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消息
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ひまわりはサチに頼まれて、海人の部屋の片付けをした。
サチは海人はもう帰っては来ないんだと、ひまわりに何度も話して聞かせた。
でも、ひまわりは自分の心の整理がつかないまま、海人の持ち物を大切に箱に詰めている。
海人は何も残していなかった。
Tシャツと短パン、下着が一組と、洗面道具。
部屋は綺麗に片付いていて、ひまわりは何もすることがない。
海人がいつも座っていた座椅子に腰掛けて、この部屋で一緒に過ごした時間を思い浮かべる。
ひまわりは目を閉じ、海人の笑顔を声を一つ残らず脳裏に焼き付けた。
私は、海人を絶対に忘れない…
そう心に誓って目を開けてみると、海人の着替えの横に小さな紙の袋を見つけた。
それは、近所のスーパーの紙袋だ。
そっと中を覗いてみると、そこには、ひまわりの造花のついたヘアゴムが入っていた。
ひまわりは、そのヘアゴムを手に取ってみる。
「海人さん、ありがとう…
私に渡そうって思ってたんだよね…
ちゃんと、受け取ったから」
海人が何のためにこの時代まで私に会いに来てくれたのか、絶対に何か意味があるに違いない。
ひまわりは海人が買ったひまわりのヘアゴムで髪を結び、そして、心に誓った。
私が海人さんを捜し出す。
彼が生まれ育った故郷を訪ねてみよう。
70年も経ってはいるけれど、そこに行けば何か消息が掴めるかもしれない。
小さな事でもいい…
海人の痕跡をたどりたい…
そこにはきっと絶対に何かがあるはずだから。
9月に入り、ひまわりは大学の図書館に入り浸っている。
海人がいなくなった後、ひまわりはすぐに東京に戻った。
東京に帰る前に、ひまわりはサチに正直に全部を話した。
これから海人の痕跡をたどろうとしている事を…
海人の生死についても、ひまわり自身がまだ納得できていない。
年は取っているが、海人は生きている可能性だって大いにあり得る。
おじいちゃんでもいい。
それでもひまわりは、海人に会いたかった。
「捜す事は、真実を目の当たりにすることになる。
今のままでいいじゃないか…
20歳の海人くんの思い出でじゃ、だめなのかい?」
サチがそう言うと、ひまわりはすぐに首を横に振った。
「傷ついてもいいんです。
それでも、真実が知りたい。
海人さんにまつわる事なら何でもいい。
海人さんが遥か昔に生きていた証しを、見つけたいんです」
ひまわりはサチには分かってもらいたかった。
サチだけがひまわりと海人の味方だから…
「分かった…
もし、海人君のことが分かったら、私にも教えておくれ。
短い間だったけど、息子のように思ってたから」
サチはそう言うと、ひまわりに封筒を渡した。
「ひまわりちゃんに渡してもいいかい?」
それは、海人が働いた分の給料だった。
この間まで海人がここで生きていた証しを目の当たりにしたひまわりは、その給料の入った封筒を握りしめ、さらに強く心に誓った。
そして、翌日、ひまわりはさくらに会ってお礼を言った。
いなくなった海人の事を聞かれて、海人は自分探しの旅に出たと嘘をついた。
さくらは、私と海人のために泣いてくれた。
「海人さんは、必ず、また、ひまちゃんの所に戻ってくるから大丈夫だよ」
サチは海人はもう帰っては来ないんだと、ひまわりに何度も話して聞かせた。
でも、ひまわりは自分の心の整理がつかないまま、海人の持ち物を大切に箱に詰めている。
海人は何も残していなかった。
Tシャツと短パン、下着が一組と、洗面道具。
部屋は綺麗に片付いていて、ひまわりは何もすることがない。
海人がいつも座っていた座椅子に腰掛けて、この部屋で一緒に過ごした時間を思い浮かべる。
ひまわりは目を閉じ、海人の笑顔を声を一つ残らず脳裏に焼き付けた。
私は、海人を絶対に忘れない…
そう心に誓って目を開けてみると、海人の着替えの横に小さな紙の袋を見つけた。
それは、近所のスーパーの紙袋だ。
そっと中を覗いてみると、そこには、ひまわりの造花のついたヘアゴムが入っていた。
ひまわりは、そのヘアゴムを手に取ってみる。
「海人さん、ありがとう…
私に渡そうって思ってたんだよね…
ちゃんと、受け取ったから」
海人が何のためにこの時代まで私に会いに来てくれたのか、絶対に何か意味があるに違いない。
ひまわりは海人が買ったひまわりのヘアゴムで髪を結び、そして、心に誓った。
私が海人さんを捜し出す。
彼が生まれ育った故郷を訪ねてみよう。
70年も経ってはいるけれど、そこに行けば何か消息が掴めるかもしれない。
小さな事でもいい…
海人の痕跡をたどりたい…
そこにはきっと絶対に何かがあるはずだから。
9月に入り、ひまわりは大学の図書館に入り浸っている。
海人がいなくなった後、ひまわりはすぐに東京に戻った。
東京に帰る前に、ひまわりはサチに正直に全部を話した。
これから海人の痕跡をたどろうとしている事を…
海人の生死についても、ひまわり自身がまだ納得できていない。
年は取っているが、海人は生きている可能性だって大いにあり得る。
おじいちゃんでもいい。
それでもひまわりは、海人に会いたかった。
「捜す事は、真実を目の当たりにすることになる。
今のままでいいじゃないか…
20歳の海人くんの思い出でじゃ、だめなのかい?」
サチがそう言うと、ひまわりはすぐに首を横に振った。
「傷ついてもいいんです。
それでも、真実が知りたい。
海人さんにまつわる事なら何でもいい。
海人さんが遥か昔に生きていた証しを、見つけたいんです」
ひまわりはサチには分かってもらいたかった。
サチだけがひまわりと海人の味方だから…
「分かった…
もし、海人君のことが分かったら、私にも教えておくれ。
短い間だったけど、息子のように思ってたから」
サチはそう言うと、ひまわりに封筒を渡した。
「ひまわりちゃんに渡してもいいかい?」
それは、海人が働いた分の給料だった。
この間まで海人がここで生きていた証しを目の当たりにしたひまわりは、その給料の入った封筒を握りしめ、さらに強く心に誓った。
そして、翌日、ひまわりはさくらに会ってお礼を言った。
いなくなった海人の事を聞かれて、海人は自分探しの旅に出たと嘘をついた。
さくらは、私と海人のために泣いてくれた。
「海人さんは、必ず、また、ひまちゃんの所に戻ってくるから大丈夫だよ」
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