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第五章 影の者たちとケモナー
思春期かよ
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俺はこの人たちに受け入れられた。それがわかったから他には何もいらない。
変な称号を得たみたいだけど、今までは告知もなかったのに…変な話だ。
「お兄ちゃんってば照れてる」
「照れてねぇよ」
恥ずかしいってのは…ほんのちょっとあるぐらいで、そんなにはない。
とりあえず…用件は終わったんだし午後から体験講義にでたいな。
「おい、ケルン」
「うん!」
ケルンが母様から離れて俺を持ち上げようとしたときだった。
「それじゃ、エフデは屋敷に連れて帰りましょう。せっかく体をもらえたんですもの。私とも一緒に寝ましょう?そうだ。明日はピクニックでも行きましょうね」
いきなり母様がそういって俺を持ち上げた。
ケルンがぽかんとしている。俺も同じようにしている。え?母様は今なんっていったの?
「おいおい。エフデは立派な長男なんだぞ?大人の男だ。だから…夜通しで男同士の語り合いの方がいいだろ?なぁ?とびっきりの酒もあるんだぞ?お前と飲もうとずっと置いてあったんだ。もう成人の年齢にはなってるんだから、飲んでもいいだろ?」
「たぶん、飲めるけど」
飲んだことはないけど、この体なんだし飲めなくはない。
「もちろん、ケルンのときのも用意してあるが、まずはエフデとだ」
なんといって、屋敷に帰ろうと用意をはじめだした。
いや、ちょっと!
「ま、待ってください!俺の体は思念石といって、サイジャルからの持ち出しは禁止されているんです!あくまで借用しているだけなんで」
学長先生からも条件の一つとしていわれたのだ。サイジャルの外へと許可も得ずに出てはいけない。基本的には外出不可だと思ってほしいと。
思念石が貴重だから盗難にあうと困るらしい。俺はその条件を飲んでいた。
「あら?…ねぇ、ティス。いくらぐらいいるかしら?なんだったら、私も『死人事件』のときの債務が残っているから徴収してくるわ…大金貨二千万枚ならなんとかなるわよ」
「そうだな…あのババア…学長が首をふりそうなもの…家宝の品とか渡そうか。エフデの体のためならご先祖もお許しくださるだろう。なんなら、初代様の杖でもいいぞ」
父様と母様の会話が色々と怖い。大金貨二千枚とか小国の国家予算だ。
あと父様もさらっと初代のご先祖様の杖を渡すとかいっているけど、それってこの世界で最初の杖なわけで…歴史的価値はどれほどなんだろう。
「お兄ちゃん、こっち!」
「すまん。抜けれない」
ケルンが手を伸ばしているが母様が渡そうとしない。わかっていてしている。いつもはそんなことをしないのに。
「とりあえず、なんとかしてみせるわ」
「私もだ。息子の体を奪わせなどさせん」
いや父様。これ借り物なんだって。
「とりあえず、連れて帰ろう」
「若様のお部屋をお掃除せねばなりませんね」
カルドも止めないとか!おい、黙ってないで止めてくれよ!
