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第四章 学園に行くケモナー
杖を狙う人
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杖の謎行動をサーシャル先生も気にしていないのか、たまたま目に入るときに動きを止めるのか先生はそのことに触れない。
それよりも、先生の顔が少し怖くなった。
「これは…本当に、貴方が作ったの?」
杖を持ちながら、先生の目の色が変わる。
木の質を確かめるように、何度か握りつつ、表面に彫ってある彫刻を食い入るように見ている。
「あの正体不明の発掘品が、霊木になっているのはわかるわ。でも、貴方の年齢でこれほど精密な彫刻を…霊木にできるほど技量が?お家の所蔵品だといわれた方が納得できます」
霊木に彫刻をしたことがそれほどのことだったのだろうか。ケルンが作ったとは信じていないかのようだ。
疑われるのも嫌だからある程度の事情を話すか。
エフデのことをそれとなく伝えようぜ。
「うん。あの、学長先生から聞いてませんか?」
「学長から?…いいえ。何も聞いてないわ」
サーシャル先生は、さらに不審そうな顔をした。
「やはりすげ替えですか?子煩悩な家系ですし…はぁ…」
疑われているだけではなく、まるで父様が杖を用意したと思ったようだ。
確かに父様なら頼めば用意をしてくれるだろう。
だけど、不正は嫌いだ。
疑うほどの品だと思われるのは嬉しいが、ちゃんと話をしておこう。
おい、ケルン。俺の弟子っていっとけ。お前や父様が疑われたままなんて、俺は嫌だからな。
「うん!先生!僕はお兄ちゃんの一番弟子なんです!いっぱい教えてくれたから、僕だって作れるんです!」
「お兄ちゃん?」
「エフデです!」
嘘はいっていない。ケルンは、知識を俺から渡されてやっているのだ。ただ、ケルンがエフデを兄といったとき、一瞬、目つきが変わったような気がする。
先生の勘なのかわからないが、それに引っ掛かったのだろうか。
「なるほどねー…エフデの弟子…兄、ね。噂では聞いたけれど、師匠級の人族は珍しいの。徒弟で引き上げるとして…スキルは『彫像』か『木工』かしら?…あ!スキルのことは、聞いてはいけないことだったわ!…ごめんなさいね…あんまりにも、びっくりしちゃって」
家名を聞く以上に、スキルのことは、内密にしないといけない。これは、サイジャルではなく、どこの国でも同じ常識だ。系統がわかれば、対策されるからな。
サーシャル先生は、不思議に思わなかったところを見ると、学園を立て直した大嵐とかいう二つ名の先祖の『建築』スキルがあったことから、製作関係のスキルが発現していると思ったのだろう。外れてはいないが、当たりでもないな。
師匠級とか徒弟とかいう初めて聞く単語もあったが、師匠と弟子という意味か?師匠がなにかすれば弟子のスキルの習熟を上げれるみたいにいっていたが、どうすればいいのか聞いておきたいな。
ケルンを誰かに弟子入りさせて、『造物』スキルを習熟させていけば、もしかしたら、俺と意識を統合させることができるかもしれないからな。
「お兄ちゃん…」
ん?
「知らない!」
なに、怒ってるんだ。
小声であるがケルンが怒っている。何か気に障ることでもあったかと周囲を見聞きするが、先生が杖を見ているぐらいだ。会話を変にとられていないのは先生がケルンのことを忘れているからだ。
「素晴らしい彫刻だわ…エフデの弟子でこれなら本人に注文したらもっと素晴らしい…あら…この宝石…宝石にしては何かあるわね…微弱だけど…まさか!」
ブツブツと自分の世界に入っていたところをみると杖マニアなのだろう。
おかげで助かったというのもあるが、それにしても先生の様子はおかしい。
古竜王の涙石を見て、先生の顔は、見たことがない…そうだ。涎を垂れ流さんばかりの飢えた獣のような顔だったのだ。
「ケルン君…この石は、ティストール様から貰ったの?」
「いいえ。父様からは貰ってません。街で買いました」
ウロを隠すのに、お婆さんから、買った石が綺麗だったから嵌めたのだが、宝石だったのか?
