上 下
111 / 229
第四章 学園に行くケモナー

入学日和だ

しおりを挟む
 春が訪れて今は四樹月。
 四樹月は、特別な月で、物事を完璧にこなすといわれていて、引越しとか、結婚とか、まぁ、祝い事をするのに最適な月なのだ。

 四つの元素精霊が基礎であるから、四という数字は、この世界においては、縁起が良い数字なのだ。

 ということで、入学シーズンなわけだ。秋前にも途中入学というのがあるらしいが、友達作りは早いことにこしたことはないだろう。

「すごぉーく人がいっぱいだね!お兄ちゃん、ミルディ!」
 いっぱいというか…多すぎというか…とりあえず、ちゃんと、前をみろよ?
「坊ちゃま。手を離さないでくださいね」

 そんなわけで、学園に入学するため、サイジャルにきたわけだが、現在の俺たち、ミルデイとケルンの二人は仲良く橋の上で人波にもまれている。

 ケルンの周りはミルディが確保してくれているから窮屈ではないが、他の人は大変そうだ。ケルンの周りで気絶する人がでているみたいだしな。

 同じぐらいの子供に混じって、使用人の大人がいたり、本当に、何、これ…人多すぎない?一応、これでも人数制限あるんだよな…そう聞いたから二人できたんだけど?

「お兄ちゃんも一緒!三人できたの!もう!」
 えーと…三人でな。

 本当は屋敷から何人かついてくるといっていたんだが、やめてもらった。
 とくに、父様。
 入学者は学園の門を通ってくださいって聞いてたのに、直接入ろうとかいうもんで、なんとか説得させてもらった。
 最後まで心配していたから、橋の前に送ってもらってからもついてきそうになっていたんだけど…さすがに父様をこんな人波にいれたいとは思わない。仕事で大変そうだったし。

「いいか?なにかあったら、ナザドにいうんだよ?ケルン。エフデのいうことと、ミルディのいうことをきちんと聞くんだぞ?迷子になってはだめだぞ?それから、エフデ、お前も急に色んな物を作ってはダメだぞ?父様と約束だからな?」

 と何度もいってたが、俺をケルンのようにマイペースだと思っているようだ。
 俺はケルンよりもマイペースではないんだがなぁ。

 そもそも、こうしてたくさんの人がいても、門の前でみんな離れていくのか、学園に入る流れと、帰っている人の流れとの二つができている。
 迷子になることの方が難しいんじゃないか?

 まぁ、こうして、ミルディと入学式にむかっていくが、学園に入れても入学式場は入学者しか立ち入れないんだし、父様たちはきても外で待つだけだったろうしな。

 あ、ミルデイは、執事だから、特に問題はないんだけど、無事に入学までこれたんだと思うと嬉しいを通り越して、達成感しかないな。

 いやー…本当に入学できたんだな…うん。
「大変だったかなぁ?」
 試験はそうでもなかったんだけどな。試験は、な。

 簡単に入れると思っていたが、入学するためには、試験を受けなければならなかったのだ。

 まず、おかしいなと思ったことだが、申し込みぎりぎりで間に合った。
 あと一日ずれていたら、ダメだったらしいけど、間に合った…というか、司祭様が手続きをしなさいと持ってきてくれたから、わかった。

 父様がうっかり忘れていた…ってことらしい。

「父様も、うっかりさんねー」

 とケルンがいっていたが、あれは確信犯だろう。

 ついでとばかりに、ポルティ大聖堂にいって、手続きをしたあと、入学試験になった。

 凄く簡単で、水晶玉に手をかざしたら、入学許可をすぐに貰えた。まぁ、祝福の時に、五千という数字がでていたから、誰も気にしてなかったんだけどな。

 魔力の量と知識があれば通るとのことだったが、キャスが試験として出してたのが入学試験とは思わなかったな。

「旦那様はきっと反対するでしょうが…私は坊ちゃまには自由でいてもらいたいのです」

 なんていうから、ケルンも嬉しくなったけど「…まぁ、外が酷ければお屋敷や領地の素晴らしさがわかるでしょ?」って小声でいってたのはよくないと思うぞ。

 あと、問題というか、教会でも試験を阻止しようとする父様を監視するために司祭様がポルティ大聖堂にもついてきてくれていたんだが、ポルティ大聖堂の司祭さん達が、慌てていたので、時間がかなりかかったぐらいだ。
 司祭様をお医者さんと勘違いしてる人多くて、ケルンが何度もほほをふくらませてたがな。

「司祭様なの!お医者様じゃないの!」

 と、怒っても、大人はスルーしていた。
 だって、ゲカーって、外科のことだろ?外科手術がこの世界でも行われていたのかと知れたのは、よかったのだが、司祭様って、その外科の先生に似ているんだろうか?

 変だな。
「へんだねー?」

 と二人で試験を終えたあと悩んだ。ゲーカーだったかもしれないが、なんのことだろ?

 あ!隣の人がよろけて危ないぞ!ケルン!
「あっ」

 足を踏まれ…ミルデイ!わき腹を回し蹴りしたらダメだ!

「危ないですね」

 いや、ミルディ?あのな…ああ…ほら、将棋倒しみたいに…救助してあげたいけど、また流されてるから…すまない。

「ミルディ?だめだよ?ミルディが怪我したら、僕、悲しいから」
「坊ちゃま…」

 あ、ミルディが赤面して微笑みしたのをみた人が固まってしまう。ああ…急に止まるからまた事故が…これは注意しないと。

 ほら、ケルン。橋から落ちないようにしないと…あの人みたいに落ちたくないだろ?だから、前に集中だぞ?
「はーい!ミルディ、お兄ちゃんがね、前に集中しなさいってー。橋から落ちないようにって」
「そうですね。しかし…本当に人が多いです」

 とはいえ、危険はないんだがな。橋には魔法がかかっていて、落ちても出発地点に戻されるだけらしい。しかし、もう一度人波に飲まれるのは嫌すぎる。落ちないにこしたことはない。

 前になかなか進めないという事態ではないけど、立ち止まれないっていう事態はある意味問題だな。
 なんで一本しか橋がないんだろうか?

 目指す学園は橋の先の島にある。というよりも、サイジャルが湖の中に浮かぶ島なのだ。この湖もかなり広い。なにしろ先が見えないんだからな。
 端にかかっている魔法のおかげでかなり早くすすんでいるが、普通に歩いていたら何時間かかるだろうか。
 
 サイジャルは湖にあるのだが、船がない。それどころか、橋が一本だけかかっているだけだ。
 なかなか不便だ。

 ん?ケルンが珍しいことに緊張していないか?

「…緊張するねー」
 そうだなぁ。考えれば初めての学校だもんな。

 さて、今後のケルンの学園生活をいかに楽しくさせるかってことを踏まえ、入学期間までに起こったいくつかをもう一度整理しよう。
 本当に、驚きしかなかったんだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
四章開始です。
リメイク前とだいぶ変わったのでプロトの見直しをしていました。
個人的に四章は好きな話があるので、ぜひ読んんでいってもらえると嬉しいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...