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生誕 二
しおりを挟むいつまたトヨールたちが出てくるかと思うと、自分の部屋にもどって寝る気にはなれず、私はとりあえず、必要な着替えやちょっとした私物だけを大急ぎで持ちだして、舎監教師にたのんで医務室で寝かせてもらうことにした。医務室の向かいは舎監室で、何かあったときすぐ駆けつけられるので、舎監も承諾してくれた。
私は落ち着くと、アレックスに連絡をとってみた。胸が奇妙に高鳴る。
『はい。ウォンです』
「あ、あの、アレックス? 私です。小倉恵理です」
『どうしました? 何かあったのですか?』
私は大急ぎで今までの事情を説明した。寮の部屋に、イザーとミミという名の男女のトヨールが出てきたこと。二人が成長した姿で出てきたこと。しかも、実体をもとめて私に襲いかかってきたこと。
『トヨールが成長する?』
「あの、成長といっても子どもで、十二、三歳かそれぐらいです」
『それは、初めて聞いた話です』
さらに私はやや興奮しつつ、友哉君から聞いた、祖父友之の件もつたえた。
『……長崎の出来事、ですか?』
スマホの向こうでアレックスが考えこんでいるのがわかる。
『男女のトヨールで、成長していた……。恵理さんのお祖父さんとお祖母さんが関係していた……? なんだか……複雑な話ですね』
アレックスは最後に嘆息したかのように息を吐いた。
『トヨールにも男女というか、雄と雌があることは聞いたのですが……さすがに成長するという例は聞いたことがないですね。それが本当なら新種というべきでしょう』
アレックスののんびりとした言い方に、私は焦れったくなってくる。けれど、スマホの向こうで何か考えこんでいるかのように彼はしばし無言になった。
『もしかしたら、思っていた以上に危険かもしれません』
沈黙の後のその言葉は、私の背筋を冷たくした。
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