先生がギラギラとした目で見るということは、ただの宝石ではないようだ。
「魔石…ではないわ。魔封じの石?…でも、こんなに大きな物があるわけないわ!」
魔封じの石?魔除け的なものなのか?
「魔封じっ?」
わかんねぇな。
「それを確認するためにも少し、魔法を使ってもいいかしら?」
「ど、どうぞ」
有無をいわせない表情だったので、即答をした。
「精霊よ、答えて『サーチコレクト』…!重ねて、答えて!『マジックオープン』」
サーシャル先生が、魔法を発動すると、『サーチコレクト』の魔法で涙石だけでなく、杖全体が光に包まれ、『マジックオープン』の魔法は、先生の目の前に、幾つかの魔法円を浮かべた。
重ねて魔法をかけるってのは、結構疲れると、父様がいっていたんだけど。先生って、ひょっとして、凄い先生なのかもな。
「相変わらず杖の材質は不明ね…石は…魔封じの石!でも、魔法が読めないなんて…もしかしたら、この魔法…」
驚嘆している先生と、置き去りのケルン。
あと、嵌め込んだ涙石を外そうとしているみたいだけど、外せないと思う。かなりピタッと嵌まってしまっていて、杖を壊さない限りは取れそうもないからな。
というか、勝手にはずそうとすんなよ。
「あのー…先生?」
人の物を勝手に壊そうとしないでくれますか?ケルンが初めて作った杖なんだぞ?
あと、葉っぱがブンブンして嫌がってる。祟られる前に手を引くのをおすすめします。
「…でも…フェスマルク家の家宝…いや、先生からは…どんな…研究」
無我夢中なのか、思考の波に飲まれてしまっているようだ。俺が動物見た時も、こんな感じなのだろうか?
「もっと元気いっぱいだよ。楽しそう!」
ケルンがあっけらかんと肯定する。若干…そう、若干!ダメ人間に見えてしまうから、今度からは自重しよう。
「なんで外せないの!精霊よ!答えて!『リムーブ』!『リムーブ』!もう!」
なんか乱暴に魔法を連発しだしたんだけど。
止めよう!
「先生!」
机をたたいて、大きな声をしたら、ようやく、先生は、こちらの世界に帰ってくることができた。
そんなに、珍しい物だったのか?ちょっと、狂気染みてたぞ。
「あっ!ご、ごめんなさいね!つい、夢中になっちゃってたわ!ところで…この石…譲っては」
「無理です」
懇願する先生の手から、机に飛び乗るようにして杖を奪い返した。行儀はかなり悪いがそれどころではなかった。目つきが本気だったからな。
最悪、石だけだったら良いけど杖を壊して譲るのは、無理だな。ケルンが頑張ったんだぞ?
なにより元呪木さんが、祟らないとも限らないじゃないか。
「はぁー…そうよね…下手をするとナザド君の野郎が、うるさいわね…」
ナザド君の野郎…?ナザドのことを知っているとは、思っていたが、親しい関係なのか…はっ!ひょっとして、キャスに続いてナザドにも春が…!ティルカ!長男のお前が負けているぞ!
わたわたと慌てて、ティルカに『コール』か、手紙を出そうかと考えていると、サーシャル先生は、さっきまでの興奮が嘘のように、静かにいった。
まるで仮面のような表情を削いだなんの感情も伝わらない顔だった。
「この石には、とても強い魔法が込められています。どんな魔法かは、私には解読できませんでした。だから、危険性もあるということは、覚えていて欲しいの」
先生でもわからない魔法が、この石に…?でも、危険なものなのか?
手元にある古竜王の涙石を見ると、母様を思い出して、胸が暖かくなる。別に嫌な感じはないんだけどな?懐かしいって気持ちになる。
「魔封じの石には、それぞれ、鍵となる言葉があるの。それがわからない限りは、質の良い宝石でしかないわ」
キーワードをいうと、発動するのか。でも、キーワードがわからなかったら、質の良い宝石か。
ん?魔石と、魔封じの石の違いがわからなくなってきた。
「魔封じの石って、どんな物になるんですか?普通の魔石との違いって、何ですか?」
先生に問いかけると、真剣に答えてくれたのだが、口元が少し緩んでいる気がする。
「魔封じの石は、かなり数が少ないの…元々は、神々の品や、精霊達の宝とか。ボージィン様の祝福ともいわれているわね」
神々の品。そうすると、自然発生はないわけか。
「国の宝として、あるいは、迷宮の奥に鎮座していたりするのだけど、魔石との違いはね…魔法が込められていることなの」
魔法が込められていることが、重要なのか?魔石にも、魔法と同じ効果があるのに?
