僕は君を誘拐した。でも、後悔はしていない。


「今から僕は君を誘拐します」

 僕はそう言って、彼女を連れ出した。
 耳が赤く、息が白くなるほどの冷たい寒空の中、一人倉庫で震えていた彼女を。

「誘拐犯! 映画に行こうよ!」
「誘拐犯! やっぱり買うならゲームにしてよ!」
「誘拐犯! 海に行こう、海!」

「……一応、君は誘拐されたんだよね?」

「そうだけど、それがどうしたの? ほら行こう!」

 彼女はいつでも無茶ぶりをしてくるけれど、僕はそれでもかまわない。
 彼女がいつか笑顔を見せてくれるなら。


一話2500字~程です。

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