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オフィーリアたち 二

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 駒田は鼻で笑うような態度をとっていた。
 それを言うなら男だって大変なはずだ。
 大人になれない男性をさしてピーターパン・シンドロームという言葉があるが、男の方がさらに社会において受けるプレッシャーはきついはずだ。
 女性は仮に大人になりきれなくとも、自立できなくとも、結婚という逃げ道があるし、世間もそれほど厳しくは言わない。女は弱くとも、未熟であっても、容認されるところがあるが、男ではそうはいかない。
「あんまり大きな声じゃ言えませんがね」
 なんといっても駒田は、女子を教育する立場にある女子校の教師であり、学院長も女性なのだ。
「そうですね。男だって大変です。ときには男に生まれた方がもっともっと大変です」
 由樹はすこし微妙な言いまわしをして、ほろ苦く笑った。
「ねぇ、先生、僕はこうやっていろいろ話を聞いていると、不思議に思ってくるんです」
「なにがですが?」
「中西みゆきは、どうして中西みゆきになったのでしょう? 彼女は平凡な地方公務員の家で生まれ育ったごく普通の、やや老成して大人しいタイプの子だったという。なぜみずから死を選ぼうとしたのか? そして杉山菜穂はなぜ杉山菜穂になったのか。親の教育にも問題はあったのでしょうが、すべての甘やかされた子どもがそうなるわけではありません。そして、井田由香子はどうして井田由香子になったのか……。彼女はけっして愚かな少女ではなかったはずです。むしろ同い齢の他の子たちより頭のいい少女だったはずだ。性格も良くて人望もあった。そんな彼女がどうして、ネットカフェのトイレで赤ん坊を産み落としたあげく、その子を――聞いた話が真実だとするなら、水洗トイレにしずめて殺さねばならなかったのか。十七歳にして嬰児殺しの犯罪者にならねばならなかったのか。その謎はどこにあるのか?」
「それが、あなたにわかるのですか?」
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