その疑問を読んだのか、先生は尋ねる前に、教えてくれる。
「知らないかもしれないことだけど…魔石は、効果として無属性の魔法と似た物があるの。魔法が封じられているわけではないの。…どちらかというと…魔石には、自然が封じられているといえばいいかしらね…人工的にも作ることは可能よ。ただ強い魔法は込めることができないの」
自然。そういえば、暖かいとか、冷たいとか、自然界にある現象しか魔石は効果を見せないな。
それに父様が前にいっていた。強い魔法は込めれないとは一般的な話なのだろう。
「私が知っている魔封じの石は、ドラルインの国王が嵌めている指輪があるわ。初代ドラルイン国王の遺物で、神宝。小さな青い石なのに、上級の魔法が込められているの」
そういいながら、先生は机の引き出しから、一本の杖を取り出した。
その杖は灰色ながらやけに煌めく木肌に、金細工が施された指揮棒によく似た杖だった。
「何度でも使えるし、その魔法を使うよりも、ずっと魔力の消費が少ない…三流以下の魔法使いが超一流になれるの。だから、欲しがる人は多い…それとね…魔封じの石は大きさと光度で込められた魔法の質が高まるの」
杖をなでながらすっと、目が細められ、背中を悪寒が襲う。目の前の人からくる、プレッシャーだと、すぐにわかった。
「その大きさと光度ならかなり強力な魔法でしょうね。もしかしたら、魔封じの石だと気づく人に出会うかもしれないわね…そうなったら、かなり危険よ?…それに、残念だけど、フェスマルク家と聞いたから、率直にいうわ」
知らず知らずに、息を飲んだ。
「同じ魔法使いからみれば、それは、貴方を殺してでも欲しい物になるの」
それは、先生も同じということなんだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こちらの方で人形作りをしていたりします
https://www.youtube.com/channel/UCpXqxiwCARtsF1AhcnQ2U4Q
疑問などがあればこちらで答えますのでよければ見に来ていただけたらなと思います。
それよりも、先生の顔が少し怖くなった。
「これは…本当に、貴方が作ったの?」
杖を持ちながら、先生の目の色が変わる。
木の質を確かめるように、何度か握りつつ、表面に彫ってある彫刻を食い入るように見ている。
「あの正体不明の発掘品が、霊木になっているのはわかるわ。でも、貴方の年齢でこれほど精密な彫刻を…霊木にできるほど技量が?お家の所蔵品だといわれた方が納得できます」
霊木に彫刻をしたことがそれほどのことだったのだろうか。ケルンが作ったとは信じていないかのようだ。
疑われるのも嫌だからある程度の事情を話すか。
エフデのことをそれとなく伝えようぜ。
「うん。あの、学長先生から聞いてませんか?」
「学長から?…いいえ。何も聞いてないわ」
サーシャル先生は、さらに不審そうな顔をした。
「やはりすげ替えですか?子煩悩な家系ですし…はぁ…」
疑われているだけではなく、まるで父様が杖を用意したと思ったようだ。
確かに父様なら頼めば用意をしてくれるだろう。
だけど、不正は嫌いだ。
疑うほどの品だと思われるのは嬉しいが、ちゃんと話をしておこう。
おい、ケルン。俺の弟子っていっとけ。お前や父様が疑われたままなんて、俺は嫌だからな。
「うん!先生!僕はお兄ちゃんの一番弟子なんです!いっぱい教えてくれたから、僕だって作れるんです!」
「お兄ちゃん?」
「エフデです!」
嘘はいっていない。ケルンは、知識を俺から渡されてやっているのだ。ただ、ケルンがエフデを兄といったとき、一瞬、目つきが変わったような気がする。
先生の勘なのかわからないが、それに引っ掛かったのだろうか。
「なるほどねー…エフデの弟子…兄、ね。噂では聞いたけれど、師匠級の人族は珍しいの。徒弟で引き上げるとして…スキルは『彫像』か『木工』かしら?…あ!スキルのことは、聞いてはいけないことだったわ!…ごめんなさいね…あんまりにも、びっくりしちゃって」
家名を聞く以上に、スキルのことは、内密にしないといけない。これは、サイジャルではなく、どこの国でも同じ常識だ。系統がわかれば、対策されるからな。
サーシャル先生は、不思議に思わなかったところを見ると、学園を立て直した大嵐とかいう二つ名の先祖の『建築』スキルがあったことから、製作関係のスキルが発現していると思ったのだろう。外れてはいないが、当たりでもないな。
師匠級とか徒弟とかいう初めて聞く単語もあったが、師匠と弟子という意味か?師匠がなにかすれば弟子のスキルの習熟を上げれるみたいにいっていたが、どうすればいいのか聞いておきたいな。
ケルンを誰かに弟子入りさせて、『造物』スキルを習熟させていけば、もしかしたら、俺と意識を統合させることができるかもしれないからな。
「お兄ちゃん…」
ん?
