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 どこか様子が普通ではなく、そのことがまたコンスタンスをうんざりさせ、怯えさせもする。

「あの人はいつだってそうだったんだから。あのときもそうだったんだよ。仕事で失敗して会社の金に穴をあけて、その埋め合わせをあたしに頼んだんだからね! 仕方ないからあたしは館へ行ったんだ。そのときあたしは幾つだったと思う? 十七だよ。あんたと変わらない歳さ」

「な、なんの話よ」

 と言いつつもコンスタンスはエマの言うことが理解できてきて怖くなった。

「だから、あいつがあたしを売ったっていう話さ。あたしはそれまでは女中として真面目に働いていたんだからね。主はケチな未亡人で、そりゃ厳しくて苛められていつも泣いていたけれど、それでも清い身体と心を持って、まっとうに生きていたんだよ。それがたまたまあんたの父親と出会って、どういうわけか子どもまではらまされてしまって、あいつの作った借金のために売られたんだ」

 コンスタンスは呆然としていた。

 エマの叫びは止まらない。どうも今のエマは普通の心理状態ではないようだ。

「あんた、いっつもあたしを軽蔑して冷たい目で見ているけれど、あんたにあたしの何が解るっていうんだい? あたしはね、ど田舎の貧乏農家の長女に生まれて、十になるやきょうだいたちを食べさせるために奉公に出されたんだよ」

 それがわたしになんの関係があるのよ、と言いたくとも、相手のあまりの気迫にコンスタンスは言えなかった。

「行く先々で苛められ馬鹿にされ、それでも十五になったときパリにでてきたときは、これであたしの運命も変わるんじゃないかって期待したさ。そんな甘い期待は魔女のような未亡人の家でこっぱみじんに打ち砕かれたけれどね。与えられた服はボロボロで食べるものはいつも主人の残りもの。それも台所で立ったまま口に入れるような生活さ。唯一の楽しみは買い物帰りに花の都を眺めるぐらいだった。そんなあたしの周りを、お洒落して着飾った若い娘たち――そうさ、今のあんたみたいにドレスと遊びのことしか考えていない、ませた傲慢な金持ちの娘たちが通り過ぎて行ったさ。河で洗ってもらっている犬を見たときびっくりしたもんだよ。この街では、もしかしたら貧乏な娘より犬の方が幸せなんじゃないかとすら思ったぐらいだ。そんな最低の気分で歩いていたとき、偶然あんたの父親と出会ったんだよ」
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