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リジュロンはあわてて玄関へと向かう。その細い背中を見送りながら、コンスタンスは逆方向へと足を進めた。
だが数歩歩くと、なんともいえないもやもやとした気持ちがわいてきて、コンスタンスの足は遅くなる。
同い歳のリジュロンの足取りには迷いがなく目的の場所へと向かうのに、自分の足は常に迷っている。どうにもやり切れない想いを抱えながら、コンスタンスは静かな通りを歩きつづけた。
「いったいどこへ行っていたのよ、この不良娘!」
玄関の扉を開けるや飛んできたのはエマの罵言だった。
「一晩中どこほっつき歩いていたんだい? お言い! このあばずれ!」
取り澄ました言い方をかなぐり捨て、エマはいかにも下層の女らしい素の顔で荒い言葉を投げつけてくる。
コンスタンスは目を逸らした。だが、エマはおさまらないようだ。
「どいてよ、部屋へ戻るんだから」
「あたしの言うことを聞いていなかったのかい? 昨夜どこへ行っていたのか言えと言っているんだよ!」
化粧のくずれた魔女のような顔でエマは言いつのってくる。
「……パパの所へ行っていたのよ」
エマの瑪瑙の瞳が爛と燃える。
「告げ口しに行っていたっていうのかい?」
肩を、爪がくいこむほどに強くつかまれコンスタンスは気が挫けそうになったが、負けじと言い返した。
「相談してきただけよ」
「相談? はぁ? なにを相談してきたんだっていうんだい? 仕事先を探してくれるって言ったかい、あの人が? せいぜい、良い娼館を紹介すると言うぐらいだろうよ」
言い当てられて、悔しさにコンスタンスは歯軋りしたくなる。
「わかっているんだよ、それがあの男のやり方なんだから」
きつい香水と酒の臭いが鼻をつくのにコンスタンスはうんざりした。
「はなしてよ」
エマは聞いておらず、のけぞるように顔を天井に向けて高笑いしだした。
だが数歩歩くと、なんともいえないもやもやとした気持ちがわいてきて、コンスタンスの足は遅くなる。
同い歳のリジュロンの足取りには迷いがなく目的の場所へと向かうのに、自分の足は常に迷っている。どうにもやり切れない想いを抱えながら、コンスタンスは静かな通りを歩きつづけた。
「いったいどこへ行っていたのよ、この不良娘!」
玄関の扉を開けるや飛んできたのはエマの罵言だった。
「一晩中どこほっつき歩いていたんだい? お言い! このあばずれ!」
取り澄ました言い方をかなぐり捨て、エマはいかにも下層の女らしい素の顔で荒い言葉を投げつけてくる。
コンスタンスは目を逸らした。だが、エマはおさまらないようだ。
「どいてよ、部屋へ戻るんだから」
「あたしの言うことを聞いていなかったのかい? 昨夜どこへ行っていたのか言えと言っているんだよ!」
化粧のくずれた魔女のような顔でエマは言いつのってくる。
「……パパの所へ行っていたのよ」
エマの瑪瑙の瞳が爛と燃える。
「告げ口しに行っていたっていうのかい?」
肩を、爪がくいこむほどに強くつかまれコンスタンスは気が挫けそうになったが、負けじと言い返した。
「相談してきただけよ」
「相談? はぁ? なにを相談してきたんだっていうんだい? 仕事先を探してくれるって言ったかい、あの人が? せいぜい、良い娼館を紹介すると言うぐらいだろうよ」
言い当てられて、悔しさにコンスタンスは歯軋りしたくなる。
「わかっているんだよ、それがあの男のやり方なんだから」
きつい香水と酒の臭いが鼻をつくのにコンスタンスはうんざりした。
「はなしてよ」
エマは聞いておらず、のけぞるように顔を天井に向けて高笑いしだした。
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