「知らない!」
なに、怒ってるんだ。
小声であるがケルンが怒っている。何か気に障ることでもあったかと周囲を見聞きするが、先生が杖を見ているぐらいだ。会話を変にとられていないのは先生がケルンのことを忘れているからだ。
「素晴らしい彫刻だわ…エフデの弟子でこれなら本人に注文したらもっと素晴らしい…あら…この宝石…宝石にしては何かあるわね…微弱だけど…まさか!」
ブツブツと自分の世界に入っていたところをみると杖マニアなのだろう。
おかげで助かったというのもあるが、それにしても先生の様子はおかしい。
古竜王の涙石を見て、先生の顔は、見たことがない…そうだ。涎を垂れ流さんばかりの飢えた獣のような顔だったのだ。
「ケルン君…この石は、ティストール様から貰ったの?」
「いいえ。父様からは貰ってません。街で買いました」
ウロを隠すのに、お婆さんから、買った石が綺麗だったから嵌めたのだが、宝石だったのか?
先生がギラギラとした目で見るということは、ただの宝石ではないようだ。
「魔石…ではないわ。魔封じの石?…でも、こんなに大きな物があるわけないわ!」
魔封じの石?魔除け的なものなのか?
「魔封じっ?」
わかんねぇな。
「それを確認するためにも少し、魔法を使ってもいいかしら?」
「ど、どうぞ」
有無をいわせない表情だったので、即答をした。
「精霊よ、答えて『サーチコレクト』…!重ねて、答えて!『マジックオープン』」
サーシャル先生が、魔法を発動すると、『サーチコレクト』の魔法で涙石だけでなく、杖全体が光に包まれ、『マジックオープン』の魔法は、先生の目の前に、幾つかの魔法円を浮かべた。
重ねて魔法をかけるってのは、結構疲れると、父様がいっていたんだけど。先生って、ひょっとして、凄い先生なのかもな。
「相変わらず杖の材質は不明ね…石は…魔封じの石!でも、魔法が読めないなんて…もしかしたら、この魔法…」
驚嘆している先生と、置き去りのケルン。
あと、嵌め込んだ涙石を外そうとしているみたいだけど、外せないと思う。かなりピタッと嵌まってしまっていて、杖を壊さない限りは取れそうもないからな。
というか、勝手にはずそうとすんなよ。
「あのー…先生?」
人の物を勝手に壊そうとしないでくれますか?ケルンが初めて作った杖なんだぞ?
あと、葉っぱがブンブンして嫌がってる。祟られる前に手を引くのをおすすめします。
「…でも…フェスマルク家の家宝…いや、先生からは…どんな…研究」
無我夢中なのか、思考の波に飲まれてしまっているようだ。俺が動物見た時も、こんな感じなのだろうか?
「もっと元気いっぱいだよ。楽しそう!」
ケルンがあっけらかんと肯定する。若干…そう、若干!ダメ人間に見えてしまうから、今度からは自重しよう。
「なんで外せないの!精霊よ!答えて!『リムーブ』!『リムーブ』!もう!」
なんか乱暴に魔法を連発しだしたんだけど。
止めよう!
