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マリアの批判するような視線をかわすように、フランセスカは大きな声で主張しました。
「あんな大きなダイヤモンド、わたしたちだって持っていないわよ。ううん、それどころか、カテリナ様だって持っていらっしゃらないんじゃないかしら? それぐらいすごいのよ」
「まさか……とは、思うけれど、それって、盗んだものじゃないでしょうね?」
ベアトリックスが困ったような顔で告げます。ベアトリックスはすこし浮ついたところはありますが、いたって気の良い人で、普段はあまり人を貶めたりすることはありませんが、一介の下女が王侯貴族の姫君ですら持ちえない宝石を持っているということに不信感を覚えたようです。
マリアも困惑した顔になって眉をしかめました。そして、やはり、このなかでは一番ルシアと付き合いの長いわたくしを見て、問うような顔付きになります。
「養女というのなら、生家がお金持ちということはあり得ない? それで、生みの母親が彼女を手放すときに形見としてあたえた、ということは?」
「まるで芝居みたいね」 フランセスカが鼻で笑うのを無視して、わたくしはどうにか言ってみました。
「あの、もしかしてダイヤモンドではなくて、ルビーではございませんか? 以前、カテリナ様がルビーを下賜なされたことがございましたが」
「なぜカテリナ様があの娘にルビーをやるの?」
またきょとん、とした顔になるベアトリックスに、わたくしは言葉を濁しました。
「あの……、以前ルシアが姫様のお役に立ったことがございまして、それで……」
「あんな大きなダイヤモンド、わたしたちだって持っていないわよ。ううん、それどころか、カテリナ様だって持っていらっしゃらないんじゃないかしら? それぐらいすごいのよ」
「まさか……とは、思うけれど、それって、盗んだものじゃないでしょうね?」
ベアトリックスが困ったような顔で告げます。ベアトリックスはすこし浮ついたところはありますが、いたって気の良い人で、普段はあまり人を貶めたりすることはありませんが、一介の下女が王侯貴族の姫君ですら持ちえない宝石を持っているということに不信感を覚えたようです。
マリアも困惑した顔になって眉をしかめました。そして、やはり、このなかでは一番ルシアと付き合いの長いわたくしを見て、問うような顔付きになります。
「養女というのなら、生家がお金持ちということはあり得ない? それで、生みの母親が彼女を手放すときに形見としてあたえた、ということは?」
「まるで芝居みたいね」 フランセスカが鼻で笑うのを無視して、わたくしはどうにか言ってみました。
「あの、もしかしてダイヤモンドではなくて、ルビーではございませんか? 以前、カテリナ様がルビーを下賜なされたことがございましたが」
「なぜカテリナ様があの娘にルビーをやるの?」
またきょとん、とした顔になるベアトリックスに、わたくしは言葉を濁しました。
「あの……、以前ルシアが姫様のお役に立ったことがございまして、それで……」
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