「だ、だめ!」
助けを求めた相手ではないが、ケルンが母様にすがる。
「お兄ちゃんは僕と一緒なの!」
「だめよ…それはお互いつらくなるわ」
ケルンの願いを初めて母様が断った。
俺たちが驚いていると父様が「いいか?」とケルンに、目線を合わせる。
「一緒にいたいのはわかる。だがな…エフデはみての通りだ。誰かに狙われるかもしれないぞ?」
父様のいい分は確かにそうだ。
思念石。棒神様のような棒人間の姿。そのうえエフデということが知られている。
あくまで、通信器具のような物に思われても、体自体が価値がある。
俺だけでなく、ケルンが危険な目に遭うかもしれない。母様の懸念はそこだろう。
それでも俺たちにもいい分はある。
「でも!…でも、一緒にいたもん…ずっと…」
ケルンだってわかっている。ケルンなりに俺を守りたいのだろう。
まったく。こんな小さい子にいわせるなんてな…いや、俺の方が小さいか。
「あ、あの!」
声をかければ母様の腕の力が抜けたから、そのままケルンの元へと飛び込んだ。
「お兄ちゃん!」
「おう。待っとけよ」
軽く話をして、俺の気持ちを二人に伝える。
「できれば、俺もケルンと一緒にいたいです!ケルンは少し天然なんで、ほっとけないんです!」
何をするかわからないし…俺も気になるし…だったら一緒にいるのがいい。
「お願いします!…父様!母様!」
初めて二人を呼べば二人は仕方ないかと笑う。
「ふふ。やっばりね…うちの子たちのわがままって、なんでこんなにかわいいことしかいわないのかしら?」
「わがままといっていいのだろうか?」
「そうね…兄弟そろっていい子に育っているわ」
二人が俺たち目線を合わせる。ケルンは俺がとられると思ったのか強く胸に抱くから苦しい。朝飯が出るからやめてくれ。
「エフデ。約束しなさい。ケルンをしっかりと見守るんだ…あまり発明や無茶はしないんだぞ?とくに作ってからじゃなく、作る前に相談しなさい。心臓に悪いから」
「ケルン。お兄ちゃんのいうことをしっかりと聞くの。貴方は…何か行動する前に他の人の意見を聞きなさい?絶対よ?思いつきはダメよ?」
二人の約束ごとにうなづく。
「わかった。父様に連絡してから作る」
「お兄ちゃんのいうことを聞いていい子にしてる!」
心配そうな二人の顔はあまり変わっていないが、少しは納得してくれたみたいだ。
まぁ、面倒は絶対にかけてしまうからな。
「それと、今度の休みはちゃんと帰ってくるのよ?」
「許可を取るよ」
「お兄ちゃんと帰るね!」
そして両親に抱きしめられた。
くすぐったい気持ちで、ケルンを二人に任せて俺はずっと黙っているそいつの元へと歩く。
「よっ」
軽く挨拶をすれば、氷が溶けたようにようやく動き出した。
「あ…あの!エフデ様!」
エセニアは「えっと…あの…」と繰り返すばかりで話が進まない。
この体の利点の一つに跳躍力がある。
それを生かしてエセニアの前の机に飛び乗る。それでも視線はずいぶん下だ。
当然のことだ。もどかしいけどこればかりは仕方がない。
「こうして話すのは…初めてだな」
「そう…ですね…いつもは坊ちゃまに仲介をしていただいてますから」
涙混じりの声を出すエセニアは、まるで小さな女の子に見えた。
「なんだよ、もしかして、さみしいのかよ?」
「さみしくないといえば…嘘になります」
その言葉になんだか嬉しいような気恥ずかしさがあった。
これでさみしくなんてないといわれたら、俺が馬鹿みたいだったしな。
「エフデ様。ちゃんとした言葉使いをしてください。坊ちゃまが真似したら困ります」
「善処する」
「あと、猫背になってます。直してください」
「おう」
「それから…それから…」
一生懸命に話題を探そうと必死な姿に思わず笑ってしまう。何かを取り戻そうとしているみたいだが、できれば今を見てほしい。
「なぁ、エセニア。俺が無事に許可を取って帰ったら一緒に遊ぼうぜ?お前も休暇もらってさ」
学長先生なら帰省のときくらいは許可をくれると思う。そのために、あの条件を飲んだのだ。俺としては他の手も考えていたが、先方が出した条件を飲まないとな。
それに他にも出せる札を俺は持っている。それを出してでも許可を取ってみせる。
「観劇でもいいぜ?それか服でも見に行くか?俺が選んでやるからさ」
「…二人でですか?」
「お前が望むなら…まぁ、ケルンに頼み込まないといけないけどな」
「それは…大変ですよ?…三人でも私はいいです…確実でしょうし」
「違いないな。ははは」
二人だけで出掛けるとなると、かなり難しいだろうな。ケルンは俺と離れるのを嫌がるだろう。それなら三人で行動をする方が確実だ。
「エセニア。手を」
「はい」
エセニアの手の上に飛び乗って少しでも視線を合わせる。これでもあと少し足りないか。
「約束な。だからもう、泣くなよ?」
「はいっ!」
力強く返事をしたときには、笑顔だ。俺が好きな心が暖かくなる笑顔をみせてくれる。
どんなときも、ケルンのそばにいてくれた。俺たちにとっては姉のような人だ。
だから…俺だって好きなんだ。
「エセニア…」
「エフデ様…」
徐々に視線があがっていく。
「二人とも仲良しさんだね」
ケルンの言葉にエセニアの手から転げてしまう。
な、仲良しなんかじゃねぇし!
