牢獄の夢

三

　あなたは目的のためなら嘘をつくことなどなんとも思わない人でした。人はあなたの苛烈かれつなやり方をして〝残酷王〟と呼ぶ一方で、自分にとって有利になるなら、この時代には蔑さげすまれていたユダヤ人をも抜擢ばってきし高位につかせたその合理的な手法や、味方についた者や役に立つものには寛容なその御気性ゆえにあなたを〝公平王〟と呼ぶことになりました。

　この公平という言葉には、正義という意味もございます。残酷ではあるけれど、あなたは確かにあなた自身の正義に生きられた……。

　いっそあなたがとことん愚劣な方なら、わたくしは救われたかもしれない。けれども、あなたは抜け目なく狡猾で、ひどく賢いところがあり、たしかに賢王の素質も兼ね備えていらしたのでございました。

　そして賢いあなたはわたくしをまた別の居城に閉じ込め、戦と恋愛にあけくれる日々を送られたのです。

　あなたがわたくしの目の前にあらわれたのは婚約していたときと、結婚式の二日、そして、この騒乱のときだけだったでしょう。わたくしとあなたがともに過ごした日というのは、恐ろしいことに七日にも満たないのです。

　それでも、わたくしたちは夫婦であり、あなたはわたくしの夫で、わたくしはあなたの妻。これは神が定めた運命であり、真実であり、けっして曲げられぬこの世の理ことわりでした。あなたがマリア・デ・パディリャとのあいだに何人の子をもうけようとも、哀れな未亡人ファナ・デ・カストロを篭絡ろうらくし、一夜だけもてあそんで捨てたときも、戦に負けた夫の命乞いをしたマリア・コロネルに気を引かれていたときも。

　そして、その妹で、おなじく逃亡した夫の命乞いにあなたのまえに跪ひざまずいたアルドンサ・コロネルが思いもよらずその女の力であなたにあの困った騒動をもたらしたときも。

　そう、アルドンサ・コロネル。