お茶を持ってきたミルデイから口調に関しては注意を受けてしまったけどな。
 小さな子はすぐ真似をするんですよ?といわれ、エセニアにも報告するといわれた。
 謝罪の手紙はナザドに即渡さねなならないな。絶対に怒るだろ、エセニアは。


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執筆中に王国心が邪魔をするのです。鍵をみると高鳴るのです。
十三年ぶりの新作なのです…購入はしていないんですが放送多すぎなんですよ…
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