「ば、馬鹿いうな!ただの喧嘩仲間!な!」
「そ、そうです。坊ちゃま。私とエフデ様は…そう!口喧嘩しあう…幼馴染みたいなもんです!」
「そそ!ほら、俺にだらしないとかいうだろ?…そういって、自分だってときどき、寝癖直してなかったりするんだぜ?」
「ちょっと!エフデ様!」
ケルンの前で変な空気を作っちまった!恥ずかしい!な、流れってこええな。
「けんかするほど仲良しさん?」
だから、ちげえって!そんな思春期丸出しなことをするわけがないだろ!
見た目は若いがエセニアだって、もう。
「エフデ様?」
なんでもない!
じろっと見てくるタイミングが神がかっていた。
それでも母様の言葉で表情ががらっと変わった。
「そりゃあ、お揃いの名前にしたんですもの」
「は?母様。お揃いって?」
「あの、奥様…どういう意味でしょう?」
お揃いの名前ってどういう意味だ?エセニアに合わせてエフデって名前をつけたってことか?いや、フェスマルク・ディエルっていうのでつけたんじゃないのか?
「あら?知らなかったの?フィーと話して決めてたのよ?お揃いの名前にしましょって。ケルンが画家として署名するとき、エフデにしたのはね…きっと貴方が帰ってくると信じてたの」
そうだ。母様がそうしなさいといったんだ。ケルンも気にせず署名したんだった。
帰ってくる…って、変ないい方だ。俺がいたみたいないい方だ。母様の顔も…重荷がなくなったみたいにほっとしている。
少し調べてみようかな。家族のことだからケルンには調べさせなかったが、俺ならいいだろう。
「若様のお身体をどうにかしないといけないようですな…娘のためにもなりますし」
「と、父さん!」
「執事長です、エセニア」
だからカルド。やめてくれ!
なんというか気恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
変な称号を得たみたいだけど、今までは告知もなかったのに…変な話だ。
「お兄ちゃんってば照れてる」
「照れてねぇよ」
恥ずかしいってのは…ほんのちょっとあるぐらいで、そんなにはない。
とりあえず…用件は終わったんだし午後から体験講義にでたいな。
「おい、ケルン」
「うん!」
ケルンが母様から離れて俺を持ち上げようとしたときだった。
「それじゃ、エフデは屋敷に連れて帰りましょう。せっかく体をもらえたんですもの。私とも一緒に寝ましょう?そうだ。明日はピクニックでも行きましょうね」
いきなり母様がそういって俺を持ち上げた。
ケルンがぽかんとしている。俺も同じようにしている。え?母様は今なんっていったの?
「おいおい。エフデは立派な長男なんだぞ?大人の男だ。だから…夜通しで男同士の語り合いの方がいいだろ?なぁ?とびっきりの酒もあるんだぞ?お前と飲もうとずっと置いてあったんだ。もう成人の年齢にはなってるんだから、飲んでもいいだろ?」
「たぶん、飲めるけど」
飲んだことはないけど、この体なんだし飲めなくはない。
「もちろん、ケルンのときのも用意してあるが、まずはエフデとだ」
なんといって、屋敷に帰ろうと用意をはじめだした。
いや、ちょっと!