「先生!」
机をたたいて、大きな声をしたら、ようやく、先生は、こちらの世界に帰ってくることができた。
そんなに、珍しい物だったのか?ちょっと、狂気染みてたぞ。
「あっ!ご、ごめんなさいね!つい、夢中になっちゃってたわ!ところで…この石…譲っては」
「無理です」
懇願する先生の手から、机に飛び乗るようにして杖を奪い返した。行儀はかなり悪いがそれどころではなかった。目つきが本気だったからな。
最悪、石だけだったら良いけど杖を壊して譲るのは、無理だな。ケルンが頑張ったんだぞ?
なにより元呪木さんが、祟らないとも限らないじゃないか。
「はぁー…そうよね…下手をするとナザド君の野郎が、うるさいわね…」
ナザド君の野郎…?ナザドのことを知っているとは、思っていたが、親しい関係なのか…はっ!ひょっとして、キャスに続いてナザドにも春が…!ティルカ!長男のお前が負けているぞ!
わたわたと慌てて、ティルカに『コール』か、手紙を出そうかと考えていると、サーシャル先生は、さっきまでの興奮が嘘のように、静かにいった。
まるで仮面のような表情を削いだなんの感情も伝わらない顔だった。
「この石には、とても強い魔法が込められています。どんな魔法かは、私には解読できませんでした。だから、危険性もあるということは、覚えていて欲しいの」
先生でもわからない魔法が、この石に…?でも、危険なものなのか?
手元にある古竜王の涙石を見ると、母様を思い出して、胸が暖かくなる。別に嫌な感じはないんだけどな?懐かしいって気持ちになる。
「魔封じの石には、それぞれ、鍵となる言葉があるの。それがわからない限りは、質の良い宝石でしかないわ」
キーワードをいうと、発動するのか。でも、キーワードがわからなかったら、質の良い宝石か。
ん?魔石と、魔封じの石の違いがわからなくなってきた。
「魔封じの石って、どんな物になるんですか?普通の魔石との違いって、何ですか?」
先生に問いかけると、真剣に答えてくれたのだが、口元が少し緩んでいる気がする。
「魔封じの石は、かなり数が少ないの…元々は、神々の品や、精霊達の宝とか。ボージィン様の祝福ともいわれているわね」
神々の品。そうすると、自然発生はないわけか。
「国の宝として、あるいは、迷宮の奥に鎮座していたりするのだけど、魔石との違いはね…魔法が込められていることなの」
魔法が込められていることが、重要なのか?魔石にも、魔法と同じ効果があるのに?
その疑問を読んだのか、先生は尋ねる前に、教えてくれる。
「知らないかもしれないことだけど…魔石は、効果として無属性の魔法と似た物があるの。魔法が封じられているわけではないの。…どちらかというと…魔石には、自然が封じられているといえばいいかしらね…人工的にも作ることは可能よ。ただ強い魔法は込めることができないの」
自然。そういえば、暖かいとか、冷たいとか、自然界にある現象しか魔石は効果を見せないな。
それに父様が前にいっていた。強い魔法は込めれないとは一般的な話なのだろう。
「私が知っている魔封じの石は、ドラルインの国王が嵌めている指輪があるわ。初代ドラルイン国王の遺物で、神宝。小さな青い石なのに、上級の魔法が込められているの」
そういいながら、先生は机の引き出しから、一本の杖を取り出した。
その杖は灰色ながらやけに煌めく木肌に、金細工が施された指揮棒によく似た杖だった。
「何度でも使えるし、その魔法を使うよりも、ずっと魔力の消費が少ない…三流以下の魔法使いが超一流になれるの。だから、欲しがる人は多い…それとね…魔封じの石は大きさと光度で込められた魔法の質が高まるの」
杖をなでながらすっと、目が細められ、背中を悪寒が襲う。目の前の人からくる、プレッシャーだと、すぐにわかった。
「その大きさと光度ならかなり強力な魔法でしょうね。もしかしたら、魔封じの石だと気づく人に出会うかもしれないわね…そうなったら、かなり危険よ?…それに、残念だけど、フェスマルク家と聞いたから、率直にいうわ」
知らず知らずに、息を飲んだ。
「同じ魔法使いからみれば、それは、貴方を殺してでも欲しい物になるの」
それは、先生も同じということなんだろうか。
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こちらの方で人形作りをしていたりします
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