「ま、待ってください!俺の体は思念石といって、サイジャルからの持ち出しは禁止されているんです!あくまで借用しているだけなんで」
学長先生からも条件の一つとしていわれたのだ。サイジャルの外へと許可も得ずに出てはいけない。基本的には外出不可だと思ってほしいと。
思念石が貴重だから盗難にあうと困るらしい。俺はその条件を飲んでいた。
「あら?…ねぇ、ティス。いくらぐらいいるかしら?なんだったら、私も『死人事件』のときの債務が残っているから徴収してくるわ…大金貨二千万枚ならなんとかなるわよ」
「そうだな…あのババア…学長が首をふりそうなもの…家宝の品とか渡そうか。エフデの体のためならご先祖もお許しくださるだろう。なんなら、初代様の杖でもいいぞ」
父様と母様の会話が色々と怖い。大金貨二千枚とか小国の国家予算だ。
あと父様もさらっと初代のご先祖様の杖を渡すとかいっているけど、それってこの世界で最初の杖なわけで…歴史的価値はどれほどなんだろう。
「お兄ちゃん、こっち!」
「すまん。抜けれない」
ケルンが手を伸ばしているが母様が渡そうとしない。わかっていてしている。いつもはそんなことをしないのに。
「とりあえず、なんとかしてみせるわ」
「私もだ。息子の体を奪わせなどさせん」
いや父様。これ借り物なんだって。
「とりあえず、連れて帰ろう」
「若様のお部屋をお掃除せねばなりませんね」
カルドも止めないとか!おい、黙ってないで止めてくれよ!
「だ、だめ!」
助けを求めた相手ではないが、ケルンが母様にすがる。
「お兄ちゃんは僕と一緒なの!」
「だめよ…それはお互いつらくなるわ」
ケルンの願いを初めて母様が断った。
俺たちが驚いていると父様が「いいか?」とケルンに、目線を合わせる。
「一緒にいたいのはわかる。だがな…エフデはみての通りだ。誰かに狙われるかもしれないぞ?」
父様のいい分は確かにそうだ。
思念石。棒神様のような棒人間の姿。そのうえエフデということが知られている。
あくまで、通信器具のような物に思われても、体自体が価値がある。
俺だけでなく、ケルンが危険な目に遭うかもしれない。母様の懸念はそこだろう。
それでも俺たちにもいい分はある。
「でも!…でも、一緒にいたもん…ずっと…」
ケルンだってわかっている。ケルンなりに俺を守りたいのだろう。
まったく。こんな小さい子にいわせるなんてな…いや、俺の方が小さいか。
「あ、あの!」
声をかければ母様の腕の力が抜けたから、そのままケルンの元へと飛び込んだ。
「お兄ちゃん!」
「おう。待っとけよ」
軽く話をして、俺の気持ちを二人に伝える。
「できれば、俺もケルンと一緒にいたいです!ケルンは少し天然なんで、ほっとけないんです!」
何をするかわからないし…俺も気になるし…だったら一緒にいるのがいい。
「お願いします!…父様!母様!」
初めて二人を呼べば二人は仕方ないかと笑う。
「ふふ。やっばりね…うちの子たちのわがままって、なんでこんなにかわいいことしかいわないのかしら?」
「わがままといっていいのだろうか?」
「そうね…兄弟そろっていい子に育っているわ」
二人が俺たち目線を合わせる。ケルンは俺がとられると思ったのか強く胸に抱くから苦しい。朝飯が出るからやめてくれ。
「エフデ。約束しなさい。ケルンをしっかりと見守るんだ…あまり発明や無茶はしないんだぞ?とくに作ってからじゃなく、作る前に相談しなさい。心臓に悪いから」
「ケルン。お兄ちゃんのいうことをしっかりと聞くの。貴方は…何か行動する前に他の人の意見を聞きなさい?絶対よ?思いつきはダメよ?」
二人の約束ごとにうなづく。
「わかった。父様に連絡してから作る」
「お兄ちゃんのいうことを聞いていい子にしてる!」
心配そうな二人の顔はあまり変わっていないが、少しは納得してくれたみたいだ。
まぁ、面倒は絶対にかけてしまうからな。
「それと、今度の休みはちゃんと帰ってくるのよ?」
「許可を取るよ」
「お兄ちゃんと帰るね!」
そして両親に抱きしめられた。
くすぐったい気持ちで、ケルンを二人に任せて俺はずっと黙っているそいつの元へと歩く。
「よっ」
軽く挨拶をすれば、氷が溶けたようにようやく動き出した。
「あ…あの!エフデ様!」
エセニアは「えっと…あの…」と繰り返すばかりで話が進まない。
この体の利点の一つに跳躍力がある。
それを生かしてエセニアの前の机に飛び乗る。それでも視線はずいぶん下だ。
当然のことだ。もどかしいけどこればかりは仕方がない。
「こうして話すのは…初めてだな」
「そう…ですね…いつもは坊ちゃまに仲介をしていただいてますから」
涙混じりの声を出すエセニアは、まるで小さな女の子に見えた。
「なんだよ、もしかして、さみしいのかよ?」
「さみしくないといえば…嘘になります」
その言葉になんだか嬉しいような気恥ずかしさがあった。
これでさみしくなんてないといわれたら、俺が馬鹿みたいだったしな。
「エフデ様。ちゃんとした言葉使いをしてください。坊ちゃまが真似したら困ります」
「善処する」
「あと、猫背になってます。直してください」
「おう」
「それから…それから…」
一生懸命に話題を探そうと必死な姿に思わず笑ってしまう。何かを取り戻そうとしているみたいだが、できれば今を見てほしい。
「なぁ、エセニア。俺が無事に許可を取って帰ったら一緒に遊ぼうぜ?お前も休暇もらってさ」
学長先生なら帰省のときくらいは許可をくれると思う。そのために、あの条件を飲んだのだ。俺としては他の手も考えていたが、先方が出した条件を飲まないとな。
それに他にも出せる札を俺は持っている。それを出してでも許可を取ってみせる。
「観劇でもいいぜ?それか服でも見に行くか?俺が選んでやるからさ」
「…二人でですか?」
「お前が望むなら…まぁ、ケルンに頼み込まないといけないけどな」
「それは…大変ですよ?…三人でも私はいいです…確実でしょうし」
「違いないな。ははは」
二人だけで出掛けるとなると、かなり難しいだろうな。ケルンは俺と離れるのを嫌がるだろう。それなら三人で行動をする方が確実だ。
「エセニア。手を」
「はい」
エセニアの手の上に飛び乗って少しでも視線を合わせる。これでもあと少し足りないか。
「約束な。だからもう、泣くなよ?」
「はいっ!」
力強く返事をしたときには、笑顔だ。俺が好きな心が暖かくなる笑顔をみせてくれる。
どんなときも、ケルンのそばにいてくれた。俺たちにとっては姉のような人だ。
だから…俺だって好きなんだ。
「エセニア…」
「エフデ様…」
徐々に視線があがっていく。
「二人とも仲良しさんだね」
ケルンの言葉にエセニアの手から転げてしまう。
な、仲良しなんかじゃねぇし!
「ば、馬鹿いうな!ただの喧嘩仲間!な!」
「そ、そうです。坊ちゃま。私とエフデ様は…そう!口喧嘩しあう…幼馴染みたいなもんです!」
「そそ!ほら、俺にだらしないとかいうだろ?…そういって、自分だってときどき、寝癖直してなかったりするんだぜ?」
「ちょっと!エフデ様!」
ケルンの前で変な空気を作っちまった!恥ずかしい!な、流れってこええな。
「けんかするほど仲良しさん?」
だから、ちげえって!そんな思春期丸出しなことをするわけがないだろ!
見た目は若いがエセニアだって、もう。
「エフデ様?」
なんでもない!
じろっと見てくるタイミングが神がかっていた。
それでも母様の言葉で表情ががらっと変わった。
「そりゃあ、お揃いの名前にしたんですもの」
「は?母様。お揃いって?」
「あの、奥様…どういう意味でしょう?」
お揃いの名前ってどういう意味だ?エセニアに合わせてエフデって名前をつけたってことか?いや、フェスマルク・ディエルっていうのでつけたんじゃないのか?
「あら?知らなかったの?フィーと話して決めてたのよ?お揃いの名前にしましょって。ケルンが画家として署名するとき、エフデにしたのはね…きっと貴方が帰ってくると信じてたの」
そうだ。母様がそうしなさいといったんだ。ケルンも気にせず署名したんだった。
帰ってくる…って、変ないい方だ。俺がいたみたいないい方だ。母様の顔も…重荷がなくなったみたいにほっとしている。
少し調べてみようかな。家族のことだからケルンには調べさせなかったが、俺ならいいだろう。
「若様のお身体をどうにかしないといけないようですな…娘のためにもなりますし」
「と、父さん!」
「執事長です、エセニア」
だからカルド。やめてくれ!
なんというか気恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
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